調律
チューニング
それは、50年前、オドの木が誕生してすぐに発明された技術。
人間には実体という器があり、その中には魂と呼ばれる存在があるという。
xとy軸で考えよう。実体はxとyの交点に位置しており魂をy軸に沿って伸ばしていくこれを希釈と呼ぶ。
そして、敵性存在レイダーには通常の攻撃は効かない。効かないというよりはダメージを与えても規格外の修復力で再生するためである。その理由が希釈されているレイダーの魂にダメージが入っていないためである。
レイダーは自身の実体をチューニングで僕たちの次元に送り込んでくると言われている、実体はこの次元に存在しているため実体を傷つけることは可能、しかしレイダーの本質は「魂」は更に深い次元に希釈しているため、いくら攻撃しても再生し続ける、そこに底はない。
その対抗手段として、チューニング技術を使い、使用者をこの次元に固定(座標を常に記録し認識し続けることで可能としている)し使用者の魂を希釈していくという、ちなみに、深い深度までチューニングしすぎると容易には戻ってこれなくなるため、チューニングの応用でサルベージという技術がある。対象者のチューニング座標さえわかればそこから実態のある座標へサルベージすることが可能、それにはオペレーターによる観測が不可欠となる。
チューニングをするメリットは、深度が深ければ深いほど実体が纏う多次元防壁が厚くなっていくため、深く潜れば潜るほど実体が受けるダメージは軽くなっていく。そして例えば深度10までチューニングした者は深度5までチューニングした者より次元干渉力が大きいため無条件に攻撃が通るが、深度が低いものはダメージが低くなっていく。この差が広いほどダメージは薄くなっていく。これはオドを用意たものに限るため、物理に関しては関係ない。しかし、深ければ深いほどダメージは与えられる干渉域は広いがその分威力も希釈していくため深ければ深いほど強いとは一概には言えない、ダメージが一番通るのは深度が同じ位置にあるときつまりダメージを与えようと思うのであれば相手と同じ深度までチューニングする必要があるため逆に相手の攻撃も通ることになる。
「と、こんなもんかな・・・」
僕は図書室でチューニングの勉強をしていた。
軍の方でもチューニングの座学はあったのだがいまいちよくわからずじまいだったので一人で勉強をしている。
「そして、オドとは魔術を用いるために使う、自然資源っと」
黙々とチューニングに関する教材を読み漁る
「・・・」
ん?これは・・・
「戦闘スタイル・・・?」
関係ある本をとにかく集めていたので、そこの中からふと目についた教材を取り出す
「ふむ、なになに」
チューニングで生まれる多次元防壁の関係で使用武器や戦闘スタイルに明確な格差が生まれている。オドを使った魔術はチューニング深度が深ければ深いほど多次元防壁も厚くなり物理に強くなり一方的に戦えるため一番強いと言われるそれに比べて、物理を主な戦術にする剣や格闘武器は相手がチューニング技術で上を行く場合苦戦を強いられる。しかし魔術を基本とする戦術スタイルは難易度がとても高いため、主に物理武器を使うものが大半である、遠距離の銃、弓などもあるがこれは魔術と物理武器の中間の立場にある。ちなみにチューニング深度が深ければ深いほど打撃武器同士の場合チューニング深度が深いほうが有利になっていく。
「なるほどな、こうなると物理武器種は完全に不利になるわけだ、相手がチューニングすればこちらの物理攻撃は効果が薄れる。それを補うために自分もチューニング深度を下げれば下げるほど相手の攻撃有利範囲に近づいていくことにもなるってことだからな」
これじゃあ、物理武器なんて使ってる人がバカを見るじゃないか
「なにか手立てとかないのかな・・・ん?これは」
魔術は実体に使ってもほぼ効果がない、そのかわり魂に大きくダメージを与える。打撃武器ならび物理系武器はその反対
「なるほどな、魔術がきたら深度を戻せばほぼ無効化出来るだけだ」
魂にダメージが入ると肉体にはダメージがないが、チューニング深度が実体と魂の差があまりない時に魔術をモロに受けると肉体にもダメージが現れる
「・・・」
魔術は求められる技術難易度が高い代わりに全体的に有利に戦える。しかし物理攻撃も使い方による、多次元防壁は物理攻撃を完全に無効化はできない、つまり相手がダ
ウンするまでチマチマ攻撃するか、相手が耐えきれない質量で攻める、など戦い方は様々である。ちなみに、剣や格闘武器、射撃武器にも魔術を使った攻撃方法のエンチャントという戦術がある。
