EP1 誕生

願いは霞み、呪いが始まった日

今は6月、暖かくなり上着もいらなくなってきた時期。

ここセントレア・マグナ、正式名称「対外敵用国際軍用機関たいがいてきようこくさいぐんようきかんセントレア・マグナ」の附属高等学校に在籍している。僕「三島悠斗みしまゆうと」は絶賛黄昏中だった。


「おい、三島。」


このセントレア・マグナは四方を海に囲まれている海上浮遊都市であるため一年中、うみねこや波の音が聞こえるため、授業中に頭を空っぽにするにはとてもいいところなのだ。


「おい!三島!」


このセントレア・マグナの面積は約100km²とかなりでかい。

この体積の6割が軍用施設ではあるが残りの4割は住宅エリア、商業エリアと別れており、敷地も無駄にでかいため、暇をすることはまずない。


「…おい、三島…生きてんのか…?」


俺がなんの反応もしずに頬杖を突きながら窓の外をずっと見ていたものだから先生が流石に心配になり俺の席の前まで来ていた。


「なんすか・・・」


「おお、生きてたか、そうかそうか気分が悪いとかではないな?」


この人は僕たちのクラスの担任の「村瀬浩二むらせこうじ」愛称は「監督」だ


「はい、ばっちりです」


特に何もしていない、むしろ授業を聞かずに呆けていたおかげで体力が有り余っているぐらいだ。


「そうかそうか、元気があることは良いことだ、よし三島ァ、放課後職員室に来い」


「…うっす」


雑用の呼び出しを受けてしまった・・・


「ばっかじゃねぇの」


「うるせーよ」


このいかにもヤンキーみたいな髪型した長身の男。こいつは「葛城嶺二かつらぎれいじ」俺の、悪友だ。バカやるときはいつも一緒だし、なにかやるときにはだいたい隣りにいる。そんな仲


「嶺二、悠斗はいつもこんな感じじゃないか」


「ん?どういう意味?」


「何かんがえてるかわからないってこと~」


そしてこいつは「マイク・A・シュライバー」ドイツ出身の男の子。ここは国際機関の内部なので世界各国から人が集まってくる。そしてこいつは何より顔がかわいい。男に使う言葉じゃない?うん、僕も最近までそう思ってた。

下手したら、そこら辺の女子より可愛いと思う。だって今朝も下駄箱にラブレター入ってたしな。もちろん男から。

マイクは、常識人だ、だいたい俺らが馬鹿やってるときは近くで呆れ顔してる。だけど、それでも俺たちがバカしてるときは必ず近くにいてくれる。


「ひどい言いようじゃないか」


「うるさいぞ三島ァ!呆けた次は授業妨害か?いい度胸だ、昼休みもお前をこき使ってやる」


こき使ってやるって言ったぞ


「勘弁してください!」


「はぁ・・・じゃあ静かに授業ぐらい受けんかぁ・・・」


「はい」


ここは言う事聞いておかないと僕の昼休みが無くなるな。


そう思い、僕はシャーペンを取り若干眠い目をこすり黒板に向かおうとした時だった。


ジリリリリリリリリリリリリリリリッ!


甲高い警報がこの島全体に鳴り響いた。


『Emergency occurs!Emergency occurs!最終防衛ラインの突破を確認、軍事エリアにレイダーの発生予兆を確認!等級はB級!B級以上の人形戦闘員ひとがたせんとういんは直ちに迎撃任務にあたってください。繰り返します――――』


