9.鼻の歌

未修理のながい

ときのながれた灯台のたつ

堤防にゆらめくみどりの

しおを手にすくえば目元をナイフがちらつく

くつがえる天地のはざまにひれ伏すかもめと

つれだっていく反転したゆめは路上で

もんどりうって弾道学の未取得を泣いて

こぼれた薬莢のために建てた忠魂碑さえ

いまでは雪に隔絶された野原で

雷鳴に怯えている

売りそびれた視界は錆びた

鉄塔のそばを行き過ぎ

化粧した影が浮き沈みしている

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る