第89話 ドワーフとお酒1


「美味しいお酒、どれ贈ればいいかなぁ?」


 工房を出てから上機嫌なコロナだが、逆にこちらは気が重い。

 お酒。自分は飲めない事もあってか基本的なことすら全然分からないが、それ以上の問題がある。


「どうしたの、美味しいお酒探せば良いだけまだ簡単なんじゃないの?」

「……コロ、そんな簡単な話じゃないよ」

「?」


 あ、ダメだ。コロナにはコレがどれ程無理難題なのか分かっていない。

 確かにあんな天文学的な金額を積むよりは美味しいお酒を用意する方がまだ現実的だろう。だが逆に言えばこんな難題でも金があれば解決出来るとも言える。

 どちらが良いかは一概には言えないものの、人によっては確実性を取るなら金銭の支払いになるだろう。

 とりあえずコロナと認識はすり合わせることにした。この考えも単に自分が考えすぎの可能性だってある。


「ドワーフってさ、お酒大好きでしょ?」

「うん、ドワーフの血は酒で出来ている。なんて言葉もあるぐらいには」

「そんな酒好きでしかもあれだけ稼いでる人だよ。世界中のお酒、それこそ高級酒すら網羅してたっておかしくないよね。そんな人に美味いって言わせるお酒なんて……」


 そこでようやくコロナもこちらが何が言いたいのか分かったようだ。

 コロナから得た事前情報によるとそもそも種族としてドワーフが好きなものは大別して二つしかない。

 それが『酒』と『仕事』だ。

 稼いだ金は大体この二つに関わることで消費されてしまうらしい。

 美味しいお酒、良い仕事道具に環境。ドワーフを懐柔するならとりあえずこれを用意しておけば大体何とかなるとまで言われてるぐらいだ。

 そしてドノヴァンはその二つを完全に得ている一人であろう。

 流石にあの場では酒は見かけなかったものの、あれだけ稼いでいる人物だ。美味い酒の十や二十ぐらい持っていても不思議ではない。

 そもそもお酒一つ取っても美味さと値段はピンキリだ。美味さと値段が必ずしも比例するわけではないが、得てして極上の酒は大概高いものである。

 そして彼は間違いなくそんな極上の酒を買える位置にいる人物だろう。

 

 そんな人物に美味いと言わせるような酒。それを用意しろと言ってきたのだ。


「どどどどうしよう?!」

「現状どうしようもないからなぁ。とりあえず酒場行こう。ドワーフのお酒事情ぐらい聞けるかもしれないし」


 流石にノーヒントでどうにかなる話ではない。

 一般的なドワーフに彼が当てはまるか不明だが、少なくとも何かしら行動の指針にはなるかもしれない。

 そんな小さな希望に縋るような気持ちで工房から一番近い酒場を探すことにした。



 ◇



 カン、カンといつも通りの小気味良い音を奏でる親父の槌。

 子守唄の代わりの頃から聞いていた親父の仕事の音だ。

 だが専用の仕事場でもある自室にて響き渡るその音は今日に限っては微妙に違っているように聞こえた。

 もちろん勘違いかもしれないし気のせいかもしれない。だが自分にはどこか迷っていると言うか、何か他の事を考えている、そんなように聞こえたのだ。


「なぁ、ドルン。お前が連れてきたあの人間の小僧、お前から見てどう見えた?」


 不意に名を呼ばれしかもとても珍しいことに質問まで飛んできた。

 親父が鍛冶をしながら話しかけることなど滅多にない。仮にあったとしても指示か注意か怒声の三種だろう。

 先ほどからの親父のいつもと違う音もあの客のことを考えていたせいなのかもしれない。


「そうだな……一目で武器を使うタイプじゃないって分かったな。むしろ使われる方か。持ってた短剣ですらあいつには不釣合いな感じさえしたぞ」


 男の装備は特に特筆することもない、まるで新人の冒険者が装備するかのような組み合わせだった。

 防具はそれなりに使い込みの跡はあったものの、あの短剣だけに限ればあまり使った感じは見受けられない。

 よく使っているのであれば柄の持ち手部分が使い手の手の形になじむよう何らかの変化があるもの。

 しかしあの男の短剣にはその様な跡などどこにもなかった。


「不釣合いか、確かにそうかもな。ただ俺には歪に見えたぞ」

「歪?」

「あぁ。異世界人だからかもしれないが、体つきから纏う雰囲気まで根本的にこの世界に合ってない。相当平和なところから連れて来られたんだろうな。それも命のやり取りすらないようなところ辺りか」