・・・久しぶりにこの警報を聞いたな。


『C級人形戦闘員は直ちに軍用エリアに集合の後、レイダー討伐の援護を、警備隊は軍用エリア周辺の住民並び観光客の避難を。繰り返します――――』


「先生!」


ガタッと勢い良く椅子から立ち上がり先生に一言かける


「おう、行って来い。怪我だけには気をつけろ」


「はい!」


「じゃあ、俺もいってきま~す」


「僕も行ってきます」


嶺二、マイクも続いて教室を駆け足で出ていく。


そう、僕達は友達でもありであるのだ。


僕たちが所属するここ対外敵用国際軍用機関セントレア・マグナには大きく4つの部署がある。

一つは外敵「レイダー」との戦闘をメインとした戦闘部署「人形ひとがた”Dolls《ドール》”」この部署は常に命の危険があるため入部者が極めて少なく、それに加え入部の試験が非常に厳しく、入隊率が非常に悪い、常時人手不足である。人形戦闘員の通称は「○級ドールズ」である。


二つ目はこの海上都市にはそれなりに住民が生活している。そして国際機関であり、軍事のために無駄に拡張された広大な土地をフルに活かした商業エリアへの観光者などで年を通して人口が多く、その住民並び観光客の平和を守る治安部署「警備隊”Guard《ガード》”」日本で言う警察みたいな物である。ちなみにここの部署は試験というものがあってないようなもので比較的簡単に入れるが、内部が腐ることを良しとしないため軽い気持ちで入部すると地獄を見ることになる。


三つ目が「医療部”Medical《メディカル》”」住民、観光客から軍事医療まで幅広く活動しており、ドール以外で戦闘区域に手続き無しで出入り出来る唯一の部署である。女性が大半でかつ、入部の際の試験も医療技術がないと入部が難しいなど入るためには勉強する必要があり、偏差値が高い。


4つ目が「機械屋”Mechanic《メカニック》”」ドールの戦闘武装やメディカルの医療器具から住民がこの海上都市で生活するにあたって便利になる日常機械の設計、製造など幅広く活動している。この部署もガードと同じく入部試験がないが、技術で認められないと給料も社会的地位も向上しないため、実力主義のシビアな部署となっている。


そして僕たちが所属している「人形ドール」には戦果における階級制度が設置してある。階級はC→B→A→S→SSと上がっていく、S級人形戦闘員ともなればセントレア・マグナの本部の仕事もあるため戦闘に参加する機会なんてA+級以上のレイダーでも出現しない限り出撃命令をくだされくることはまずない。SS級人形戦闘員は両手で数えられるほどしか全世界にいないと言われるほど少なく、もしその戦力をなくしたならば世界全体にとって大きな痛手にもなると言われるほどである。


そして僕たちはC級人形戦闘員。新兵である。僕たちに与えられる任務なんて、戦術援護や雑用などである。


「ねぇ、嶺二」


「んだよ」


学校があるの住宅エリア、軍用エリアとはぼちぼち離れているため軍用バイクで僕達は向かっていた。


「相手はB級だよね、僕たちが行く意味あるのかな?」


「何ってんだ、今この状況で緊急性があるのは等級じゃねぇよ」


「へ?」


B級レイダー程度であれば今まで数え切れないほど撃破してきたはず。ここまで大げさにする必要があったのだろうか。


「今一番大切なのは、にレイダーが出現したことが重要なんだ」


「というと?」


「おい、悠斗、流石にそこまで馬鹿だったとは思っていなかったぞ・・・」


サイドカーに乗っているマイクまで呆れ顔になっている。


「ここの最終防衛ラインが突破されたんだ、今までそんなことはなかったのに」


「そういうこと、それが例えB級だったとしても由々しき問題なんだ、なぜ今まで突破を許さなかった最終防衛ラインがなんの前兆もなしに突破を許したのか、そこを解明しない限りこれ以上の被害が出ることも考えられるんだ」


「なるほど」


「だから今は起きるかもしれない二次被害を防ぐために全勢力での出撃命令が出ているんだ、俺たち新兵も駆り出さなくちゃいけないほど危機的状況ってことだよ」


嶺二はため息を吐くように一息つき


「軍用エリアまであともう少しだ、飛ばすぞ」


アクセルを踏み込んだ。





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