Episode4 開戦の兆しはさりげない日々の中に

AM7:13 鳥取県グラン家(シルバーとプロメテウスの家)


「はあ~良い朝だぜクソジジイ」


「プレム、おはよう」


シルバーの持論その1―――"三大欲求の中で最も重要なのは睡眠である"

眠りの三時間前には必ず夕食を済ませ、寝る前にノンカフェインのティーで体を温め眠気を施す。

就寝には特注のソフトな抱き枕とホットアイマスクは絶対に欠かさない。

午後11時に就寝、8時間の睡眠を経て、朝7時に起床。


「ん~冷蔵庫の中には~…おい…無いぞ……」


「?」


「アルツハイマー型認知症ごっこしてんじゃねぇぞクソジジイ!!!!

 冷蔵庫の冷凍室に食べ残しのホットケーキ入れてただろ!!!!

 どこにやりやがったコォラァァー――!!!!」


シルバーがジジイの胸ぐらをつかむ!!!


「どわあああああああああああああああああああ!!!!!」


シルバーの持論その2―――"三大欲求の睡眠以外は適当でいい"

3食なんか全部ホットケーキでもいいし、

彼氏なんていなくても別に生きていけるという意味だ。


「いや本当に知らんぞ!今回に限ってワシは無実じゃ!!」


「じゃあ誰が食べるっていうんだよ!」


ドンゴン!!

ホットケーキの恨みを代行した机ドン!

シルバーがテーブルを強く叩く!


「あ―――、すまないプレム、ホットケーキを食べたの…私だよ。」


「あっ…ジェーンか…」



シルバーが声の主のいる方向に目を向けると、

――――そこにはマッサージ機に座りながら本を読む怪盗睦月、1週間前にウィザーズの一員になったあの睦月がいた…。

ちなみにジェーンとは―――睦月のプライベートでの偽名だ。


家と父親という鎧を同時に無くした事で探偵達に命を狙われる身となった彼女は、

なんやかんやあって新たな住居に移住するまでの短期間、

グラン家に居候するという事になったらしい!



「責めないでくれよな、冷蔵庫の中のものは何でも食べていいって言ったのは

 お前なんだからさ……

 あっおじいさん、バニラ味のカントリーマアム3つ取ってくれませんか。

 ココア味はいらないです。

 なんでカントリーマアムにココア味なんてあるんだろ。」


「ジェーンちゃんはかわいいなぁ!はいよ!」


「久々に若い巨乳女と会話して浮かれてんなこのスケベジジイ…

 ところで、ジェーン、新しい住居は見つかったのか?」


「うん。お蔭さまで。一週間後にはここを発つよ。」


「そうか。良かったな。」


良かったの極み。


「ずっとここに泊まってても良いんだけどなぁ」


「いえ、そこまでしてもらう訳にはいきません。

 私もウィザードの一員になった以上プライドがありますし…

 なにより、亡き父の心に答える為、一人で戦わなくては…」


「ちなみに、父親が死んだ事を暴露するのはプライベートではタブーだぞ。」


「あっ……しまっ…」


「まぁ今度から気を付けようね」


「ははは…」


睦月とシルバーが苦笑いし合う。

そしてこっそりと二人の話に耳をたてていたプロメテウス(クソジジイ)は…何やら考え込んだ表情をしていた…


「――――(父親が死んだ…?まさかジェーンちゃん…島風の一人娘か…

 たしかあの現場にはシルバーがいたという報告も……ならば…)」

―――――――――――――――――――――――――――――――――

AM12:10

睦月がグラン家に居候して既に4日目、

シルバーとプロメテウスはとある二つの問題に直面していた。

―――――――食糧の消費早すぎ問題。

―――――――トイレットペーパーの消費早すぎ問題。

まぁ2人暮らしから3人暮らしに変われば、

そりゃ色々なアレの消費が早くなるのは当然の理論なので

一日目で気づくべき問題であった。


シルバーは、そんな問題を解決すべく、

愛車のエンジンを鳴らして買い出しに出かける。

―――――――車種はビュイック・スペシャル。

(正式名称――" Ted & Sue Richadson's 1962 Buick Special " Bu Wicked "")