「……そんな世界なんて想像出来ないな」


 常に危険と隣り合わせ、なんてことを言うつもりはないが、それなりに身の危険はその辺に転がっている。

 魔物なんかが最たる例だ。だがそんなのいるのは当たり前だし、自分の身は自分で守らねばならないのは常識だろう。

 出来ないやつから死んでいくのだから。


「親父でも情が移ったか?」

「さぁな。心情的にはなんとかしてやりてぇ気持ちはあるが、工房の頭張ってる以上は例外は作れん。ただまぁ……そうだな」


 そう言うと親父は手に持った槌を脇に置き、ハサミで打っていた物を裏に返す。


「例えば俺があいつの立場になったとして別の世界に行ったとして、だ。その世界で鍛冶はおろか道具作製すら必要ない世界だとしたら俺はどうするかなぁと思ってな。お前だったらどうするよ?」

「俺か? 鍛冶のない世界なぁ……」


 道具作製すら不要な世界がそもそもあるのか疑問だが、まぁ想像上の産物として答えるべきなんだろう。

 とりあえず俺も親父も今まで培った経験や技、知識が全て無用の産物になる。

 それは自分がほぼ無価値になることに他ならない。


「やりがいねぇ世界だなぁ。俺なら帰る方法探すわ」

「今のあいつがまさにそれなんだろうな。俺たちが知らない技術や知識はあるだろうが、それを一切活かせない世界。出来ることなら帰してやりてぇってのが人情ってもんだろ?」

