Episode7 太陽が黒色に輝くとき その②
ロンカロンカの襲撃から二日後――――――PM6:00
この一週間の間でネオ鳥取市の行方不明者は既に600人を越え、
警官隊による稀に見ない大捜索が行われていた。
行方不明者が続出する原因は言うまでもないだろう
―――天才探偵ロンカロンカ……彼女の仕業だ。
「ロンカロンカ様!お勤めご苦労様です!!」
何も知らぬ警官隊の一人が―――ロンカロンカに敬礼を行う。
「おまわりさんの方こそ、お勤めご苦労です!」
ロンカロンカが、ニコニコ笑顔で返事を返す。
しかし彼女は、今日も人知れず人を殺している。人を苦しめている。
(―――――さて、二日たっても見つからないとなると………
DDFは既にこの街の外に持ち出されたのか?
私の勘では、まだそうは思えないが……
でも、これ以上この街にいるのもアレだな―――
この街の人間が何人死のうとどうでもいいが、
鳥取は何もなさすぎてで飽きてきたし……
学校の奴らから何度も心配の電話やメールを貰うのも癪だ。
まぁだが、東京の本部から3人もサポートの探偵を呼び出したし、
もう少しはこの街にいてやろう………
まあとりあえず、"拷問基地"に戻るとするかな。)
プルルルルル!!!
ロンカロンカの端末に誰かが電話をかけているようだ。
「もしもし。こちらマレフィカルム三羅偵、ロンカロンカです。」
『金次郎だ。』
ロンカロンカに電話をかけてきたその男、
『三羅偵』東結 金次郎――――――――――
「珍しいじゃないですか、金次郎さんの方から連絡してくるなんて。
ふふ、何の要件です?」
『ニュース見たか……?
ネオ鳥取で、600人もの行方不明者が出て大騒ぎってやつ。
アレ、テメェの仕業だろ――――』
「フフ、確認するまでもない事でしょう?」
『いいか、今すぐそんな汚い推理で事を進めるのはやめろ。
テメーのやり方はカスだ。正攻法<ジャスティス>じゃねェ。
天才だの言ってるくせに犠牲を出さねぇ作法ってのがなってねぇんだよ。』
カリッ。
ロンカロンカがエンプレスプリズンから小さめのエビフライを取り出し、食べる。
「…あぁ、そうですか。
でも、今週中に1000人は殺すつもりなんですよね。」
『は?』
「というか…金次郎さんは私の上司でもなんでもないでしょ?
百賭様が止めろと言うのなら止めますが、
キミなんかの命令を聞く筋合も義理もありませんよ。
それに、罪なき人々の事を思うなら、
今からこの街に直接乗り込んで私を殺しにくればいいでしょ。
なんで東京に引きこもってるんですか?」
『テメッ!ロンカロン―――』
ピ!
ロンカロンカが携帯端末の通話停止ボタンを押下する。
「相も変わらずちっぽけですねぇ。」
―――――――――――――――――――――――――――――――――
同時刻――――
赤いフードを被る一人の女が路地裏を歩く。
変装したシルバーだ!
ロンカロンカに生きている事を感づかれないよう……
変装して行動しているのだ!!
シルバーが誰かと通話しながら歩いている。
「私がロンカロンカに完全敗北した一番の原因。
――――それは、まず……奴に先手を取られたという事。
正直言って―――家を爆破され重傷を負った時点で……
私の敗北は決定していたようなものだった。
だから、次奴と戦うときは……必ず先手を取らなくてはならない。」
『でも良くも悪くも運がいい事に、ロンカロンカは
嬢ちゃんが生き返った事を知らないんだろ?』
「ああ、そうだよ………ロル。」
通話相手は――――ロル!
無線サポート怪盗の……ロルだ!!
「でも一つだけ問題があって――――
アイツ……探偵の増援を東京の本部に要請したようなんだ。
正直言ってロンカロンカは今まで出会ってきた中で最強の探偵だ。
一対一でもかなり厳しい相手なのに、
サポートがいるとなればまず勝ち目は無くなる。
――――――――一人はすでに始末したが……
後二人の居所が分からない…」
『そこで、俺の出番だと。』
「ああ、お前のカース・アーツの力を借りる。
この宝石の半径150m以内の情報を正確に取得できるという、
お前のカース・アーツの能力を…」
『"ザ・レーダー"だ、それが俺のカースアーツの名前。』
………
「ちなみに今回は制限時間がある。
"7時12分"までに3人の探偵を倒し、
ロンカロンカの所に向かわなくてはならない。」
『ずいぶん細かい時間指定だな。何か作戦があるのか?』
「ああ、ロンカロンカを倒せる唯一の策がある…
今日の"7時12分"、この時が……私が奴を倒せる…最後のチャンス!」
―――――――――――――――――――――――――――――――
PM:6:30
探偵が一人、メモに何か書きながら歩いていた。
身長137㎝、白髪縦ツインロール、童顔。
ゴスロリとリクルートスーツが合わさったような奇抜な格好をしている。
名刺には、
"マッレウス・マレフィカルム日本支部 ID.231
ロードクーヘン・リスケッタル 42歳"
――――――――――――と書かれている。
「身長150mぐらいの女が焦りながら倉庫から出た後小走りで移動してたという
目撃情報かぁ。うーん、わっかんないなぁ……
今日は天気も荒れそうだし早めに引き上げるかな」
ピス!!
探偵の首筋に針の用が刺さる。
「ッ……!?な、な……な……に……
ね、眠たくってきた……寝よ。」
探偵が眠る……
そしてそれを陰から見ていたシルバー。
「よし、二人目は始末した。残り一人だ。
―――しっかし…リボルバー以外の銃はイマイチ使いにくいな……
この麻酔銃、一回一回弾を装填しなきゃいけないし。」
シルバーが麻酔銃の弾を再装填する。
『感づかれないうちに残り一人を早く始末する事をおススメするぜ。
あと一人は、えーと…"怪盗抹殺と書かれたマスクを頭にかぶってる男"だな。
―――いたぜ、お前の位置から100m先にいる…。方向は7時だ。』
シルバー7時の方向に歩き出す……。
そして、いた!
河の横の堤防に静かに立っている――――
怪盗抹殺と書かれたマスクを頭にかぶってるリクルートスーツの男が!!
そして、シルバーは隠れながら彼の首筋に狙いを定め……
ワン!!
麻酔銃から一発の針を彼の首に向かって射出する!!!
しかし―――――
針は彼に命中した瞬間、鈍い音を出してはじけ飛んだ!!
「なんだと……」
「首筋に鉄を仕込んでいたから助かった……しかしその恰好は…怪盗!?
殺さねば!!!」
探偵がシルバーの方向を凝視する!!
頭に怪盗抹殺と書かれたマスクを被り、リクルートスーツを身にまとい、
ふくらはぎに縦長の鉄板を身に着けた
―――探偵の王道のような恰好をしたその男が!!
ゴファァァァァーーーーーーーッッ!!!!!!(突風の音)
このネオ鳥取の人通りの少ない場所で、
夕の光に彩られた探偵と怪盗が対峙る。
怪盗と探偵の逢瀬――――それが意味するのは何か?
決闘。死闘。戦闘。闘争。運命。殺戮。
即ち己の魂を掛けた殺し合いのGONG。
「―――御初にお目にかかる!!それがしの名は怪盗大裁判!!
すべての怪盗は死刑だ!!お主を怪盗罪で現行犯死刑する!!」
「チッ……こんな奴に構ってる時間は無いんだが……」
「『不協和音<ディスソンアンス>』ッ!!!」
なんという!!???
探偵大裁判が叫ぶと同時に――――
手に持っていた警棒が伸びに伸びて8mほどの長い棒になったではないか!!
「これが推理だ!!!!!!!!!!」
瞬時―――それをシルバーに向けて振り下ろす!!
ゴヒュン!!
当然シルバーはそれを在日アトランティス特有の反射神経で回避する!!
「物体の長さを操作する能力か!?」
シルバー怪盗大裁判にリボルバーから弾丸を2発射出する!!
「痴犬!甘い甘い!!!」
しかし――――奇抜!!
彼は能力でふくらはぎに装着していた足の鉄板の長さを操作――――
自分の上半身を覆うように上に伸ばした!!!!
ガキンガキン!!二弾とも弾かれる!!!
「これも推理だ!!!!!!!!!!!」
逆転大裁判はそのまま銃弾を跳ね返した反動でこけ、道端をゴロゴロと転がる!!
転がった先は、道はずれの草むらだ!!
「伸びろ!!」
ザザアアアアアアアアアアアア!!!
裁判が叫ぶと同時に、あたり一帯の雑草が50mほどに上方向に伸び始める!!!
その光景はまさにジャングル!!!
「俺の推理は草むらをアマゾン・ジャングルにすら変える……クックック……
この視界妨害と伸びる音による聴覚妨害!!!
私の位置はもはや分かるまい!!
ジャッジメントをくれてやる!!!しねい!!!!」
「隠れたなら隠れたで別にいい。
私の攻撃は既に……終了している!」
「何ゆえ!!!!???」
しかし――――
「アバァ―――ッ!!み、水が―――ッ!?」
突然の水の波が怪盗大裁判を襲う!!
水源は川だ!川が氾濫している!
「これが私の能力だ。
流れる川の底を坂状に石化させ、水位を上昇させた!
そして……波に流れる貴様の、下半身全てを石化させた!!
時間が無いのに焦らせやがって…
さぁ、その状態の貴様にはもう何もできない!!眠ってもらおうか!!」
シルバーが麻酔銃を構える―――しかし!!
瞬時―――怪盗大裁判の目の部分が異様なきらめきをみせる!!!
「な―――――」
「『バジリスク』ッ!!!!!!!!」
オオォ――――ンッッ!!!
怪盗大裁判のマスクが破れ、両目から深紅色の光線が二本放たれる!!!
一本はシルバーの脇を通り外れたが……
もう一本はシルバーの胸元を貫通する!!!
「グオオッ……急所は外れたが……こいつ……能力を二つ持っているのか!?
この世には人格や精神を複数持つ人間がいて、そういった人間は、
カース・アーツを複数所持できるとは聞いたことがあるが……!!」
ピポパ―――!!
怪盗大裁判が更に波に濡れながらも
ポケットから携帯端末を取りだし、誰かと通話しようとする!
「ロ、ロンカロ――――――」
カチッ!!!
「ス、ストーントラベル、川の流れごと奴の全身を石化した――――」
マッレウス・マレフィカルム日本支部 ID.152
怪盗大裁判――――――――――――――――――――死亡。
「クソ………
―――今の電話…ヤバい気がする……
ロンカロンカの警戒心が強くなったかも…」
『嬢ちゃん、あと30分しかないが………どうする?
諦めるか?』
「いや、さっきも言ったが今日奴をこの街で倒さなないと……
奴を倒すチャンスは二度と訪れない………
奴は私がまだ生きている事を知らない今だけがチャンスなんだ……
ロル!!『ザ・レーダー』を再度展開しろ!!
