第7話 悪魔は戦いたい
「この世界の最強はここに住んでるんだよなぁ?」
そう言って俺の前で牙みたいな歯をのぞかせたのは、どこか違う世界の最強らしい男だった。
なんでも、この方悪魔だそうで、その世界の全ての生物を贄にしてしまったそうです。
それで違う世界の最強と力比べをして、今のところ全勝。
調子に乗って、強いと評判のうちのクリスタパイセンに挑んできたという訳です。
あ、ハイどうもレオンさんです。
今日はですね、朝起きてお約束の一発を食らい、その後飯食って洗濯物を干してたらいきなり話しかけられたわけですよ。
いやほんと、今日もクリスタのパンツは美しかった。
「知りません、うちの子は最強のおっぱいですが、知りません」
「おい、なんでお前洗濯籠に入ってるブラジャーを付けたんだ」
おっと、手が勝手に。
危ない危ない。
これではまるで俺が変態みたいじゃないか。
「どうしてお前はパンツをポケットに入れてんだよ」
「—————はっ!まさかお前俺の体を勝手に!?」
「何もしてねえわ!ってかなんでお前の体でパンツ盗ませんだよ!しかもお前のポケットに!」
「ちょっとうるさいので静かにしてもらっていいですか?うちの子今夜勤明けでお昼寝してるので」
その瞬間に、俺の顔面に男の拳が突き刺さった。
「効かねえよ、お前程度の拳なんざな」
嘘です、死ぬほど痛いです。
というか痛すぎてちょっとウンコ漏れました。
だけどさ、ここで俺が無様にのたうち回ってもこの男をいい気にさせるだけでしょ?
いい気にさせるなら可愛い女の子が良いわけでして、決してこんな不良系のイケメンを喜ばせたいなんて感情僕にはないわけですよ。
「お前の拳じゃ俺のことも倒せねえよ、分かったらさっさと帰れ」
「おい、お前ズボンから下痢がしたたり落ちて来てんぞ」
「・・・・・ったく、誰だよこんなイタズラしたお茶目さんは・・・俺だから怒らないけどさ、これが普通の大人ならもうカンカンよ?フジヤマボルケーノよ?」
「な、何言ってやがんだコイツ・・・」
まったく、風呂に入らないといけないじゃないか。
というかなんか股の下が冷たいなぁって思ってたら今日はあれでしたか、ゲーリーのクーパーさんの方でしたか。
あれかね、昨日食べたカスピ海ヨーグルトがいけないのかね?
おじさん夜に乳製品取ると朝下しちゃうんだよね。
「お前の力はわかった、認めよう、ついてこい」
「何が分かったのかさっぱりわからねえが・・・とにかく着いて行かなきゃいけねえのかこれ・・・」
風呂場に行く俺に、男はしっかりとついてきた。
なんだかんだ素直ないい子じゃないの。
「俺の名前はベンティアドショットヘーゼルナッツバニラアーモンドキャラメルエキストラホイップキャラメルソースモカソースランバチップチョコレートクリームフラペチーノだ、お前の名前を聞こうか、勇敢な挑戦者よ」
「ベンティ・・・しょ・・・モカソース?なんてなげえ名前なんだ・・・はっ!聞いたことあるぜ、昔に潰した世界に、強ければ強い程名前が長くなる文化の国があった!お前もそう言うタチなんだろ!」
「とりあえず俺はケツを洗うからお前はそこで待ってろ」
「けっ、んだよ、最強ってのはお前のことか、通りで俺様の拳を受けて平然としてるわけだ!」
風呂場についた俺は御ズボンを履いたまま風呂場に入り、そして丸洗いをし始めた。
あちゃー、これはまあ、結構いい勢いで出たみたいっすわ・・・。
しゃこしゃこと洗剤を垂らし、パンツとズボンを洗う。
ガラス戸越しにさっきの男が律義に俺のことを待っているのが見えるが、まああいつバカそうだしほっとこう。
ズボンを洗い終わった俺は、窓から外に出て、二階から家に入り、着替えを済ませ、リビングで昼寝をしているクリスタを起こした。
「クリスタ、お前にお客さんだ」
「無理、お腹が減った、飯を作れ」
寝ぼけ眼でそんなことを言ってくるクリスタ。
この子寝起き悪いからな・・・逆らうと俺以外の全ての物が消滅しかけるし、ここは素直に従おう。
・・・誰も知らないところで、世界の消滅を食い止める俺ってなんか主人公っぽくね?
あ、なんかテンション上がってきた。
今日は少しだけ本気で飯を作ってやろう。
「さて、本日作るのは、春野菜とアボカドの肉巻きと、シイタケとタケノコの煮物、揚げニョッキ、あとは・・・適当で行こう」
即座にやる気を手放した俺を誰が責められようか。
俺は影ながら世界を守っているんだ、要するに、すごく頑張ってる。
少しくらい手を抜いてもいいじゃん。
「なんだ、旨そうなにおいがするじゃないか」
匂いにつられた寝起きの腑抜け状態クリスタが、俺の背中からしなだれかかってきて、肩に顎を乗せながらつまみ食いをしようとしてきた。
「つまみ食いしたらデザート減らすからな」
「デザートが減る前に世界の寿命を減らす」
「はい、ではこちらが、つまみ食い用に用意したものです、皆さんも忘れず用意しましょうね」
短いやり取りを終え、俺はクリスタを背負いながら料理を進めていく。
完成したころには腑抜け状態のクリスタが多少はまともになっており、若干まだ眠そうな目をこすりながらあくびをしていた。
「やっぱり夜勤は大変そうだな、お疲れ様」
「うむ、まあ仕事だしな」
「そう言えばクリスタの仕事って誰に言われてやってんだ?」
「何だったかな、あの、創造神だったか、色々作った神だ」
「うおっなかなかすごい奴が雇い主なんだな、給料とか福利厚生って?」
「給料はそれなりだぞ、手当だけで、世界一つ救うか壊せば、全ての世界の金に互換性のある金貨を・・・お前にわかりやすく言うなら100兆くらいもらえる、福利厚生は・・・有給完全消化、残業代完全支給、退職金もあるし、ボーナスは年2の6か月分、体調不良は治癒の神が即直してくれるが、様子見がてら1日休ませてもらえるし、生理の時も休暇がもらえるし、リフレッシュ休暇も完備されている、会議も念話会議で大丈夫だし、交通費の支給もある」
「交通費ってなによ、あんた全部自力じゃん、っていうか、全世界のサラリーマンを敵に回しそうな好条件だなおい」
「交通費はあれだ、移動に際して私が使う能力の価値の分だけ支給される、全世界のサラリーマンが束になってこようが、私の足元にも及ばないさ、力も給料も」
「おいよせ」
「そもそもこんな仕事できるのは私以外にいないからな、好待遇なのも当たり前だ」
そんな話をしながらその日はゆっくりとクリスタと親睦を深めていった。
何か忘れてる気がしたが、まあ忘れるのならその程度のことだろうと思い、風呂に入るのさえ面倒だと言い出したクリスタが汚れを力で滅ぼして結局俺は拉致されて一緒に寝ることになった。
そして、翌朝、脱衣所で泣き崩れる悪魔が発見されたけど、あの人は誰だったんだろうか。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます