Episode8 運命の歯車とホットケーキ

 ロンカロンカを倒したこの私がまずはじめにとった行動は、DDFをホテルから持ち出し、警察が徘徊するこの街から脱出するというものだった。

 移動手段は電車やタクシーでは無い…今時の交通機関はちょっと台風が来るぐらいですぐ使い物にならなくなるからな。なので私はバイクを持ち出した。家に置いてあった新品のバイクをね…

 

「ゲホッ…ゲホッ…しかしまさか、事故るなんて―――。」


 天候は大荒れで、私はロンカロンカとの戦いでズタボロ。今思えば…自殺行為だったのかもしれない。

 クソ―――――焦りすぎた。でも、今が奴らから逃げるチャンスなんだ……恐らく探偵共は、私が生きている事も知らないだろうし、ロンカロンカを誰が倒したのか、DDFは今誰が持っているのかと言う事も知らない。今ここで私がこの街から姿を消せば、奴らは私の足取りを見失う……


「行かねば―――この悪夢の宝石を葬り去るために……」


 でも、何も考えられなくなってきた、眠気が…

 確かに、睡眠は重要だ…食事や性処理なんかよりずっとずっと重要だ――だが今は……今だけは――――――――


「スー…スー…」


―――――――――――――――――――――――――――――――――――

眠い!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

―――――――――――――――――――――――――――――――――――

ヘリ


パパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパ

パパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパ

パパパパパパパパパパパパパパパパパパパぺパパパパパパパパパパパパパパパ

パパパパパパパパパパ(ヘリコプターの上についてる回転するデカいアレの音)


「ロンカロンカが、"喰われた"か。」


「ええ。元号が"百賭"に代わった途端に悪いニュースです。

 まさかあの異常天才<アブノーマル・ジーニアス>が

 人の子の手によって死んでしまわれるとは―――」


「――――運命の歯車が動き始めた…もう"誰"も引き返せない。

 もう誰もかれもあの5つの黒<ブラック>い石<ストーン>ころの上で

 踊らされるしかないのだ。」


 深夜の空で風を切る音が響き渡る。ヘリコプターのメインローターが回転する音だ。

 ヘリに乗っているのは、探偵王・夜調牙百賭を中心としたマレフィカルム日本支部のエース級探偵数人。なんか話しているのは、銀髪で黒いマスクを付け、全身を鎧で武装した老人探偵と、百賭。


「怪盗アイドラ。通称―――『緑目のアイドラ』。前科約1800犯。

 この日本で二番目に驚異的と見なされている

 ウィザーズ<コミュニティ>のメンバー。

 おっと、アルギュロスが死んだ今では一番ですか。

 本日の予定は、彼女<アイドラ>との秘密会議。 


 そろそろ到着です。ささ百賭様―――このグレトジャンニの後ろに。」


しかし頑なに百賭は動かない。そして何か……なにか呟き始めた!!


「我を絶対正義と崇めよ。左手の薬指に唇を当て誓いを立てよ。

 されば汝らに大いなる祝福と繁栄与えん。

 我は正義なり。

 汝らが呪われし魔女であらば我々は黒鉄をも溶かす熱した怒りと共に我、

 鉄槌を下すであろう。我は救世主<メシア>――――――――――――――

 ――――――――――――――――――」

「真理詠唱――!これは失敬…」


 グレトジャンニと百賭が降下するヘリの中から下を見下ろす。その視線の先には、二人が立っている。緑目のアイドラと―――その護衛だ。

 ヘリが地上に降り立ち、深夜の草原の上で二人の怪盗と二人の探偵が対峙する。


「久しぶりだな……

 百賭さん、そしてマッレウス・マレフィカルム日本支部 ID.001

 ――グレートジャンニッ……」


「……怪盗アイドラ。」


「な、何の用なんだ……今日は俺に何をさせるつもりなんだんだ……!」


「要件は二つさ、まず一つ目は………ごく一つの簡単な質問だ。

 貴様が持っているDDFに関する情報が欲しい。

 NOとは言わせんぞ。お前はこの私には"逆らえん"。」


「DDF……?

 ―――たしかあの伝説の……」


「その素振りでは、何も知らないようだな。

 フン、期待外れだ……」


「―――小耳にはさんだ程度だが、聞いたことがある……ッ

 我々ウィザードのあの銀の老獪怪盗アルギュロスッ……

 奴とその"協力者"があの宝石を狙っていたとッ……!」


「ほう、"仲間"……か。」


「協力者は3人~4人……一人はエクスと言う名の怪盗だと聞いているッ!」


「怪盗エクス・クロスか……確かオーストラリアの―――」


「……オレの知る情報はそれだけだ。なぁ、そろそろ――子供に合わせてくれよ。

 あのヘリの中に――ロンカロンカはいるんだろ?