「ならタダでやってやりゃぁいいじゃねぇか」


 出来ねぇよ、と返答しながら再び槌の規則正しい音が響き始める。

 男が頼んだ依頼品は人王国の国宝の台座部分だ。ドワーフの腕利き職人が作製しかの国に納めているのを以前見たことはある。

 ただまぁ……それが異世界人召喚なんてもんに使われてるなんて知ったのはつい先ほどのことだが。

 ちなみにその件に関しては親父には他言無用と釘を刺された。


「それで親父はあんなこと言ったのか。第一親父、飲んでない酒まだあったか?」

「さぁなぁ。探せばあるかもしれんが大体のところは飲んだか。しかし最近の酒はあれだな、確かに美味いんだがなんかお高く止まった感がして俺ぁ好きじゃねぇな」

「でも飲むんだろ?」

「まぁな。おめぇだっていつもたかりに来てるじゃねぇか」

「その分別の酒持ってってんだからあいこだ、あいこ」


 しかし本当にあの異世界人はどうするつもりだろうか。

 親父の舌はドワーフの中でもかなり肥えている方だ。その辺のちょっと高い酒じゃ多分首は縦に振らないだろう。

 ……右も左も分からない異世界人が無理難題を吹っかけられるか。流石に可哀想に思えてくる。


「そいやおめぇ、今度新しいこと始めたいとか言ってたみたいだな」

「ん? あぁ、親父みたいに色々すればまた別のもん見えてくるんじゃないかと思ってな。細工や彫金もかじってたがこの際本格的にしてみても良いと思ったんだが」


 専門は武具だが最近少し手詰まりな部分を感じていた。

 だから他の技術を学び知識をつけ再び活かせばいいと考えていたが、何を思ったか親父が口の端を釣りあがらせてはひょんな提案を持ち出してきた。


「は、なら丁度いいじゃねぇか。あの小僧んとこ行ってこいよ」

「……は? 親父からしたらあいつそんなに器用に見えたのか?」


 ドワーフよりは長い指先ではあるが、あの人間の手は職人の手ではないことだけは断言出来る。

 職業柄色んな人物は見てきた。少なくともあの男に学べそうなところは無さそうだったが……。


「違ぇよ、折角異世界から来たお客さんだ。異世界の武具とか教えてもらう絶好の機会じゃねぇか」

「む……確かにそれはそそられるな。だがついさっき無理難題押し付けた側だぞ、教えてくれるか?」

「なら代わりにお前が知ってることでも教えりゃいいだけじゃねぇか」

「俺が知ってることなぁ……」


 つっても知ってることなんぞ門外不出の技術や知恵ばかりだぞ。

 それを教えろなんて流石に親父が言うはずもない。仮に教えたところで再現出来るまで途方もない修練が……。


(……あぁ、なんだそういうことか)


 そこでピンと頭にあることが閃く。

 あるじゃないか、あいつらが欲しがってそうな情報が。

 つまり親父は自分の情報を教えて来いと遠まわしに言っているわけだ。それも異世界の知識って大義名分も付けて。

 全く、親父も甘いくせに素直じゃねぇんだから。もっとハッキリ言えばいいのに。


「んじゃとりあえず行ってくるわ。あいつらに村から出てかれても困るしな」

「おぅ、面白いもん出来たら見せにこいよ」


 そう言っては親父に背を向けて部屋を後にする。

 幾分か軽くなった槌の音を背中で聞きながら帰っていった彼らを探しに村へ繰り出すことにした。



 ◇



「へぇ、王都から来たのか。また遠いところからの客人だな」

「結構長旅でしたね。でも……うん、やっぱり世界は広いなぁって実感出来ました」

「はっは、そりゃ良かったな。それで注文はどうする? もうじきうるさくなるから早めにした方が良いぞ」


 軽快に笑うこの愛想の良いドワーフは工房から一番近い酒場のマスターだ。

 ドワーフの酒事情を知るために寄ったお店ではあったが、まだ他のドワーフは仕事中のようで店の中は閑散としていた。

 それでももうじきうるさくなると言うことは仕事が終わったドワーフが雪崩れ込むと言うことなんだろう。


「うーん、ここで一番売れてるお酒ってなんです?」

「そりゃもちろんエールだな。ここに限らずどの店も間違いなく一番出て一番売れてるのはこいつだ」

「なら自分はそれ一つください。コロは……」

「あ、私はお酒はちょっと……」


 やっぱりクロードの一件がかなり堪えているようだ。

 ドワーフの酒場にノンアルコールなんてあるのか?と思ったが意外なことに置いてあった。どうもドワーフ用ではなく自分たちみたいな外から来た客用に置いてあるらしい。

 コロナの果実水とポチのミルクも一緒に頼みほどなくして注文したものが到着。目的地であるこの村に着いたことに乾杯をすると、カコンと木製のジョッキが小気味良い音を上げる。


「……ヤマル、どう?」

「うーん……」


 元々酒は飲まないので正直なところ良いお酒か悪いお酒なのかピンとこない。

 ただ自分の舌で言うなら正直あまり美味しくない。舌に合わないのもそうだが常温のお酒がそもそも初めての体験なので拍車をかけているのだろう。どうしてもぬるく感じてしまう。

