第3話

「…で、何で僕が死んだって知ってるの?」


ひとしきり叫んだ後に少し冷静になった僕は座って自分の体を毛づくろいしなが

ら“ゆら”に尋ねた。


「いや、だから、ここにいる時点でまずお前は死んだってことになってんだよ。」


呆れながら元から細い目をもっと細くして僕を見た。


「いや、そうじゃなくてさ。僕自体が死んだことに気づかなかったのに、すぐにゆらは気付いたじゃないか。」


一通り自分の体を綺麗にした後、さも当たり前かのように話している“ゆら”に対して僕は再度質問をした。


「ああ、それなら簡単だよ。ほら、そこにおばあさんが一人いるだろ?あのお婆さん、亡者があの橋を渡る前にスープを飲ますんだよ。忘却スープ?とか言ってたけな。俺もそのスープを飲む時に一回止められたんだ。そこで、お前と、もう一人“ロン”が来るまで待てって言われてな。」


僕に話をしながら“ゆら”は尻尾をゆらゆら揺らしながら橋の近くにいるよぼよぼのお婆さんに目を向けた。


「え、待って待って。スープ?ロンを待つ?何のこと?全然わかんないよ。」


次から次へと出て来るゆらの話に僕は付いて行けなくなったので、一つ一つ教えてもらえるように質問した。そうすると“ゆら”はめんどくさそうにこっちを見ながら話し始めた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る