 アイツのあの剣の中の子供に合わせてくれ!」


グレトジャンニが殺意を持った目で百賭とアイドラの間に入る。


「彼女なら先日死んだよ。」


ドンゴン的衝撃発言を平然と放つグレトジャンニ。


「なっ……じゃあ子供は!!子供たちは!!!」


「彼女が死んだこと、それはつまり剣の中の異空間と現実の間をつなぐ門が

 消え去ったことを意味する。もう奴の剣の中に囚われた奴らは助からない。

 そして我々の二つ目の要件――――それは……



 用済みとなった貴様の始末だ。」

「グレトジャンニ、殺れ。」

――――――――――――――――――――――――――――――――――


 夢を見る………私…プレイマー・グランは夢を見ている――――


 夢とは記憶、思い出が混じり合った景色と聞いたことがあるが、今見ている景色がさにそれそのものであった。


 パパとママ――――ジジイ――――右堂院――――睦月――――島風さんやロル、怪盗、そして探偵―――良くも悪くも様々な登場人物で彩られたその景色は私の目を泳がせていた……

 決して目を背けたくなるような時間では無かった……


 しかしこの夢は滅亡する!!!!!!!!!!


 何たることか、すべての登場人物が、赤く、赤く染めあがり―――バラバラになっていく……

 その光景はあまりにも目を背けたくなるほどにグロであった。

 そしてその光景は更にグロテスクさを増していくッ…


 バラバラになった赤い肉片たちが、集合し、一つに合体する。じきに赤かった部分は金色と紫色に変色し女性の形になっていく。


「や、やめろ………」


 そしてそれは"完成"する。

 身長は170㎝、胸が大きく、人形のように細い手足、目は鷹のように鋭く、瞳は黒紫。深紫色のコートを腕を通さないように羽織っており、内には紫色の胸空きタートルネックに黒いズボン、そして、金髪のツインテール。


 その悪夢、天才少女探偵、"三羅偵"乱渦院論夏<ロンカロンカ>ッ!!!!


「やめろー―――――――――――――!!!!!!!」


 うわああああああああああああああああああああああああああああああああアアアアアアアアアアアアアアアアアアあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!


 ロンカロンカが私に向かって走ってきたッ……!!!嫌だッ―――来るな!!!


「だ、誰かッ……助け!!!!うああっ!!!」


 追いつかれた!!!首を掴まれる!!!締め付けられる!!


「うっ……ぐぇ――――」


 駄目だ!!蹴っても殴っても!!すり抜けるッ……―――!!死ぬ―――このままだと殺されるッ……!!


「やめろッ……やめろいやだッ……!!私はッ……D……

 DFを……!!!!!!!!

 ――――――――――――」


あ―――――――――---------------------------------------------------------

- - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -


全て―――かすれて――――いく――――


全て――――――――――消えて――――――――――いく―――――――


初めて―――――――殺された時の―――――――ように―――――――――――











~♪~~~♪


音――――だ――――ピアノの――――音――――

このクラシックは――――確か――――

「ショパン・別れの曲」。

なんで――――?でも―――この暖かな光は………


光に包まれていく、私の体が――――


そして、景色が変わる………


―――――――――――――――――――――――――――――――――――

何処かも知らない和風の家


「――――――。」


 夢………?


「~♪(ショパン・別れの曲)」


「現実………


 う――――アアッ…」


 喉が痛い…そしてこの体制…自分の手で自分の首を絞めていたのか!?もしこのまま目覚めなかったら、私は―――!


「――――ゲホッ…ゲホッ……

 死してなお私を殺しに来るか、ロンカロンカ――――」


 ロンカロンカの呪い。


「……取りあえず、ここは何処だ……

 ッ……体が痛い…」


 痛めた体を無理やり動かす。

 よく見ると、体が包帯がグルグル巻きにされている、誰かに拾われて、応急処置でもされたのだろうか?


 音の鳴る先へと向かうと、そこには一人の80代ほどのおばあさんがピアノを弾いていた。老人ながらも、その姿はとても美しかった。いや、老人だからこそ―――か。


「……おばあさん、すみません。」


「―――!アンタ!もう動けるのかい!?」


「ま、まあ……なんと、か……」


 私の立っている姿を見たおばあさんが、目を丸くしている。今私がここに立っているのは想定外の出来事だったようだ。その後、彼女は椅子から優雅に立ち上がり、私に向かって歩きだす。