ロンカロンカの位置を探し出し、動きを追うんだ!!」
―――――――――――――――――――――――――――――――
PM7:03
夕の日が沈み、闇の時間―――"夜"がやってきた。
夜、それは空は漆黒に覆われ、地の建造物に光が灯る時間帯。
だがそんな事はどうでもよかった。
―――誰もいない廃マーケットの入り口に、シルバーが立つ。
それほど大きくは無い。
一週間前に閉店となった中規模のスーパーマーケットだ。
「この、この建造物の中に―――あの女がいると……」
『ああ、奴はその廃マーケットの2Fにいる。』
「奴は一体ここで何をしているのか……」
『嬢ちゃんの言う―――"7時12分"……何の時間かは知らないが…
そろそろ時間が無くなってきたんじゃあねェか?』
「わかってる、すぐに突入する。」
シルバーが入口に足を踏み入れる。
しかし―――――――――――
『シルバー如何した、足が進んでないぞ』
「あ、ああ……。ぼうっとしてたな。」
『本当に大丈夫か?引き返すんなら今のうちだぜ』
「大丈夫だよ!」
シルバー足が震えている………
(や、やっぱり……私はロンカロンカに恐怖している……
死ぬことや痛みへの恐怖では無い……
一度負けたが故生まれた、失敗への恐怖!
この恐怖は克服しなければならない…
ロンカロンカを倒すためにも……
――――そして今後DDFを守るためにも!)
一歩!一歩!強気に前に踏み出す!
シルバー突入を始める……しかし!
『トラップだ、アイツ…レーザーや落とし穴までではないにしても、
触れると大音量の音が出るトラップが色んな所に仕掛けられている』
「ああ、あとなんか視界が悪いな……
下手に動けば奴に感づかれて先手を取られてしまうだろう。
だが進むぞ!私の怪盗としての技術―――
お前のザ・レーダーがあればこの程度はなんともない!!」
―――――――――――――――――――――――――――――――
そしてシルバーは2分でロンカロンカのいる2Fまでたどり着く。
ロンカロンカとはまだ遭遇していないが
―――しかしそこで彼女はとんでもない光景を目の当たりにする。
「ひいいいいいい~」「ああああああああ~」
「!?……なんなんだよこれ……」
それは―――女子トイレの中で目隠しされ、
体を縛られた血まみれの一般人たちだった。
生存者と死亡者が混在している。
そして無数のネズミやムカデ………
「くそ…ロンカロンカにやられたんだなッ…!
ロル!なんでこの事を言わなかったんだ!?
お前の能力なら彼らがいる事は分かってたはずだ!」
『言うと嬢ちゃんはそいつらを戦いに巻き込まないよう真っ先に助けるだろ!
しかし助けるとロンカロンカに先手を取られる可能性が高まってしまう!!』
「――――!そうだ!そうだけど……」
シルバー必死で縄を解く。
(問題なのは……彼等がさっきまで常に悲鳴を発していたという事……
フロアを駆け巡るほどの大声でな―――
つまり、私が彼等を助けると……彼等の悲鳴は一瞬途切れる!
するとロンカロンカがそれに感づいてこちらに向かってくる!!
全く、悪趣味なトラップだ――――!!)
「ありがとうございます!」「ありがとうございます!」
「いい!ここは毒虫や鼠がいて危険だ!
ここから出て右前方向すぐに動かないエスカレーターがある!
そこを降りて出口まで突っ切れ!!
私が先導する!!
なっ……私の前に出るな!危険だ!!」
一般人たちはあまりのパニックにシルバーの横を走り抜け出口に先走る。
そして………
パンパンパンパン!!!
「アギャッ!!」「ウワッ!!」「あーッ!!」
一般人たちが銃に撃たれ死亡する。
(くッ………!!)
コツ……コツ……
銃を左手、黄金の剣を右手に握ったロンカロンカが歩いてくる。
「フフ、東京から呼び出した探偵三人の連絡が途絶えた時に、
この"拷問基地"のトラップを強化しておいてよかったです。
想定よりは少々来るのが早かったですが…
なにか急ぎのようでもあるんですかね?」
シルバーがトイレの陰に隠れる。
「ロンカロンカ……!!クソ、アイツだけは絶対に殺してやる……
逝った右堂院やジジイが浮かばれるように、絶望の表情に堕としてやる…」
憎しみを込めた手を握る!!
ビュン!!!ガランガラン!!
シルバーの入っている女子トイレの中にエンプレスプリズンが投げ込まれる!!
「………?な、なんだ……奴は何のつもりであの剣を投げた……
何か出してくるのか?」
剣は何も反応しない―――動じない。
しかし暫くして、異変が起きる。
ファンファンファン!!
シルバーの腕時計が何かの警告を発している!!
「これは……毒探知機が反応している―――!!
奴め、毒ガスをも剣の中に!……クソッ…!」
『毒ガスか、噂通り……遠慮のない女だな。感心するぜ。』
「外に出れば石化ブーメランを投げたり銃を撃つ前に滅多打ち、
ここにいても毒でそのうちやられてしまう。
前門の虎、後門の狼だな……」
ロンカロンカが歩いてくる。
「準備は出来ましたか?
遺書の準備。家族や友人に別れの言葉を告げる準備。
すべて手遅れだ。」
「ああ当然してないさ…
私の準備は貴様を殺す準備だけだ―――ロンカロンカ!」
シルバートイレの窓に向かって走り、ジャンプし!!廃マーケットを脱出する!!
そしてそのままロープ窓に引っ掛け真下にある一階トイレの窓に入る!
「取りあえず目先の危険は回避した―――
だがここは危険だ…水場にいかねば!!」
『トイレも水場だろ!!!』
「奴を倒すには水が少ないんだ
―――もっと水がある場所に行かないといけない……
向かうべきはこの階1Fにあるレストランの厨房か、噴水広場だ!
そこで奴と決着をつける!」
「近いのは―――フロア中央にある噴水広場だな……」
シルバーが走り噴水広場に向かう!
ガシャン!!ガララッ!!