めっちゃスピード出る車だ。


……


「ふぅ…一通り買い物終わり。

 腹減ったしレストランでも行くか…」


一時間ほどで一通りの買い物を済ませシルバーは

昼食をするために行きつけのレストラン

―――"The taste of Phoenix"に向かう。


「ジェーンには悪いけど、たまには一人でゆっくり食べたいしね…」


「―――あっ、グランさんですか?おはようございます。」


「ハ―――!?!?」


背後から男に声を掛けられるシルバー。

-―――謎の男。正体不明の謎の男。


「…!あ、君は確か…探偵の…」


紺色のコートに片側だけ発達した奇妙な前髪、身長は180㎝。

優しそうな顔に鋭くとがったその目つき。

――――その男、右堂院 義弘(うどういん よしひろ)、24歳私立探偵である。



「ヨシヒロ君、こんにちは。

 あと、何度も言ってるけど私の事はプレムでいいよ。」


「いえ、そういう訳にはいきませんよ。

 年下ですが、僕はあなたの事を尊敬しています。

 尊敬の対象に失礼な言葉づかいをするのは、

 僕自身のプライドが許さない…。」


「ふーん、真面目だなぁ。で、こんな所で何してんだ。」


「依頼主の落とし物の調査ですよ。

 どうやら、2日前の夜中にこの付近をバイクで走ってる途中、

 50万ドルを入れた肌色の財布を鞄から落としたらしくて。

 肌色の革製の財布らしいですが…」


「いつもいつも損な役回りだなぁ、お前。

 それにしても、肌色の財布ねぇ。」


「…グランさんは何か思い当りとかありますかね?」


「その依頼主が走ったルートを記した地図はある?」


「ええ、これです」


「-――なるほどね…

 ちょっとついてきて。」


シルバーは右堂院をとある場所に誘導する。


「これは…」


そこにあったのは、

道路のわきの溝によくある鉄で網目状のアレに挟まった肌色の財布であった。


「すごい、なんでここにあるってわかったんですか!?」


「前にここ歩いてる時にたまたま見つけたんだよ。」


「そ、そうですか―――――でもグランさんはいつもすごいです……

 この前の調査の痕跡も直ぐに見つけてしまいましたし。

 やっぱり洞察力と記憶力が高い、私なんかよりずっと、

 探偵のしての素質がありますよ。」


「よしてよ、私は探偵になるつもりないよ。(ていうか怪盗だし。)」


…………


(今日ドライブしてる間に100m以上離れた車内から見つけていたなんて言っても、

 信じられなさそうだしなぁ…

 ヨシヒロ君、"普通の人間"だし…


 ――――私には、天才怪盗一族の血が流れている……

 この体には先祖たちが遺した、天賦の才が遺伝している。

 身体能力の高さ、洞察力と記憶力が高さは、

 "普通の人間"よりずっとずば抜けている。


 ―――――私は、生まれついての天才怪盗なのだ。)