「やっぱり無理してるね。まだ安静にしないと駄目だ。」


「二つほど……質問がしたい。」


「取りあえず、ベッドで安静にしてからだ。」


 おばあさんは私を支え、ベッドまで誘導する。


「で、何だい?」


「ここは―――何処なんですか。」


 取りあえず、ネオ鳥取市から出れたかどうかを知りたい。


「アタシの家さ。」


「ネオ鳥取市ですか?」


「岩美町だよ。」


 石美町はネオ鳥取の隣に位置する町―――。よかった、ここなら警察のパトロールもあまりないだろう。


 そっと胸をなでおろし、私は次の質問をする。


「私は何故此処にいるのでしょうか。記憶ではたしか、道路をバイクで走っていて――」


「覚えてないのかい?アンタこの近くの林でブッ倒れてて……」


 バイクが壊れて、無意識に何mも歩いていたのだろうか。


「そんでたまたま私がそこにとおりすがったんで、介抱されて今此処にいる訳」


「介抱―――救急車とかは…」


「若いころ医者をやっていてね、そこいらの奴よりは腕に自信があるんだ。

 どうだい?傷の痛みは結構止んだだろ。」


 …まぁ、この丁寧な傷の治療、一般人の仕事にしては丁寧すぎる。


「ええ、本当に、ありがとうございます………えっと。」


「秋子。」


「ありがとうございます、秋子さん。

 私は―――プレイマーって言います。」


「外国人かい?プレイマーちゃんだね。

 ところでアンタ、何処から来たんだ?

 近けりゃ、アンタを実家まで運んで行ってやるんだが。」


「……」


 どこだっけ……


「ワケありのようね。」


「―――ご迷惑はおかけしません。すぐ、ここを出ていきますから。」


 そう、私には"使命"がある―――この家に長居するわけにはいかない。


「迷惑じゃないわよ、暇だしね。

 それとも何かい?急ぎのようでもあるってのかい?その傷で…」


「使命です。私にはやらないといけないことがある……

 なにをやらないといけないかは、忘れたけど――――」


 ―――何の使命だっけ、思い出さないといけないのに!でも、過去を追おうとすると、頭が痛くなって何も考えられなくなる。


「忘れてんじゃないの。記憶喪失かもな。」


「……」


「やっぱアンタ、もう少しこの家に居なさいよ。」


 秋子さんが私の体にそおっと布団をかける。

 確かに、この傷と、記憶じゃ、外に出るのは危険だ。しばらくこの家の迷惑になるのがきっと賢明な判断なのだろう。


「――――わかりました。申し訳ありません。」


「いいっていいって!ところでアンタ、何か食べたいものある?」


「ホット……ケーキ……」


「ほっとけいきィ?それって、なんだっけねぇ………」


―――――――――――――――――――――――――――――――――――


「記憶喪失ってのは主に二種類に分けられる。

 記憶が二度と蘇らない「重度」の記憶喪失と、時間経過で記憶が戻る可能性がある「軽度」の記憶喪失。

 重度が主に脳への物理的なダメージ、病気などで引き起こされるのに対し、軽度の記憶障害はトラウマ等の大きな精神ショックが原因で引き起こされるとされている。何かとても嫌な事があって、思い出す事を拒んでるとか、そういうのだね。

 アンタの記憶喪失も軽度だといいんだけどねぇ。でもその傷を見ると……」


 おばあさんは、若いころはあらゆる医学に通じていて、かつては「医虎」と呼ばれていたらしい。偶にこういった医療知識等も披露してくれる。


「多分、軽度の方だと思います。」


「何か、わかるのかい?」


「とある女性に、とても辛いことをされたという記憶――それだけは覚えてますから。」


 極悪魔人ロンカロンカ、アイツの事だけは覚えている。アイツに苦しめられたこと。アイツに精神的に敗北した事。肝心の、奴の記憶だけが。でも、何を奪われたのかは、まったく覚えていない。


「とても辛い事か……思い出さない方がいいかもね。」



「―――そうですかね……」


「そうですとも。」



 思い出さない方がいい記憶か。でも私には使命が必要なんだ。何故必要だったのかは、忘れたけど……


―――――――――――――――――――――――――――――――――――

プレムが秋子の家で看病されて、6日目。


 傷の方は、大体治ってきた。どうやらこの体には常人を遥かに超えるほどの凄まじい回復力が備わっているようだ。秋子さんも「これはすごい」と驚いていた。

 

 そして、一つ―――分かった事がある。祝うべきか呪うべきか、私の記憶喪失は、確実に軽度のものだ。私の中の精神が記憶の回復を拒んでいるだけだというのが感覚で分かる。

 そして、断片的に、思い出してきた――――私の使命とは、とても辛い旅の事。地獄の過程とわずかな達成感と言う結果を味わうだけの苦難の旅。そして、旅を完全に終えた時、私は自らの人生に絶望し、自らの命を絶つ。それによって"私"は"完成"する。

 しかし―――それは本当に正しい使命なのか?そこに私の幸せは何処にある?