シルバーが走るとともに、あたりの散らかったゴミが音を立てる―――
『シルバー気を付けろ!!2m前方―――トラップがある!!』
「くっ!!」
シルバーが大ジャンプをしてトラップをかわす!!
「よし―――噴水まであと15m!!」
『シルバー!!待て!!』
「またトラップなの!?」
『違う……違うんだ……とにかくそれ以上前に進むのは危険なんだ…!
ロンカロンカが時速80㎞近くのスピードでそちらに向かっている!!』
「じ―――時速80㎞だと!?
馬鹿な!あの剣からバイクや車を取りだして移動しているのか!」
『速すぎてよくわからないが―――乗り物には乗っていない!!
くるぞ!!奴が二階から飛び降りた!!今お前の真上だ……』
シルバーが上を向く!!
そこにはロンカロンカはおらず落下するエンプレスプリズンだけがあった!!
シルバーを斬りさき、封印する事を目標とした落下だ!!
しかしシルバーそれを間一髪で回避する―――!!
「………これはチャンスだ……
奴がエンプレスプリズンから出てくるその瞬間を狙う!!!」
シルバーがエンプレスプリズンに向かいリボルバーを構える……
エンプレスプリズンからロンカロンカが出てくるその瞬間を狙い―――
「銃は必ず両手で撃つ―――片手の方が格好はつくが、
命中率は両手の方が断然上だからな。」
ワン!ツー!スリー!
三発の弾丸を射出する!!
一発はロンカロンカの胸に命中―――!!
しかしその後ロンカロンカは鉄の盾……
警官隊などが使用する、ライオットシールドを自分の目の前にを取りだし―――
残りの弾弾を跳ね返す!!!
「当たった……初めてのダメージだ……
だが思ったより剣から出てくるスピードが速くて急所を外してしまった…」
「グッ……」
(馬鹿な…この私の能力を知っていなければ―――
私が剣から出るタイミングを見計らって銃を撃つなんて芸当はできない……
そしてこいつのもつ能力がプロメテウスのような
未来予知ではない事はわかっている!それは"ブラフ"で確認したからな…
一体何者……?)
(しかしロンカロンカが邪魔で噴水には行けない……
―――ならばもう一つの水場―――レストラン厨房へ向かう!!
私から3時の方向72m先にあるレストランだ!!)
シルバー走り出す!!
そしてロンカロンカはライオットシールドを再度剣の中に取り込み、
追いかけようとするが……
「何、足元から急にワインが……」
(ロンカロンカ、貴様の落下位置は事前に分かっていたんだ――――
だから事前に、その落下位置にワインをぶちまけ石化させていた……
石化を解除すれば、お前の足元はワインの水たまりになる!)
「ッ……足元で濡れていたものが急に固まった……いや、石化したんですかね…
この能力――――まさか!」
シルバーが顔のマスクを取り、その褐色の肌を露わにさせる。
「ロンカロンカ、地獄から這い上がったぞ―――」
「怪盗シルバー!」
ロンカロンカがエンプレスプリズンで自分を切り裂き、
石化したズボンと靴を残し自らを暗黒の異世界に転送する!
そしてシルバーが再度ロンカロンカが出るタイミングを見計らい
銃を構える!
「フン…」
エンプレスプリズンからライオットシールドが取り出され、
そしてその後に新品のズボンと靴を身に着けたロンカロンカが現れる!
「出た直後を撃たれないように先に盾の方を出したか…
くっ…この手はもう通じない……」
戦法が通用としないとわかったシルバーは厨房の方向に走り出す。
しかし50mも歩いたシルバーのその先に……
その先にはロンカロンカがいた!別ルートから先回りしていたのだ!
「ばかな―――私は50m走を6秒で走りぬく女だぞ……
どうやって奴は先回りした!
おいロル……奴はどうなっているか見てたか!」
『嬢ちゃん…俺もアイツの先回りする瞬間を見ていたんだが―――
どうやらアイツ―――四足歩行で移動しているようだ……』
「四足歩行だと…それだけで時速80㎞ものスピードを出せるのか…!?
どういう原理だッ…」
ロンカロンカが銃を構えると同時に、シルバーが右の分かれ道に身を隠す…
そしてシルバーは遮蔽物のある場所を転々としながら進む……
しかし―――
コツ……コツ……
ピりリリリリ!ピリリリリリ!
シルバーの向かうから音が聞こえる。
「―――この音は何だ……?」
ピ!
「もしもし。うん、論夏だけど。
そ、心配してくれてありがとう」
シルバーの向かう先でロンカロンカが通話してやがった!
「あいつ……電話してやがる……」
「来週にはちゃんと学校に顔を出せると思う!!
うん!大丈夫だって!!
うん!本当に大丈夫だから!!」
チッ…とシルバーが舌打ちをする。
(なんという狂気……
あんな邪悪なメスガキが正体を隠しながら
普通の人間と変わらない生活をしてる思うと…)
ヒュンヒュンヒュンヒュンヒュンヒュン!!1
「ッ……この音は!!」
エンプレスプリズンがすべての遮蔽物を飲み込みながら
シルバーに向かって投げられる!!
「うおおおおおおおおおおおおおおおお!!
あ、危ない……!!」
「うん!じゃあもう失礼するね!バイバイ優奈!」
ピ!
「フン!まさかこんな時間に電話をかけてくるなんて……
学校用の端末は電源を切っておきますか…」
ロンカロンカが能力を解除し、投げられたエンプレス・プリズンが消滅する。
そして彼女は瞬時に再度能力を再発動、右手にエンプレス・プリズンが出現する!
「DDFをあの倉庫から持ち出したのは君ですね、
しかし……君は今どこで暮らしているのでしょうか?