「中身、50万ドルと依頼人が言ってた情報と一致する名刺が入ってますよ。

 ―――――ん?なんか白い粉が入った袋もあるな。」


モッサァ


「『覚醒剤』だな、それ。」


「えっ……」


「成程、財布なんかを探偵に探させる時点で何かおかしいとは思ったが、

 依頼人はヤク中か。


 名刺と麻薬が同時に入った財布を別の人間が見つけてしまうのはマズいから、

 お前に調査を依頼したんだな。」


「―――――」


右堂院が頭を抱える。


「ま、依頼人次第で仕事内容が変わるなんでも私立探偵の仕事だ。

 こういう事も起こるだろうよ。」


「どうすれば…」


「―――――取りあえず、こんな所で白い粉持って話すのもアレだ。

 時間もアレだしレストランにでも行こうよ。」

―――――――――――――――――――――――――――――――――

AM12:20

米帝からの刺客。あまりのウマさで逆に激怒する舌。

―――――洋食専門のゴクジュョウ・レストゥラン"The taste of Phoenix"。


「僕はラーメン。」

「わかりましたそちらのお客様は」

「パンケーキ。」


「お客様、パンケーキはデザートでございます!!!!!!!!!」


「はやく。」

「分かりました。」


そしてパンケーキとラーメン届く…

飯を食べながら二人は談笑をはじめる。



「で、あの財布はどうすんだ?」


「探偵としてのプライドの為、依頼遂行を優先して、依頼主に届けるか…

 それとも、人として、正しい道を歩むために警察に通報するか…

 グランさんはどうすべきだと思いますか?」


「そして私に聞く事じゃないだろ…」

(真面目なのか真面目じゃないのかわからんな…)


ピ―――ガシャガシャッッ!!


『え~~~!本日のゲストは…

 国際探偵協会マレフィカルム日本支部の皆さんでーす!!!』


店のテレビで何やら探偵に関する特集が放送され始める。

―――――――――――――――――――――――――――――――――

探偵協会マレフィカルム。

――――正式名称マッレウス・マレフィカルム<魔女狩り>

シルバーの所属する能力者怪盗集団「ウィザーズ」に対抗するために作られた、

世界規模の探偵協会だ。

ウィザーズと同様、呪いの鏡によってカース・アーツ使いを増やしているようだ。

―――――――――――――――――――――――――――――――――


「この店、テレビも置いてるんですね

 それにしても、探偵特集か……」


「そういえば今日のこの時間は探偵特集やるんだったな、

 一応(マレフィカルムの動向を知るために)録画はしているが…」


「―――――あ、あの探偵は!」


『フッフッフ……

 もっと寄れい…!!わたしの美貌を全国放送するのだ!!!!

 ―――――ちょっと2カメ!3カメ!あと3m寄りなさい!!小走りで!!』


「天才少女探偵、ロンカロンカかッッッ!!!!」


-------------------------------------------------------------------------------

テレビの画面に、真紅のブレザーを着た金髪ツインテールの女が写る。

身長は170㎝ほど、目は黒紫で鷹のように鋭い。また、胸の大きさに恵まれている。

――――彼女の名は、乱渦院 論夏(ろんかいん ろんか)…字はロンカロンカ。

-------------------------------------------------------------------------------


「ロンカロンカ17歳……

 生まれ付き超常じみた高い知能を有しており、

 わずか7歳の時にマレフィカルムの一員となったという記録がある

 ―――――超天才探偵。現在は学生。

 狙った怪盗は絶対に逃さない。


 女性としての見た目も最高だ。人形のような顔に、細い腕と脚。

 ―――――そのため、

 ファンのオタクも多く探偵界隈のアイドル的な扱いをされる事は珍しくないし、

 アイコラエロ画像が匿名画像掲示板に沢山出回ったりしている。」


「あれ、グランさん意外に探偵に詳しいんですね」


「―――――まぁな…」


がやがや


『俺の苗字さぁ―――――「とうけつ」って読むんだけどォ……

 これ"ガキ"どもにすっげぇ弄られるんすよ―――――。

 あいつら、ケツとかアナルとか大好きすぎるだろ…。

 「半ケツキンタ麻呂」とか「プリケツ金玉汁」とか…


 ―――――ああクソッ!

 学生時代の嫌なメモリー思い出しちまったぜッ!ウォイ!』


「動かぬ探偵、東結 金次郎か……」

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ツインテールの次にテレビに映し出されたのは、

東結 金次郎<とうけつ きんじろう>。

外見は40代ぐらいのファッションセンスがカスのオッサン

――――其れ以上に的確な例えが無い。

黒いキャスケットを被り、100円で売ってそうなダサTシャツを着ている。



探偵協会マレフィカルム日本支部には

支部内最高クラスの探偵3人に与えられる称号――――「三羅偵」が存在する。

東結とロンカロンカは―――その「三羅偵」のうちの二人である。

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シンッ――――――テレビ番組が唐突に黙る。


「最後はやっぱりあのお方ですね…」


「―――。来るか…日本探偵界最強の女。」


タッ……タッ……


Voooooo........