 ただ香りは飲んでいても十分に感じたし悪いところばかりでもないんだが……。


「……ドノヴァンさんに美味いと言わせるのはこれじゃ無理だろうなぁ」

「そっかぁ……」


 これで条件クリアしたら苦労はしないんだろうが多分だめだろう。

 他に何かないか、と思うと随分と見慣れた単語がそこにあった。


「あれ、ラガーって……」

「およ、兄ちゃん知ってるのかい? エールと似た酒なんだがこいつはいまいち売れ行き悪くてなぁ。何でもいいから飲ませろみたいな時についでに出すんだが」


 飲むかい?の問いかけに頷いて回答。

 マスターが言うようにあまり出ない酒のせいか、ジョッキに注ぐその姿はどこか上機嫌である。

 そしてラガーが入った木製ジョッキを手に持ちこちらにやってくると、マスターは何故かこちらに視線を向けてきた。


「物好きもいるもんだなぁ。酒場やってる俺が言うのもあれだが率先して飲む奴はいないぞ」

「自分の地元じゃ結構主流だったんですけどねぇ」

「へぇ、物好きなのは人じゃなく土地柄だったか。まぁごゆっくり」


 ジョッキをテーブルの上に置き、ひらひらと手を振ってはカウンターへと戻っていく。

 さて、この世界でのラガーはどんな感じなのだろうか。向こうと似た感じなのかな、と思いつつまずは一口。

 瞬間、ピタリと体の動きが止まる。

 口の中に広がるラガーの味。だがこれは……。


「まっず……」


 なるだけマスターに聞こえないように小さく言うも体は正直で思わずむせてしまった。おまけに少し涙まで出てくる始末。

 一言で言えばなんだこれ、である。日本で飲んだのも苦手だったがそれ以上だ。

 感想を一言で言えば日本のビールを低品質にした上でぬるく作った物と言った所か。美味いと思える部分が微塵も感じられない。

 確かにこれではエールに傾くのも無理はないだろう。一体何をどうしたらここまで不味く仕上がるのか。


「ヤマル、そんなに?」

「一口飲む? 大丈夫だよ、一口ぐらいなら酔うことはないからさ」


 それにこれを一口以上飲めるとはとてもじゃないが思えない。

 試しにコロナにエールとラガーをそれぞれ飲んでもらったが、やはり反応は自分と似通ったものだった。

 特にラガーの反応はすごかった。自分と違い何も言わない代わりにコロナの耳と尻尾の毛が分かりやすく逆立っている。

 彼女が相当我慢してるのが容易に想像出来た。


「やっぱり私はお酒はいいかも……」

「まぁ中には美味しいのもあるけどね」


 ボールドでセレブリアらと飲んだのは美味しかったし。

 まぁそのせいでコロナは盛大に酔ってしまったわけなんだが。


「とりあえず残さず飲むか……ん?」


 頑張ってエールとラガーの処理をしようかと思ったそのとき。

 小さな地響きと共に何かがこちらへと近づいてくる音がした。

 その音は徐々に近くなりついにはその姿を現す。


「マスター、エール三杯だ!」

「エール四つ!」

「こっちには三つくれ!」

「大至急でエールを四杯だ!!」


 バァン!!とドアが壊れんばかりの勢いで開かれそこから現れたのはドワーフの大群だった。

 仕事が終わったのだろう。酒場に着くや否や着席するまでもなく入り口で注文を叫んでいた。

 そして注文を言い終えたドワーフから順に席へと向かっていく。

 席に着くと同時にマスターがエールのジョッキをどんどん彼らのテーブルに置いていく。


「「うわぁ……」」


 驚き半分、呆れ半分と言った感じでコロナと共に声を漏らす。

 目の前には世界的に認められた鍛冶職人一族ではなくアル中真っ青の飲ん兵衛軍団がそこにいた。

 いや、これがドワーフの真髄なのかもしれない。

 置かれたエールはものの数秒で空になり、次のジョッキを握る間にまた注文を繰り返す。


「こっちエールのおかわり!」

「なんでもいいからジャンジャンもってこーーーい!!」


 来たときとは比べ物にならないほどの混沌の坩堝と化した酒場。

 これは彼らが来る前に店に入ってよかったかもしれない。少なくともこんな状態の酒場には絶対に入れないし入りたくない。


「ヤマル……」

「いい? 空気だ、俺らは空気……。周囲と一体化するんだ。絶対に絡まれるんじゃないぞ」


 酔っ払いの介抱は慣れているが物には限度って物がある。

 あんなのに絡まれた日にはどうなるか分かったもんじゃない。

 馬鹿騒ぎにボルテージが上がる酒場。テンションに比例して積み上げられるエールのジョッキ。

 隅の方のテーブルだったのは今更ながらマスターが気を利かせてくれたのかもしれない。そんな彼に感謝しつつチビチビと飲んでいるとバン!と思いっきり肩を叩かれた。


(捕まったああぁぁぁ?!)