近所の友人の家に居候?それとも…どこかのホテルに潜んでいるんでしょうか」
「……」
「外には無数の警官隊がいるから、DDFはおそらく、
キミの今のアジトに安置されている……そう考えるのが自然かな?」
「……!!」
「フフ……ポーカーフェイスが崩れてますよ。
どうやらあの無様な敗北を経て、
私の前では冷静さを保っていられないらしいですね。」
「黙りやがれ…!」
「フン……生かす手間が省けた。そろそろ終楽章と行きますか。
『エンプレス・プリズン・シュトゥルムヴィント(暴君の風)』!!」
ロンカロンカが自分を切り裂き、自分を暗黒の異世界へと転送する。
そしてエンプレスプリズンの剣心の先にロンカロンカの頭部!
中央に両腕!末端に両足が出現する!
その姿は―――まさに奇怪!怪物そのものであったッ!!!
「へ、化物らしくて貴様にお似合いだ…」
シルバーが震えながら後ずさる……
瞬時!!ロンカロンカがダッシュする!!凄まじいスピードだ!!
「ッ……そうか……あの状態のロンカロンカは
胴体を剣の中に入れてるから、
――――体重が軽くなって…スピードが上がっているんだ!」
「ククク…」
(私、ロンカロンカの身長は丁度170cm、体重はおよそ64kg――――
いや50kg後半ぐらいだったか…まあいい…
一般的に胴体の体重は全体重の43パーセントほどなので―――
つまり今の私の体重は約30kg~20kgになる。
そしてこの状態だからこそ可能な4足歩行体型、
フフ、更に生まれつき持っている天才じみた身体の能力。
今の私が時速80㎞のスピードを出すぐらいわけはない!!)
ワン!ツー!
シルバーがリボルバーのトリガーを押し弾丸を二発射出する!!
しかしロンカロンカの目の前に鉄板が取り出される!!
「無駄だ!!エンプレス・プリズン・シュトゥルムヴィントは
如何なる攻撃をも瞬時にガードする事が可能な上、
あらゆる障害物をその剣の中に飲み込むのですッ!
さあどうする怪盗シルバー!?」
「銃弾がダメなら……こいつはどうだッ!!」
シルバーが水を石化させて作り上げたブーメランを投げる!!
「学習しないカスです……
あらゆる物質による攻撃は無効なのだと忠告した筈ッ!」
「石化を解除するッ!」
ブーメランは鉄板に防がれる途中で石化を解除―――
水の塊へと変貌する!!
しかし―――避けられたッ!!
動きは予測されていたのだッ!
「グッ……!!」
シルバーとの距離0.5mまで近づいたロンカロンカはシュトゥルムヴィントを解除。
全身を出現させシルバーの顔面を蹴りあげる。
「ギエッ…うおおッッ!!!」
「無駄な作戦考案、ご苦労様。」
ロンカロンカが剣を振り下ろすッ!!
「クソ……この技はまだ使いたくなかったがッ……」
カッ!!
シルバーがロンカロンカの目の粘膜を石化するッ!!
「グッ……小賢しい真似をッ………
聴覚で気配を察知できる私にこんなものは無効だと
前の戦いで教えてやったはずですよ。」
「いいや、狙いはお前の視界を封じる事じゃあない。
目が見えなくなっても戦えることは知っているからな…
私の本当の狙いは…
視界を失った瞬間の――――"ひるみ"。
お前は今、突然、目が見えなくなって"ひるんでいる"ッ!」
シルバがエンプレスプリズンに触れないよう膝うちをロンカロンカの顔面に
ブチ当てる!!!!!
膝の先には針が仕込まれていたッ!!
「グッ……うがあああッ!!!」
「知ってるか?
イノシシが突進してるときに目の前で傘を開いて脅してやると…
本能で怯んで逆走するんだよ…
それと同じ原理だッ…!
しかし私の能力は中距離特化の能力……
これ以上近接特化の能力を持つ貴様の近くにいると危険だ。
身を隠させて……貰うぞ……」
シルバー厨房に向かう……
そして立ち上がるロンカロンカ…
「"視界に見えるあらゆる液体・水分"を石化させる"能力"。
カスのような能力かと思っていたが―――なかなか応用の効く能力です。
そして確信したぞ…シルバーは『怪盗ロル』を味方につけていますね。
―――何人来ようと同じことだというのに…」
ロンカロンカが歩き出した。
「この界隈で一番恐ろしい事は『能力を対策される事』!
私の能力を知ったものは誰であろうと始末せねばなりません。
同じ探偵だろうと、一般人だろうとね。」
―――――――――――――――――――――――――――――――
PM7:10 廃スーパーマーケットレストラン『天上無双一品』。
そこにシルバーは辿りつく……
「恐怖…それは恐るべきものだ……
恐れは確実なる勝利をも敗北に変えるからな……
そして私は今あの女に恐怖している……
マズい――――強気になれ、Coolになれシルバー……」
『大丈夫なのか嬢ちゃん、というか……そろそろ例の時間だぞ!!
例の時間になったらいったい何をするんだ!?』
「外の音を感づかれないよう―――奴を外におびき出す。
それでこの私の勝利が決定する…
ここに来たのは、それまでの時間稼ぎ……」
『外の音…!?まさか…
………
――――ンンンッ!?』
「どうした!ロル!!」
『奴が今レストランの中に入ったッ…!!距離……15m!!
あとシルバー、何やら奴はこちらに向かっている最中に、
剣の中から複数の人を出していた!』
「剣から人だと!?何をするつもりかは知らないが……」
瞬時シルバーが銃を連発し―――
辺りのパイプや水道を破裂させまくる!!
ジャアアアアアア!!!
「奴は今、音を探知して私の位置を確認している。
音を出して、位置を気づかれないようにしてやる。」
ロンカロンカが厨房に侵入する。
部屋の右側に向かってエンプレスプリズンを投げるッ!!