『司会人、一つ問おう。人が人の頂点に立つ為に必要な"もの"とは…何だ?』


『フヒヒ!力。結果。資質。――――即ち"カリスマ"ですじゃ。』


『カリスマ…フフ、カリスマか…確かにそれも大事…』


Voooooooooooo........!!!!


『――――だがカリスマで立つ頂点とは…凡なる頂点でしかない……!!!

 凡なる頂点では、真なる救済は行えない――――

 現に見ろ。支持率争いなどでトップに立った癖に、

 全ての民を楽園に導く力の無い奴らがこの世界にどれほど存在するか……

 そう、人間の頂点の歴史は…紀元前から一歩も進化はしていない。』

 

VOoooooooooooooooooooooooooooooooooooo!!!!!!


『時は既に西暦2010年、

 人類の頂点の有り方を再度考え直す頃合いだと、私は思うのだ……

 真に人の頂点にあるべきは"絶対正義"だよ。

 分かるね司会者?』


『?????????????????????????????』


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銀髪に赤色の瞳。身長は162㎝ほどか。

純白のメイド服をサイバー系のデザインにしたような恰好をしており、

全身からは並々ならぬ帝王の闘気を放っている。


彼女こそ、探偵協会マレフィカルム日本支部のTOP。

「三羅偵」より格上の称号を持つ女。

日本最強の探偵。次期総理大臣に最もちかい女。

         夜調牙 百賭(やちょうが びゃっか)――――その者である。

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シルバー鋭い目でテレビをにらむ。


(そして、この私の父と母を抹殺した女―――――――)


「すごいですね、探偵協会のトップも3人も…

 テレビ越しだけど流石に威圧感で息が苦しくなる…


 でも、僕もいずれ彼等に会う事になるんだろうな…」


「――――ん?どういう意味だ。」


「実は以前、マレフィカルムの方が僕の家に来て――――」


---------------------------------------------------------------------

「右堂院探偵、君は非常に洞察力と記憶力の高い探偵だ。

 その素質、ぜひマレフィカルムの為、そして日本国民の為に

 利用してみないかい。」

---------------------------------------------------------------------

「―――、って勧誘が…」


「そっ……か……」


「あっ、申し訳ありません、何か落ち込ませるような事、言いましたか。」


「ううん。」

(――――。

 もし義弘君が、マレフィカルムに入ったら、

 怪盗として闘う事になるのかな―――――

 なんか、嫌だな……

 カース・アーツ使いになったら……

 今よりずっと危険な仕事を請け負う事にもなりそうだし……)


13秒の沈黙。

そして右堂が話題を切り出す。


「―――実は僕。探偵をやってるのは、ある理由がありまして。」


「人の役に立ちたいから、でしょ?前にも言ってたじゃん。」


「変わったのですよ、それ。」


「?????????」


「――――実は最近、僕はこの町に住むとある女性に片思いをしているんです。」


「えっ…」


「その人は強くて、才能があって、僕に勇気を与えてくれる人―――

 ちょっとガサツで、言動に女性らしさはあまり感じられないけど

 だがそれが逆にいい……」


「………」


ガ―――ガ――――


『ああ。最近話題の怪盗シルバーのことか。

 我々マレフィカルムも奴の捜索を行っているんだが…

 どうやらなかなか腕の立つ怪盗のようで、

 まだ影も形も掴めていないんだ…』

『シルバーが見つかったら?もちろん殺す。だが只では殺さん。

 24時間かけて強姦した後全身の皮と爪を剥ぎ取り、

 酸の風呂に入れて長期に死に至らせる。

 そして全裸で犯される最中の画像を永久に電子の海に流し晒し

 末代までの恥に落とす!』


―――――――――――――――――――――――――――――――――

AM13:12

シルバーは右堂院と別れ、愛車で家に帰る途中だった。

だが……だがしかし………


「フン、奴ら付けてきてるな。予定通りだ。」

後ろから付けてくる車が1台あった!!!!!!