「エンチャント・・・かぁ」
エンチャントとは、打撃武器に魔術効果を寄付し使用する応用技術である。打撃攻撃はチューニングで深度を下げる理由としては多次元防壁を透過させるための理由であり、魂ではなく実体へのダメージを与えるために深度を下げる。しかしそれでは魔術相手だとあまりにもスキが大きすぎる。割りに合っていない。しかしエンチャントをつけることにより魔術効果を寄付してあるため魂へのダメージが入るため。エンチャントを寄付することによりより有利に戦況を進めることが出来る。
「なるほどなぁ、これを見る限りエンチャントは使えないと損をするな」
パタンと本を閉じる
「だいたいこんなもんか、あとは実戦形式の練習を・・・」
本を返そうと席を立とうとしたその瞬間
「あらあら、こんなところに、今更チューニングのお勉強なんてしている人がいたんですね」
「・・・」
最悪だ、よりによってこいつと出会ってしまうとは
「あら?しかも初歩の初歩、こんなの入隊時に教えてもらったはずでは?まさかまだ?あら、あらあらあら、それはそれは・・・滑稽なことで」
「チッ・・・」
「なんですか?いま舌打ちが聞こえた気がしますけど」
「なんでもねーよ、お前こそ何してんだこんなところで」
「お前じゃありませんわ、私には立派なアイラという名前があります」
「あーはいはい、でお前は何してんだよ」
こいつの名前は「アイラ・F・エンゲル」僕たちと同じくドールズであり、同じ学年の2年Aクラスに所属している女子生徒。
皆に対してそうだが高圧的&高飛車な態度で接し、誰も近寄らせない、そういう雰囲気をいつも出している。触るもの皆噛み付く狂犬のような感じ。
しかし、僕に対しては事あるごとにいちゃもんを付けてくる。なにか悪いことをした覚えはないのだがな・・・
「グッ・・・わ、私は昨日のレイダーについて調べに来ただけです」
まぁ聞いたところで会話を続ける気はないのだが
「そう、じゃあ僕はもう行くから、頑張れよ」
そういい本をまとめ席を立つ
「ちょっと待ちなさい」
「なんだよ、まだ言い足りないのか?」
「別にそうじゃないわ、なんで今更チューニングの勉強なんてしてるのよ」
「悪いかよ…そんなのうまくできないからに決まってるだろ」
「・・・あらあら」
ニヤリと笑う
しまったな言うべきじゃなかったか
「あらあらあら、そうなの~それは困ったわね、ドールズがレイダーと戦うにおいて必須技術が苦手なのは困ったわね、へ~そう~」
このいかにも相手の弱みを握手やったぜみたいなこのニヤついた顔!ムカムカするな。
「何が言いたんだよ・・・」
「いやぁ?特になんでもないわ?ちなみに私はチューニングに関してはS級ドールズ波の技術力はあると自負してるからね」
鼻高々に自負する姿に多少イラッと来たが実際、彼女、アイラ・F・エンゲルはチューニングは他の新兵とは一線を画す程の技術の持ち主である。
「そう、困ってるのかしら?」
「・・・まぁ、多少は」
なんだろう、こいつに弱みを見せることはしたくなかったんだがな
「あらあら、そうなの、じゃあ私が教えてあげてもいいのよ?」
「は?」
こいつから教えてあげてもいいという言葉が出るとは想っていなかった。絶対に馬鹿にして帰っていくだけだとばかり・・・
「まじ?」
「えぇ、マジ」
「それは心強い!」
これは素直に感謝すべきだろう。
「しかし!」
「?」
「人にものを頼む態度ってそんなんでいいの?」
「・・・」
くそ、まぁそんなんだろうと思ってたよ
「なんだよ、お前から教えてあげるって言ったんじゃないか」
「あらそう、なら別に私は良いのだけど?」
くそ、完全にマウントを取られた・・・
「・・・」
「どう、言うんでしたっけ?」
くそ~このニヤニヤした顔が腹立つ・・・
しかしここで「もういい」と拒絶するのは簡単である。しかし、ここで我慢すれば、昨日みたいな悔しい思いをすることが無くなるかもしれない。
それだったら・・・
「お・・・・」
「んん~~~~????」
「おしえ・・・て・・・くださ・・・・い!!!!」
「よく言えました~~~~」
僕の中には悔しいという気持ちで一杯になっていた。
しかし、ここで悔しさを我慢したんだ、この悔しさ分みっちりとこいつからは技術を盗み取ってやる。
そう誓った。
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