第12話


「星羅リミリーです。今日からこの学校に転校してきました。見た目、金髪でヤンキーっぽいかもだけど、地毛だから安心して話しかけてくれると嬉しいです! 祖父がイギリス人のクォーターで。今日からよろしくお願いしまーす」


 朝のホーム―ルームは教卓前に立つ、転校生の登場により賑わいをみせていた。

 リミリーの気さくな挨拶、追加で凄まじい美少女っぷりが拍車を掛けていることは確かだ。


「モデルみたい……」

「金髪碧眼美少女神!」

「あれはっ、スイカレベルっ……!」


 当然、口々に好印象な発言が飛び交う。


「皆さんお静かに。まだ他のクラスもホームルーム中よ。それじゃあ、星羅さんの席は……っと、一つ足りないわね」


 窓際の一番後ろの席に座る哀斗も教室中を見渡すも、田中先生の言う通り空席は見当たらない。


「先生が忘れるなんてめずらしー」


 明るくてコミュ力高めの女生徒が田中先生を茶化す。

 哀斗も、珍しいなと思っていたところなので、ついさっきの非礼を詫びる。


「(喋る人がいなくて仕事に励んでいると勘ぐってごめんなさい)」

 

きっと、仕事が忙しくてここまで手が回らなかったのだろう。

 


 しばらくして、田中先生が持ってきた机と椅子は哀斗の真後ろに置かれた。

 リミリーは教卓から席へと向かう途中、哀斗にだけ聞こえる声で、


「哀斗の後ろになっちゃった」


 堪えるように呟いた。見れば、目元はへなっと垂れていて、口元は緩んでいる。まるで猫のようだ。


「(えっ、それってどういう……)」


 と、頭の中だけで問いかけるのが精いっぱいな哀斗は、胸の高鳴りを意識せずにはいられなかった。

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