ドンゴン!!!

停車!!!!


「降りなよ、話があるんだろ?」


モジオモジオモジオモジオモジオモジオモジオモジオモジオ


モジオモジオモジオモジオ


車から降りたその男たちはヤクザだろう…だがおかしな姿をしていた。


「俺は黒田組ヤクザ――――――「鼻」!」

「同じくヤクザ――――――――「目」!」

「そして黒田組組長――――――「口」!」


3人いたが、それぞれが、目、鼻、口の被り物をしていたのだ!


(なるほど…ヤクザは大体頭に傷とかついてるから外見的に目立つ…

このキチガイみたいなマスクは、街で目立たない為の変装か!)


彼等こそ、右堂院の依頼人。


「だが薬のやり過ぎで脳がクリームになってるのかな?

 てめぇらまとめて思考能力が虫並だ。」


「麻薬を見られたからには生かしておけねー!!てめぇと右堂院は死のケジメだぜ!」

「オス!!それが ヤクザの掟……」


目のヤクザにナイフを突きつけられる!!!!!!


「コンクリ詰めじゃあついてこい!!」

「『石の旅』!!!!!!!」


鼻と目が目を抑えて悶絶する。

「目があああああああああああああああああああああああああああああ!!!!」

「な、なんだー二人共!!!」


「カタギ、それも生身の人間相手に能力を使うのは

 弱いモノ虐めみたいで好きではないが、

 まぁこれもあの彼を守る為だ。


 ストーン・トラベル…二人の瞳の粘膜を石化した。

 そして……」


グッジョッバオ!!!!

シルバー石製の針で二人の目を貫く!!!!


「な、なにやってんだおめえええーーーーーーー!!!!!!!」


「お前等が二度と私達に関わらないようにするための儀式だ。

 本当は殺してやってもよかったんだけど…

 まぁアイツが今回の一件を警察に連絡したし

 確実に牢獄行きだからな。」


「てめぇも傷害罪で豚箱行きだろうがァァァ――――!!」


「証拠は何も残らないし、残さない。お前とは違う。」


石の針が水へと溶けていく。

石の針は能力で石化した水だった。


「た!!た!!たしゅ!!!!た、たしゅけてーーーーーーー!!!」


組長の鼻が逃げるために振り返り走り出す!!!

――――だがしかし、シルバーは背中から石のブーメランを取り出し……


「背を見せられては瞳を石化できないな。

 だが丁度いい。丁度こいつのテストがしたかった所だ。」


シルバーがブーメランを依頼人の脚に向かって投げ……


「ゴアアアアアッス!!!!」


鼻の右足にブーメランがぶっささり……!!!


「石化を一瞬だけ解除する。」


石化を解除されたブーメランは水の塊となる。

そしてその瞬間。


「そして、貴様の血ごと再石化……」


「う、あああああああ!!!なんだこれ!!!!

 ブーメランが俺の体と一体化して…」


ステーン!

鼻がずっこける!


「―――さぁ、そろそろ目を潰す時間だ……」


「や……やめろ……


 やめてぇーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!」





ヤクザは…邪悪な存在だ。

怪盗もまた、同類。


だが私は……清らかな気持ちで生きている……


なぜなら私には、あら運命があるから。

なぜなら私には、DDFを守るという使命があるから……。

―――――――――――――――――――――――――――――――――

同時刻 グラン家倉庫部屋


プロメテウスは、睦月といっしょにこの部屋の奥の壁際にいた。


「大切な話があるって聞いてきたんですが……

 フフッ、おじいさん、なにしようとしてるんですか?」


「真剣な話だよ。」


「人の胸の先っぽを視線でしゃぶってるおじいさんの真剣な話って一体何さ……」


「oops!」


仕切り直し------------------------------------


「実はワシ、怪盗シルバーを探してるんじゃ。」


「―――なんで、シルバーを?」

(そういえばおじいさん、プレムがシルバーだって事知ってないんだっけ。)