 

「プレムちゃん、見なさい、今日はスーパームーンよ」


「……きれいですね。」


「ここは景色がよく見えるだろ?今日が来る前にアンタの傷が治って良かったよ」


 多分、思い出そうとすれば思い出せるんだ。閉ざされた記憶も、忘れた使命も。でも、そうすれば私はもうこの家にはいられなくなる。

 そして私は、今、この家で過ごす日々に幸せを感じている。使命なんて、思い出さなくていいと思うぐらいに―――


「―――!?」


「どうしたんだい、プレムちゃん。」


「今、誰かに見られたような……」


今、女の人の影が見えたような――――

 ―――なんだろう、ここに来てからずっと、誰かに監視されているような感じがするんだ。


「プレムちゃん、どこにいくんだい?」


「ゴ、ゴメン、ちょっとトイレに!!」

―――――――――――――――――――――――――――――――――――


「………確か、ここらへんに誰かいたんだが……」


「会いたかったよ、プレム。」


 発せられた声の方向を向くと、そこには青髪シロングの目つきの悪い胸の大きな女性が立っていた。


「アンタは?」


「―――やっぱり覚えてないのか。 

 聞き耳を立てて聞いた時は驚いたが、本当に記憶喪失なんだな。」


「私、貴方と会ったことがあるような気がする、

 とても大事な……友人だった……」


「とても大事な友人か―――フフ、嬉しいね。」


 女がニコニコしながら頬を染める。


「―――今のプレムは、この村から出て、記憶を知りたいと思ってる?」


「わからない、言葉には表せないが―――知ってしまったら、すべてが終わってしまう気もする。」


「すべてが終わる、か―――」


 女はくるっと回転し、私に背を見せる。


「もう行くのか?」


「しばらくは、君の前に姿を見せない方がよさそうだ。

 今の君は―――とても幸せそうだからな。」


「………あの、名前だけ、最後に聞かせてもらっていい?」


「ジェーン、そして睦月。それが私の名前さ。」


「むつ………き………」


―――――――――――――――――――――――――――――――――――

翌日。


「大丈夫なのかい?本当に。」


「ええ、大丈夫です、ちょっと……外の空気を吸ってくるだけですから。」


 記憶が戻る前の私は、恐らく誰かと話すのも好きだったけど、一人でいるのも好きな性格だった。今日の私は、無性に一人で外に出たくなっていた。一人で落ち着いていられる時間が欲しかった。

 私は、近くの公園にある鉄状の半リングのようなものに座り、体の力を抜いて深呼吸をする。心を無にして落ち着きたいのだ。


「スー、ハー」


 ……しかしこの感覚なんだ、心臓の鼓動が高まっていく。


「…………ん?なんだ、胸がピリピリする。何故だ、何故落ち着かない。

 この感覚は覚えがある。確か記憶が戻る前の私はこの感覚の事を――――」


 殺気と呼んでいた!


「!―――背後から鉄と鉄が弾き合うような音が聞こえる!

 私の方に何かが向かっている!」


 後ろから迫りくる物体を横にジャンプして回避する。しかしこの体、こんなに反射神経が良かったのか…いったい私は何者だったんだ!

 後ろから迫りくる物体は、銀色の鎖だった、そして、鎖の元には一人の男が立っている。

 その男は、かなり大柄。ツンツンのオールバックで、白いフォーマルウェアを着用している。


「人並み外れた反射神経だ、苦しめずに一撃で殺してやろうと思ったのに。

 見た目は可愛いのに中身は化物ってわけか。

 ま、仕事には困難はつきものさ。」


「―――貴方は誰ですか。いきなり攻撃してくるなんて。」


「僕は田村。探偵田村さ。キミを殺しに来た。」


「なぜ―――」


 田村がネクタイを締める。


「何故も何もないだろう。ロンカロンカ様がお亡くなりになった事によって、

 今の"三羅偵"には、空席が出来ている。

 そして、ロンカロンカ様を殺した君を殺せば、ぼくは三羅偵になれる。

 あの絶対正義・探偵王・百賭様の右腕になることが出来るのだ。


 それに何より、探偵は怪盗を殺すは絶対的な運命<さだめ>。」


「……私が、怪盗?」


「すっとぼけても無駄だぞ。既に調べはついている。」


 田村が腕に力を入れ銀色の鎖を具現化させる。


「死ね!!!!!!!!!!」


 田村が腕から無限に伸びる鎖を私の方に向かって飛ばしてくる。しかし、避けれないスピードでは無い!


「なんなんだその―――鎖は……人並み外れた能力は!?」


「すっとぼけんなって言ってんだろ!!そおらッ!!」


 田村の鎖が蛇のように動き、私の周りを囲む。そして、私の体を締め付ける!!


「ぐああッ……」


「どうだ!カースアーツを出せないだろう!

 敵のカースアーツを無力化し一方的にいたぶれる事………

 それが僕の能力……『ネイキッド・ジャッジメント<逃れられぬ裁き>』だッ!!」


 田村が私に向かって銃を向ける。駄目だ……もう……


「伝説と呼ばれている割にはあっけなかったな。

 それとも、ロンカロンカ様との戦いで受けた負傷で全力を出せないのか?