シルバーが銃を構える直前に!!
そして、宙を舞うエンプレスプリズンがタンス、机、トイレなどのガラクタを
辺りに散乱させる!!!
「ううっ……!!」
ロンカロンカが能力を解除すると、壁にぶつかった剣が消滅する。
能力を再発動すると、剣は右手に出現する!
ワン!!
シルバーがリボルバーから弾丸を一発放つ!!
しかし――――それは鉄の盾によってさえぎられてしまう!
次にロンカロンカは部屋の左側に向かってエンプレスプリズンを投げるッ!!
ガラクタを辺りに散乱させる!!
シルバーがガラクタの谷に挟まれる!!
「フフ………逃げ場はありませんよ――――
そおれっ!!」
ロンカロンカがエンプレス・プリズンをシルバーに向かって投げる!!
しかしシルバーはエンプレスプリズンの柄の部分をキャッチし、受け止める!!
「―――!」
「ハァッ…ハァ……どうやら触れるとマズいのは刃の部分だけのようだな。」
シルバーガラクタを駆けあがり厨房を出る!
しかしその眼前にはロンカロンカがいた!
「――――!」
「シュトゥルムヴィント――――先回りする事は実に容易い事でした。
あとこの部屋の水源ですが―――
全て蛇口ごとすべて封印させていただきましたよ。
ストーン・トラベルは何をするか読めない能力ですからね…
さぁどうするんです!もうどこにも水源はありませんよ!
そして、この距離で銃は避けられません!」
「く……くそおッ……!!」
『シ、シルバァァァ―――――――!!』
バン!!
ロンカロンカがシルバーの脳天に向かって弾丸を放つ―――
シルバーは自分の頭部を両腕でガードするッ……
シルバーが脳天から血をふきだす……
「終わったな……」
ドンゴン!!
「えっ……」
ロンカロンカの脇腹から血が噴き出している……
「な……なんですこれは……い…痛いッ………」
痛みを抑えられず。
ロンカロンカが膝をつく。
「ハァッ……ハァッ………くそ…7時12分がきてしまった……
外に出なければッ……」
シルバーは生きていたッ!
シルバーがガラクタの山を下り、
ロンカロンカをよそにレストランから脱出するッ!
「………!!なんだ今のは……
銃弾が当たったと思ったら―――奴はダメージを受けてなくて…
気が付いたら私の脇腹がえぐられていた……
奴の今の攻撃を暴かないとッ……!!」
ロンカロンカが銃を撃つ!!3発だッ!!
そして全弾がシルバーに命中するッ!
しかし……
ガキンッ!!シルバーの体が銃弾を跳ね返すッ!!
「跳ね返したッ!?」
銃弾の命中箇所には割れた石のような傷跡が残っている……!
「まさか―アイツ、自分の体内の水分さえも
石に変えられるな……そうとしか思えない……」
「ハァッ……ハァッ……」
(ストーントラベルは"視界に入った水分を石に変える"だけの
カース・アーツではない、
自分で触れている液体すら、石に変える事が出来るのだッ!
そう、体内の水分を石化させ銃弾をはじく芸当すら可能だ……
だがこの技で銃弾をガードすると傷口が割れたように破裂するので、
急所への攻撃はガードできないし……
普通にダメージを受けた方がマシな事の方が多い……)
体の痛みを抑えながら、逃げるシルバー……
タッ…タッ……
足音がシルバーに向かってくる。
「あ、足音……それも複数、誰かいるのか!?」
『恐らく、さっきおれがレストランの中で言ったアレだ、
奴が剣の中から取り出した複数の人間……』
「そんな事言ってたな……」
シルバーが足音の方を凝視すると、そこにはゾッとする光景が広がっていた!!
足音の主―――ロンカロンカが剣から取り出した人間たちは、全裸かつ……
腰に、何かいびつなものをぶら下げていた。
(人間爆弾―――――ッ!!!
私の家を襲った―――――あの人間爆弾ッッ!!!)
―――――――――――――――――――――――――――――――
ザアアアアアアアアッ!!
水の音がうるさいレストランの中で、ロンカロンカが誰かと通話している。
「ええ、例のスイッチを押して、持ち場で20秒待機してください。
あと、銀髪の少女がいたら、追いかけて抱きつきに行くように。
命令を違反すれば殺します。
君たちの家族友人隣人親戚一同を皆殺しにしますからね。」
ピ!
「まぁもう、全員殺しちゃってるんですけどね。
フフ……怪盗シルバー…もう一切の逃げ場はありませんよ。
祖父と同じ末路を辿るがいいです。
アハハハッッ………あと10秒!!」
―――――――――――――――――――――――――――――――
「おおおおおおおおおおッッ!!ロル!!
どこか逃げ道はないのかァァー―――――――――ッッ!!」
『駄目だッ!!あいつ――――
人間爆弾をこの廃マーケット全体に均等な位置に配置してやがる!!
殺意のある配置だッ!!
どこにいっても人間爆弾がいるッ!!』
「く…くそ…こんな残虐な手を使いやがって……」
「お、おおおおおおおおおおお!!!!」
ドォォ―――――――――――――――――――――――ンッッ!!
寂れたスーパーマーケットが爆発の衝撃に耐えきれず崩れていく!!
瓦礫は落ち!!炎は炎上し!!荒れた音を立てる!!!
崩れていく!!全て崩れていく!!!
―――――――――――――――――――――――――――――――
PM7:12
VOOOOOOOOOO
廃スーパーマーケットの崩れた瓦礫を黄金の剣が飲み込んでいく。
そして、周りの瓦礫をあらかた消した後、黄金の剣身から一人の女性が出現する。
「終わった……」
ロンカロンカだ――――――――――――
「終わった…
怪盗シルバー、君はこのロンカロンカと
エンプレスプリズンの力に完全敗北したのです。
フフフ―――――フハハハハハハハ!!!!