 やっぱ素人が気配消すとか無理な話だったか?

 それとも大人しすぎて逆に浮いたか?

 振り向きたくないなぁと内心嘆くも無視をするともっと大変なことなるため諦めてそちらを見ると、そこには先ほどの工房にいた受付?のドワーフがいた。


「よぉ、ここにいたか。……まった妙なモン飲んでるな」


 妙なもんとはやはりラガーのことなんだろう。

 酒好きのドワーフにすらそんなこと言われるなんてある意味ものすごいことなのじゃなかろうか。


「まぁいいか。兄ちゃん、ちょっと俺に付き合わないか?」

「え?」

「多分その様子だと親父に出す酒を何から手を付けていいか分かってないだろ? 俺ならその辺助言は出来ると思うがどうよ?」


 確かに現状手探りするしかなく完全な手詰まり状態だ。

 この申し出は確かにありがたいしすぐに飛びつきたい。だがこんな良い話何か裏と言うか思惑があってもおかしくない。

 ドノヴァンが言うように基本対価あってこそだろう。親切で教えに来ました、とはとても思えないが……。


「何、そんな顔するな。確かに疑う気持ちは分かるがもちろん俺もその辺はタダじゃぁない。俺が欲しいのは兄ちゃんのここだ、ここ」


 トントンと自分の頭を指差すドワーフ。

 つまり頭……知恵か知識を貸せと言ったところだろうか。


「異世界の武具ってのには興味ある。何なら親父の件とは別に試作品を作ってやっても良い。お前さんが知ってる知識と俺の持ってる情報、交換しねぇか?」


 ニカリと笑うその顔には嘘偽りどころか表裏もない。

 あぁ、ドワーフは目の前のいる人のように竹の割ったような性格が多い種族なんだと思わせる笑顔。

 そこには謀略も騙しあいもなく、あるのは純粋に自分の気持ちに正直なところと筋を通す一本気な気性。

 まぁ男の後ろで別のドワーフがドンちゃん騒ぎしているのはそれが悪い方向に突き抜けていると思いなるべく見ない事にする。


「……実際自分、仕組みとか分かってない部分多いですよ?」

「構いやしねぇよ。完成品分かってりゃこっちで出来る出来ないの判断や改造改良は勝手にやるからな。俺に取っちゃ兄ちゃんはこの世界に無いもん引っ張ってこれる宝の山みてぇなもんだ。親父の件合わせても十分釣りが来る位と俺は?」


 まるでドノヴァンが己の腕を買ってくれる、と言った時のようにこの人は自分の知識を買ってくれてるだなぁと思うととても嬉しい。

 まぁ正確にはちょっとどころか全然違うので苦笑したまま彼に情報の修正をする。


「でもその知識、作ったの自分じゃない赤の他人の功績ですよ?」

「細けぇこたぁ気にするな。お前がソレ持ってなきゃそもそもこの話成り立ってねぇんだからよ。それでどうするよ?」


 どの道彼の提案を断わる理由は無い。

 現代世界にはそれこそヤバい兵器はわんさかあるが、幸いなことに自分は大量殺戮兵器の知識は基礎部分すら持ち合わせていない。

 仮に言ったとしてもそんなもんがあるぐらいの情報では再現不可能だろう。あまり言うつもりはないが。


「ではありがたくその提案お受けします」

「おう! じゃぁ前祝といくか! マスター、エール五杯持ってきてくれ!!」


 え゛?と戸惑うこちらを無視しさも当たり前に同じテーブルに着くドワーフ。

 すぐに出てきた五杯ものエールジョッキの一つを彼が手に持つと、おめぇらも持て持て!とジョッキを持つよう促された。


「それじゃドワーフの繁栄と遠路遥々やってきた友人に、乾杯!!」

「「か、乾杯!!」」

「わふん!」


 戸惑いながらも全員でジョッキをぶつけ一杯目を一気飲み干すドワーフ。

 その後もまるで湯水の如く胃の中に消えていくエールを唖然としながら見続けるのだった。


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