 まあいい………取りあえずこれで、決着だ。」


 田村が――――トリガーを引く――――駄目だ―――死―――――――――――あれ。待って、私の前に……誰かが……


「ああッ……プレムちゃん……」


 私の前に誰かが立って……奴の撃つ弾丸に、腹を撃ち抜かれたッ……!

その撃たれた人はまさか……まさかそんな……!


「あ――――秋子……さん!!」


「なんだってェェェェェェェ!!!」


 秋子さんを撃った田村が、衝撃を受け、能力を解除してしまった。


「あ、秋子さん、大丈夫ですか!!」


「――な、なんだと!

 ―――ボ、僕は悪くない!彼女が悪いんだ!

 車を時速60㎞で運転してて、猫を轢いてしまったのと同じだ!!

 彼女は自分から飛び出したんだ―――」


 頭を抱え、長ったらしい言い訳をずらずらと並べるあの男にイライラする……

……でもよかった、明子さんは致命傷じゃあないみたいだな。


「探偵手を出すなよ!彼女の応急処置がしたい。

 貴様だって無関係の人を殺したくはないだろ!」


「う―――わかった。少しだけ待ってやるッ……」


―――――――――――――――――――――――――――――――――――

 秋子さんの家には、様々な医療グッズが置いていた。まぁ、流石にもと医者と言うべきか…そして、私にも、職業柄ある程度の外科医療に関する知識がある、知識がある事を今思い出した。彼女は必ず治る。


 そして、彼女の応急処置を進めていくうちに、色々な事を思い出す。死んでいった家族や仲間、友達の事……カース・アーツや自分が怪盗シルバーである事。そして、DDFと私の使命に関する事。


「そうですプレム、貴方は先に進まなくてはならない。

 運命の敷いた救世のレールの上を、ただただ走り続けねばならない。」


「God<神>、いたのか……」


「言うならば、今回彼女の家で7日も過ごしたのは、

 そのレールから外れちょっぴり寄り道したようなもの……

 だけどねプレム、そんな寄り道に意味なんてないんだ。

 全ての人間には正しき人生の道<ルート>というものがある、

 その上だけを歩くことだけが何よりも正しい事なんだ。

 例えそれが、何の幸せも得られない、苦難の道であっても…」


「――――」


 私は、明子さんと7日間一緒に過ごして、苦難の使命を貫くより、何気ない日常の中で幸せになることが正しいなんて事を思っていた。

 でもそれは間違いだった。なぜならこの私が、大いなる使命にすがらないと生きていられないほど、弱い人間だからだ。

 そう、私は8歳の時、親を失ったあの時既に、人間としては生きられなくなっていたのだ。

 だから、私はあの時、神の使命に従う銃剣になると誓った―――――それだけが、この怪盗シルバー唯一の生きる道だったから。


「彼女はもう、大丈夫だな―――行くか。」

―――――――――――――――――――――――――――――――――――

秋子の家。


 家から出ると、探偵田村が震え、うつむきながら立っていた。きっと彼は探偵だが、性悪な人間では無いのだろう。

 私が家から出るのを確認した彼は途端私の両肩を掴み―――私の目を見た。


「おばあさんは……あのおばあさんは大丈夫なのか!?」


「ああ。応急処置はすでに終わった。命に別状はないし、

 特に後遺症が残る気配もない。」


 田村は下を向きホッ、と胸をなでおろす。


「よかった……」


「―――ついてこい。人のいない場所がある。」


「―――!」


 人のいる場所で戦いたくはない。林だ。私が倒れていたという、あの林の中で戦おう。


「殺しあうんだろ。記憶喪失だったがすべてを今、思い出した……

 私がお前に殺される理由。探偵と怪盗が戦う理由……」


「ッ……」


 男が苦虫を食いつぶしたような表情をするが、その後きりっとした表情でこの私の後ろに黙ってついてきた。


―――――――――――――――――――――――――――――――――――


私と田村が―――林の中で対峙る。


「記憶喪失か、先にそうと言ってくれたなら、私も紳士だ。

 手出しはしなかったのに。」


「言っても信じなかっただろう、怪盗の私の言う事なんて。」


「ッ……痛いところを突くな。」


 今の私に武器は無い、リボルバーも、石で造った武器すらも―――秋子さんに見つからないよう全部別の場所に隠したからな。

 だが、やるしかない。


「推理させてもらうぞ、怪盗。」


「来い探偵、貴様に私は殺せない。」


「ネイキッド・ジャッジメント!!」

「ストーン・トラベル!!―――奴の瞳の粘膜を石化しろ!!!」


 田村が右手から鎖を飛ばしてくると同時に田村の目の表面の水分が石化する。


「無駄だ……あらゆる攻撃、呪い、すべてこのカースアーツの前には無力!」


 そういいながら田村は鎖を戻し、自分の頭に巻きつける!恐らく瞳の石化を解除するつもりだな。だが貴様は今無防備になっている…隙だらけだ。

 …膝蹴りを……顔面に当ててやるぞ。


「グバァ!!!やるな怪盗……!!ならこれはどうだ!!」


 田村が全身から鎖を出現させそして私の腕、脚、胴体を縛った……!!田村はそのまま5mほど離れ、私に銃を突きつける。


「油断したな!力を隠していたのだよ!