知的!天才!絶対知性!!
フフフフフッ―――――
やはりこの私こそがこの世界を支配するにふさわしい絶対なる女帝なのだ!!
この世界の人間は二つに分別できるが―――
それは善と悪、勝利者と敗北者などという曖昧な境で分けられるのではない。
この私とそれ以外のカスだ―――!!
私こそが唯一の女帝!!それ以外は全てカス!!
愚かなる人間どもよ!明日からも日常的に殺し続けてくれます!!
他の三羅偵や百賭さえもいつかこの手で殺してくれますッ!
そして世界をわが手に掴みましょうッ!!
アハハハハハハハハーーーー!!!」
VAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA
勝者、ロンカロンカ………
「フッフッフ――――!!!」
「フ―――フッフッフッフッ!!!笑いが止まりません……
笑いが止まりませんよォ――――――!!」
┏┓ ┏┳┓┏━┓┏┓┏━━┓┏┳┓┏━┓┏┓
┃┃ ┃┃┃┗━┛┃┃┗━┓┃┃┃┃┗━┛┃┃
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┃┏━┛ ┏┛┃ ┃┃ ┏┛┃
┃┃ ┏━┛┏┛┏━┛┃ ┏━┛┏┛
┗┛ ┗━━┛ ┗━━┛ ┗━━┛
「――――!?雷ッ!?」
そしてその瞬時―――――
ザアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッ!!!!
雨が降る!!大雨だ!!!
「……大雨!?たしか天気予報では今日は台風接近…
傘を差さないと――――」
カッ!!!
右手に持ったエンプレスプリズンを掲げると同時に
ロンカロンカの動きが硬直する!!!
「!?―――な、なんだ……体が、う…動かない!!
いや――――石化している!!
馬鹿なッ……シルバーが生きているというのか!!
そ、そんなはずは……!!
い、いや……待て、奴には一つだけ方法があったッ……
爆弾を回避するッ一つの方法が!!」
ロンカロンカが目の前の瓦礫の上を見る!!
そして――――――――――――
そこに立っていたのは―――――――――――
「ハァ……ハァ……
そうだ!さすがに頭がキレるじゃないか……
天才少女探偵と言われてるだけの事はある……」
銀髪ショート、銀の瞳、褐色の肌という
背は決して高くないが神聖さのあるその外見、
黒色のコートを身にまとい体中が血で濡れまくっている―――
そう、夢ではない、正真正銘本物の怪盗シーフ・シルバーだ!!!
「ゲホッ……
人間爆弾たちの使う爆弾の原理は理解していた、
お前に一度殺された後、爆弾の破片を見つけて調べたからな。
彼らが腰に付けていた爆弾は自作爆弾。
自分で爆破範囲を細かく設定できるよう、
爆薬にはガソリンを選んでいる。」
「――――!」
「ガソリン、安易に手に入るにしては、あまりにも危険な爆薬だ。
5リットルで、8m×8mほどの室内にいる人間を全員皆殺しにし、
18リットルで、田舎の小さな学び舎を柱一本残さず消し飛ばす威力の
爆発を起こしたという記録がある。
まぁ取りあえず、こいつ<人間爆弾>の持つガソリンを石化させたことによって、
私は爆発から逃れられたわけだ。
そして、7:12分―――
この時間に嵐が来ることを……私は風を呼んで事前に予測していた。」
「ぐ……シルバー……!!」
エンプレス・プリズンから開かれた傘が取り出される!!
だがその傘はシルバーの放つ弾丸によって一瞬にしてブチ折られる!!
「お……おおおおお!!」
「お前はエンプレス・プリズンを出すとき、毎度毎度必ず
右手の方に出していた。どんな状況でもな―――
予測通りだ、右手を石化すると、キサマは何もできない……
形勢逆転だ…!」
シルバーの視界全てが灰色に染まっていく!!
草木、ビル、見える物体全てが石化する!!!
「なるほど…だが……」
(くっ……
この世すべての物質は…3つの種に分けられる!
すなわち個体!液体!気体!
あの怪盗シルバーのストーン・トラベルは……
そのうちの一つを、すべて石化させる能力……!!!
全物質の三分の一を味方につけることができる能力だという事……
侮っていたが……考えれば考えるほど恐ろしい能力だ………
だが勝機はある。
普通のインスタントどもならともかく―――
私は生まれ付きの超天才児!
この状況から貴様を倒す戦法はすでに編み出している!!)
「ハァ……ッ!!ハァ……!!終わりだ!!ロンカロンカ!!」
シルバー銃を構える!!!!しかし!!!
「爆発音だ!!」「ロンカロンカ様の声がしたぞ!!」「何ごとだ!!」
警官隊!!
――――――12名ほどの警官がこの崩れた廃マーケットと言う戦場に
足を踏み入れた!!
「邪魔だッ!!」
しかしシルバーが彼らの方を向いた瞬間―――
全ての警官は全身を石化させられてしまう!!!!
「呼吸口は残してある……窒息死はしないだろう……」
しかし―――シルバーがロンカロンカの方を向くと、
そこには驚くべき光景が広がっていた!!
何たることか!!
燃え上がっている!!!ロンカロンカの体が!!
炎上している!!!
「なッ…なッ……!!!
こいつ、私が目を離した隙に何かを出して自分の体を炎上させた!!!」
そして、エンプレスプリズンから、ガソリンが垂れ……
特にエンプレス・プリズンを持っていた右手に着火、爆発した!!
右手が半壊し、エンプレスプリズンが宙に舞う!!
「グゥゥ!!!」
「うおおおおおおおおおお!!!!」
シルバーが銃を構えると同時に、
ロンカロンカがエンプレスプリズンで自分を切り裂き、
石化部分を残して異世界に転移――――
そして瞬時に全身を取りだしシルバーと対峙する!!
エンプレスプリズンは左手に持っている!
シルバーは銃を撃つが―――
それは剣から取り出された人間の盾によって防がれる!!
「ば……馬鹿な……か、勝ったと思ったのに……」
「この程度でこのロンカロンカを倒せると思ったのですか?
フフフフフ……!!
この炎なら、濡れる前に水分を蒸発させることが出来る……
さぁ!!第二ラウンドです!!行くぞ!!!」
「うおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!」
絶望的な状況になっても折れない心を持って歯向かってくるロンカロンカの
その光り輝く姿に、シルバーは最高の絶望と恐怖を見た!!!
(こいつは確かに……悪だ――――!!
クズで邪悪で悪趣味で、一切の善性を持たない…
心に一点の光すら降り注いでいない絶対悪だッ…――――
でもそれでも――――こいつは…こいつは最強なんだ!!
絶対に折れない……誰にも負けないという強い意志があるッ!!
こいつはクズだが、私が今まで出会った誰よりも強い精神力を持っている!!
全てを黒く染めるドス黒い太陽だッ!!)
シルバーが滝状に水が流れている場所まで逃げ込む!!
「フッ……そこに突っ込めば私の体が石化しますねぇ!!
だがしかしッ!!」
ロンカロンカが滝の隙間に半壊した手を突っ込み、
シルバーの目に向かって血を撒き散らす!!!
目潰しだ!!!
「生物は視界を封じられると本能的に一瞬怯む―――
それは君が言っていたことですッ…!
目に血を飛ばされて一瞬のまばたきもせずにいられますか!?
斬り裂け!エンプレス・プリズン!!」
しかしシルバーはひるまなかった……一瞬の瞬きさえしなかった…
「だからッ……だからッ……コイツに勝つには"敬意"が必要だッ!
こいつはクズだがッ…その強さに"敬意"が無いと勝てないッ!
復讐とか苦しめてやるとか考えてやる暇などない……
勝つ事だけを考えなくては…!
精神的に勝てない相手に復讐は完遂できないんだ………!
そして……この……目を瞑らない事……
それが貴様の強さに対する"敬意"だッ!!!」
流れる水に触れたロンカロンカの半身が石化する!!
右腕以外はほぼ石化した!!
そしてシルバーはリボルバーに6発の弾を装填するッ!!
「おおおおおおおおおおおおおおお!!
6発の弾丸だッ!この6発の弾丸それぞれに我が思いを込めッ!
貴様を撃ち滅ぼす!!!!!」
ワン!ツー!スリー!フォー!ファイブ!
五発の弾丸が発射される!!!
一つ目の弾丸には――――
右堂院を失った悲しみを乗り越える思いが……
二つ目の弾丸には――――
プロメテウスを失った悲しみを乗り越える思いが……
三つ目の弾丸には――――
DDFを絶対に守り抜くという思いが……
四つ目の弾丸には――――
自分がこの街にいたが故に犠牲となった者たちへの懺悔の思いが……
五つ目の弾丸には――――
このロンカロンカを絶対に倒すという思いが込められていた。
全弾ロンカロンカの体に命中!!!
だがロンカロンカはまだ死なない!!
わずかに可動した右腕を動かし、爆発でボロボロになった右手の骨の鋭い槍で――
シルバーの胸を串刺しにする!!!
「トドメだ!」
「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおッーーーーーー!!!!!!!」
そしてシルバーが、ロンカロンカの脳天めがけ――――
「シックスッ…!(六発目だ)」
最後の弾丸を発射する。
最期の弾丸には――――
いつかこいつを越えるほどの強い精神力を持つ人間になってやる………
そういう思いが、込められていた。
頭を撃ち抜かれ仰向けに倒れたロンカロンカが痙攣している。
水流を浴びてなお身体につけた炎は完全には消火されていなかったようで、
部分部分が燃えている。
「ま……まだ……負けていない……
フフ……この状況から……勝つ……方法……今…思いつい――――」
シルバーがクルっと回り、ロンカロンカに背を向ける。
そしてその瞬間―――
ロンカロンカの近くにあった石化済みの人間爆弾のガソリンが……
灰色からオレンジ色に変わる。
ドォォ―――――――――――――――――――――――ンッッ!!!
マッレウス・マレフィカルム日本支部『三羅偵』
天才少女探偵ロンカロンカ(乱渦院 論夏)―――――――――――――死亡。
サ―――――――ッ
雨は、止まない。
雨が、血まみれのシルバーの体を打ちつける。
生き残ってもなお、ロンカロンカへの敗北感と恐怖に包まれた……
――――――彼女の背を。
―――――――――――――ネオ鳥取市によるDDF争奪戦。
死亡者…右堂院義明、プロメテウス・グラン、怪盗大裁判、ロンカロンカ、
その他600名ほどの一般市民。
損害…計り知れず。
勝者…なし。
――――――――――――――――――――――――――――つづく。
■怪盗名鑑 #01:シーフ・シルバー
石の旅<ストーン・トラベル>と言う、触れた液体と視界に入る液体全てを
石化させる能力を持つ伝説の凄腕怪盗。
その正体は在日アトランティス人。
純粋でショックをうけやすく心は決して強くは無い、
怪盗としての実力も上の下と言ったところだが……
大いなる使命のもとで戦うとき…大切な人の為に戦うときに限り
決して折れない無限の精神力をもって、あらゆる敵を打ち倒すと言われている。
好物は母親の作ったホットケーキ。
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