「DDFという宝石を盗み出したからじゃ。

 アレはワシの求める宝石――――」


「D…D…F…?」


「――――ジェーンちゃん、お主なら知っている筈じゃ。シルバーの居所を……」


「知りませんよ。なんで知ってるって思ったんですか?」


「……お主が島風の一人娘、睦月だからじゃ。」


「――――!!」

―――――――――――――――――――――――――――――――――

ワシはプロメテウス・グラン、またの名を怪盗アルギュロス。――――

ワシには運命がある――――

生まれた時から神より授かりし運命が……


DDFを闇の者の手から死守し、

世界の黄昏を回避する事……それがワシの運命。


いや―――ワシだけの運命ではない、ワシの一族の者なら誰もが背負う運命。

当然、わが孫……プレムでさえも。


睦月ちゃん、彼女は良い娘だった。

ワシがDDFにまつわる真実を話した時、

プレムの身を案じて、ワシにすべての情報を教えてくれた。


あの優しさなら、孫の良い親友になれる。

ワシがこの家を去った後、彼女の寂しい心を埋め尽くしてくれるだろう。




ワシは孫からDDF盗み出す。

運命の為。ワシの為。そして―――――――プレムの自由の為。


扉の先に、悪夢の宝石はある。









キュップイイーーーーーーーーーーーーーーーーンッッ!!!!

ドンゴン!!!!!!!!!!!!!


「うっ!!!このエンジン音!!!まさか……プレムが帰宅したな……」


プロメテウス、プレム部屋のドアノブの握りしめる力を緩くする…


「―――まだじゃ、まだ機ではない。

 孫とはいえ、怪盗のプロ。それも伝説だ。

 ハンパな盗みでは、必ず―――失敗してしまう。

 だがプレム、必ずお前からDDFを盗み出してくれるぞ。」


―――――――――――――――――――――――――――――――――

探偵協会マレフィカルム日本支部

探偵王の間


白金の椅子で足を組みながらワインを飲む百賭に、

部下の探偵が話しかける。


「百賭様、例の男です。」


「通せ。」


黒マントの男が、百賭の間に入ってくる。


「夜調牙 百賭――進捗は?」


「ああ、既にDDFは4つ揃えている。」


「おおっ、あと一つか―――順調だな。

 我が悲願の達成も近いぞ…!

 フ……フフ…

 フーーーーー!!ハーーーーー!!ハーーーーーーー!!!」


「そして最後のDDFを所持する怪盗シルバーの元へは

 既に刺客を送っている。」


「ン………!?まてよ百賭……

 貴様今日のテレビ放送では、シルバーの影も形も掴めていないとか

 言ってたじゃないか!!

 影も形も掴めていない相手に殺しの刺客を送れるものなのか!?」


「依頼人様!!影も形も無いってのは嘘っすよ!!!」

40代ほどの男の声がする。


声の先は、黒マントの男の右側、

そこにいたのは、高級ソファーで股をひらいてくつろぐ、

「三羅偵」の一人――――東結 金次郎。


「腕の立つ怪盗ってのは、探偵の動向を知るため、

 ああいう番組は必ず見るんすよ。

 だから、あそこでウソの情報を流せば、怪盗の不意を打つ事が出来る…

 所謂、情報戦ってやつよ。」


「そ、そうかなるほど…!

 して、シルバーの元にはどの探偵を送り込んだ…!

 どのご当地最強探偵か…!」


「いや、奴ら程度ではシルバーを殺す事は出来ぬ……

 夢天耀や、凶羅たけしの二の舞だ……

 だから、アイツを送り込んだ……

 わが協会、屈指の探偵を……」


「まさか」


「そう-―――――――「三羅偵」ロンカロンカだ。」


                               つづく。  






















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