 私の鎖は何も腕だけから出る訳ではない!!

 さぁ―――ネイキッド・ジャッジメント・イッツ・ショータイム!!」


 奴がトリガーを引く……だが……この鎖を逆に私の方から引っ張ってやれば、奴は体制を崩す……!!


「なっ……!!引っ張るな…!!引っ張ってるのか!なあ!!

 こんのおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」


 奴は銃を撃つが、体勢を崩したためか、一発も私に当たらない。そして一気に鎖を引っ張り、田村を私の方に寄せ付け、銃を奪い投げ捨てる!!


「なんて……パワー、その小柄で!!」


「これが在日アトランティス人の力だ……」


 ロンカロンカのような化物ならともかく、ただの成人男性にこの私がパワーで負けるはずがない!!頭を踏みつけてやる!!


「う………ううう……」


 田村は怯み、あまりの痛みに鎖の能力を解除する。


「どうしたそこまでか鎖男!その程度では三羅偵には程遠いぞ!!」


「まだ……だ……」


「……」


「僕は……ずっと……シャーロック・ホームズのような探偵を目指して……

 戦士としての最強を極めつづけた……

 あの!!新世紀救世主・百賭様の切り開く新日本の為、探偵を極めつづけた!

 ……この程度でくたばるか……!!」


 田村が両腕の中に無理やり鎖を注入し、私の顎を殴った!!


「ギっ……こいつ……」


「グオオオッ……

 そうとう痛いが、

 これで今の僕の腕力にネイキッド・ジャッジメントのパワーがプラスされた。

 今の僕には、貴様と殴りあうだけのパワーがある!行くぞ怪盗!」


「来い!!」


 パンチが交差し、クロスの形で私と田村が顔面を殴る!!パワーは同格かッ…!いや、腕が長い分、奴の方が有利ッ!


「のけぞったか!!くらえっ!!今の僕は石をも殴り潰せる!!!」


「フン!!」


「チッ……受け止めたな……!!

 ヌッ……この蹴りは……早……ぐおああああああああ!!!」


 田村の腹を蹴り上げ、3mほどジャンプさせる!!

 

「お前は今強化しているのは腕だけだッ!!

 蹴りのスピードは私の方がまだまだ上のようだな!!」


「なら脚にも鎖を注入してやるッ……うおおおおおおお!!!!」


 田村が直ぐに立ち上がり!!この私に飛び蹴りをかます!!

そして怯んだその隙に私の急所に確実なるダメージを与えていく!


「怪盗に殴り合いで勝ったああああああああああああ!!

 これで僕はシャーロック・ホームズになれるぞおおおおおお!!!!」


 血が流れている。涙も出そうなほどの痛みだ。だがそれが何だ?人間なら血も涙も流すのだろう―――だが私は石の銃剣だ。大いなる使命と言う名の銃剣。石は涙を流さない―――私の血は石。私の涙は石。


「トドメだ!死ね怪盗!」


 奴が――――私の顔面を思い切り殴る―――だが……


「な、何故だ……なぜ怯まない………!!」


「石の旅―――首の中の水分を一瞬石化させた。そして―――――」


 私は奴の腕と脚に入っている鎖を無理やり引っこ抜いた。


「ぬあああああああああああああああああああああああああああ!!!!

 この怪盗がああああああああああああああああああ!!!!!!」


「まだ来るか……だが無駄だ。"人間"ではこの私には勝てない。

 ――――終わりだ!!」


「ヨアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!」


 人間の急所――――は7か所ある。デコ、眉間、鼻、顎、喉、みぞおち、そして―――股間。そのすべてに強烈な一撃を加えてやった……


 田村が倒れ、私は歩いてそのそばに近づく。


「助けて―――くれ……いやだ……僕はまだ死にたくない―――!!!」


「お前の先ほどの目には、夢を目指す一人の漢としての勇ましい炎が宿っていた。

 だが―――崩れ去ったな。


 とどめを刺してやろう、お前の持ってきた、この銃で。」


「ひいいいいいいいいいいいいッ……お父さんッ…お母さんッ……助けて……」


「――――!!クソッ…!」


 田村を回し蹴りで気絶させる。


「ハァ……ハァ……」

―――――――――――――――――――――――――――――――――――

 その後私は、隠れていた睦月を発見し、家に帰る道を一緒に歩いていた。


「で、どうするのこれから。」


「どうするも何も――――この村は出る事にする。

 DDFを葬らないといけないからな。」


 睦月が右手に持っていた焼き鳥の串を屠る。


「………使命なんか発哺り出して、

 この町で静かに生きるってのもいいかもしれないぞ」


「それは―――無理だ。私にはもうどこにも逃げ場所なんてない。

 逃げたとしてもその場所が探偵に燃やされるだけだ。

 今回の秋子さんのように―――」

―――――――――――――――――――――――――――――――――――

 秋子さんは寝室のベッドの上で目を覚ましていた。生きている私の姿を見るや、痛みを忘れて私の事を抱きしめてくれた。

 ―――その後私は、記憶が戻った事と別れの挨拶を彼女に伝えた。

 お互いの安否が確認できた途端に残酷な報告だったかもしれないが―――それでも彼女は、一瞬悲しげな顔をした後に、微笑んで……「いってらっしゃい」、と私に向かって言ってくれた。


「ああそうだプレムちゃん、アンタ、昼はまだでしょ。

 台所に、昼ご飯をラップで包んでおいてるから、温めて食べなさい。」


「うん、ありがとう、秋子さん。」


「ジェーンちゃんは―――。」


「私なら大丈夫です、さっきコンビニでおにぎりと焼き鳥食べたんで。」


「フフ、そうかい。プレムちゃんをよろしくね。」


 私と睦月は寝室を抜け、台所に向かう、そこにあったのは――――

焦げ目がついて、円になってない、ふにゃふにゃのホットケーキ。近くには、ホットケーキの作り方に関する本が置いてある。

 そうか、私が好物だってことを伝えたから、頑張って作ろうとしてくれたんだ。


「プレムの好物だね。」


 レンジでホットケーキを30秒温め、皿にのせる。そして、ナイフとフォークを使て、それをゆっくりと口の中に入れる。

 ハッキリ言って、ホットケーキとしては並の味だった。素人の作ったホットケーキと言った感じ。


「………プレム、君は……」


 この頬を伝う水はなんだろう。この心臓の高鳴りは何だろう―――――――なぜこんなものが流れるのだろう。


「………プレム、ちょっと私、外の空気を吸ってくるよ。」


「――――ありがとう。」


 ホットケーキ――――色々、思い出すな。

-------------------------------------------------------------------------------


「プレム―――今日はホットケーキを作ってみたのよ!」

「オイオイ、これ、焦げ目も付いてるし、しわくちゃじゃないか。」

「初めて作ったんだからしかたないでしょ!」


パパとママの声だ――――――


「ママ、私、これ大好き!!」

「ほら、プレムも喜んでるわ。ふふっ……私って意外とホットケーキの才能あるのかしら。」

「こんなもんはホットケーキと言えないね、よしパパが手本を見せてやる」


―――――――――


『Кажется, что японская гениальная девушка-детектив и ночные клыки сотнями ставок очистили двух загадочных воров.(日本の天才少女探偵・夜調牙百賭が二人の怪盗を粛清したようです。)』


―――――――――


「―――そうだ、ホットケーキが食べたいな。久々にママの作ったホットケーキを。でも、ママはもういない……」


-------------------------------------------------------------------------------


「ううっ……うううっ………」


―――――――――――――――――――――――――――――――――――


 食事を終えた私は、秋子さんのいる寝室に再び向かう。彼女は、私が再び現れるとは思ってもいなかったようで、目を丸くしている。


「―――!プレム、どうしたんだい。」


 私は彼女に―――そおっと抱きつく……最後の別れを告げる為―――


「秋子さん、ありがとう……本当にありがとう……」


「その顔―――いっぱい泣いたんだね。」


 秋子さんが涙を流す。


「馬鹿…こんなに抱きしめられちゃ、別れがつらくなるよ。」


―――――――――――――――――――――――――――――――――――

岩美町の道路。


「これ、睦月の車?」


「ああそうさ。」

 

 箱みたいな黒い車が置いてあった。


「なんかダサイな」


前みたいリムジンはどこやったんだ。


「ぶっ!N-BOXだぞ!N-BOX!で―――どこに向かうんだい。」


「向かう先は―――岐阜だ!岐阜の宝石博物館!

 家が焼けて、パスポは作れなくなったからな。」


「岐阜の宝石博物館………か。確か、あそこは……」


「秋子さんの家で暮らしている間にDDFが二つ発見され、

 あの博物館に保管されたというニュースを見た。

 私は―――誰よりも早く、その石を回収しないといけない。

 それが使命だから。」


「ふーん。でも、私を連れて行ってくれるってのは意外だったな、

 てっきり、断られるもんだと。」


「足が必要だし、何よりも……

 一人でいる方が睦月はかえって危険かもしれないしな。」


「奴ら、何故かは知らないけど、本気でその石狙ってるらしいからね。

 まさか"三羅偵"を使うなんて…

 いずれ私の元にも暗殺探偵が贈られるのは明白…」


「睦月、お前は必ず私が護る。お前は私の最後の友人だからな」


「えっ……」


「愛の告白じゃないぞ―――」


「愛の告白かと思ったよ。レズビアンじゃないけど、じゃ、車を走らせるぞ!」


「ああ、向かおう―――次のDDFを回収するため―――」










――――――――――――――――――――――――――――――――――――

マッレウス・マレフィカルム日本支部・地下。


「東結金次郎様は今鳥取にいる。そして、あの博物館には"罠"がある。

 いずれ最後のDDFは我らマレフィカルムの手中へと収まるでしょう。」


「……『三羅偵』黒霧四揮の出動準備をしておけ。

 いざとなれば彼女をぶつける。」


「黒霧様ですか………!!あ、あれを使うのは流石に……!!」


「いざとなれば―――だ。」


ドンゴン!!!!!!


怪盗アイドラが牢屋の中にぶち込まれる。


「ふざけるな貴様ら―――なにが探偵だ!!

 何が絶対正義・百賭だ!!許せん!!!

 てめえらのやってる事は――怪盗と何にも変わらん!!!」


「絶対正義の定義、それは全ての人間から正義と称えられる存在。

 10人中9人から正義と思われていても、

 残りの一人がそう思っていなかったら、そいつは絶対正義ではない。


 だが、その残りの一人を殺せば、そいつは絶対正義だ………

 我が正義の為に死ね………アイドラ。

 そして"四揮"の餌になれ……」


「四揮だと……?」


アイドラの背後に身長205㎝程の巨大な女性の影が現れる。

髪は紺色のロングストレートで顔はとてもニコニコしている。地面に接触するほど長い漆黒のコート、漆黒のスカート。その姿はまさに普通の気の優しそうな人妻OLと言ったところだ。


だが―――一つだけ、普通では無い所があった。

それは――――右手にレンガを持っている事。

それは――――左手にレンガを持っている事。

血に濡れた―――真紅<スカーレット>のレンガを………


「レンガはいかが?」


「あ………あああああああああああ!!!!!!!!!!」


「レンガをどうぞ。」


四揮が両手のレンガをアイドラの頭に振り下ろす。


「ごば!!」


ドンゴン!!!

アイドラの頭が爆発する。


怪盗・緑目のアイドラ―――――――――――――死亡。



――――――――――――――――――――――――――――つづく。




■怪盗名鑑 #02:睦月(偽名:ジェーン)

本名―――加賀美 響姫(かがみ おとひめ)

民族―――日本人のフランス人のハーフ。

年齢―――20

身長―――162cm(これは鯖読み。正確には159cm)


日本中国地方で主に活動を行っていた怪盗「島風」の一人娘にして

ウィザーズの新人怪盗。


真面目で慎重。失敗や危険を嫌い、

何か物事に取り掛かる時には必ず遠回りでもいいから安全な道を選ぶ。

その為、事前に確定している事象の対処は得意だが、

突発的なトラブルにはめっぽうに弱い。


怪盗を目指し自宅に長い間引きこもって修行していた為、

今の彼女にはシルバーや雇ったメイドや執事以外との人間関係はほぼ無い。

だからこそ彼女は、シルバーとの関係が切れることを何よりも恐れている。


結婚相手は強シルバーのように強くてカッコいい男性がにしたいと考えているが

いつかそのような男性と出会うときは訪れるのだろうか…?


■探偵名鑑 #01:乱渦院論夏(ロンカロンカ)

民族―――日本人。

年齢―――17

身長―――171cm

体重―――65.4kg

家系―――皆殺し(極めて平凡な一般家庭で生まれ育ったというデータがある)

好きな色―――紫(だが髪の色まで紫にするのはダサいと考えている)


探偵協会マッレウス・マレフィカルム日本支部の頂点に君臨する

三人の探偵『三羅偵』の一人。

表向きは学業と兼ねて探偵活動を行う明るい天才美少女であり、

アイドル的存在(匿名画像掲示板ではR-18のアイコラも作られている)だが…

その本性はIQ503もの天才知能故に自分を絶対なる女帝と信じ、

それ以外の全てを生きる価値のないクズと考えている人の形をした邪悪。

(「IQ30の壁」というIQが30離れている者同士では会話は成立しないという俗説がある。

503ものIQをもつ彼女にとってIQ100前後の人間達は一体どのように見えていたのだろうか。)


邪悪さで人を魅了できる、闇のカリスマの持ち主であったが、

その底の無い悪の素質を隠しながら狡猾に生きてきた為、

その闇に魅了された人間は数少ない。

しかしその闇に魅了された人間はただでは済まない。

――――怪盗シルバーは彼女の闇にあらがえるだろうか?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る