生存競争の始まり

害なして魔を求めるもの

 小妖精たちには明確な自我が無い、しかし何も思っていない訳ではない。

 解りやすく例えを上げるならば子供のようなものだろうか。

 読者の皆さんも子供の頃の記憶はないだろう。妖精たちの状態とは、人間にとってこの記憶が無い子供時代のようなものと捉えてもらうといいだろう。

 しかし、中には例外もいるのだが。


 龍脈の流れに因って魔素の移動が行われているこのイクサーという世界では、魔素の濃淡がある程度の周期をもって変遷する。

 余程のことが無い限り、龍脈とその両端である魔素溜まりと魔素枯渇は大きく移動することは無いのだが、長い時の流れのなかで数ある龍脈はそれぞれの影響を受けて少しずつその身を動かしている。

 時に近づき、時にはなれ、時に捻じれ、時に交じる。

 このようなことが起こり続けていった結果、イクサーという世界にある龍脈はまるで絡まり合った糸のような様となっている。

 複雑に絡まり合った龍脈は、やがてその動きを緩やかにしていく。

 今までも龍脈の動きというものは時間の掛かるものであったが、ここまでの複雑な絡まり方をした結果、状態が安定化すると相成ったのだ。

 それでも先にも言ったが、飽くまでも緩やかになった程度、それまで以上の時間を掛けることになるが、龍脈は日々その姿を目に見える程の変化を見せないままに、その身をくゆらせ続けている。

 そんな複雑怪奇に絡まり合う龍脈の一つの端に流れに取り残され続け、魔素を吸収できず成長が遅々として進まない妖精がいた。


 いいなー。僕も食べたいなー。


 最初はそんなことを思っていた。だけど幾度も幾度も繰り返されるとそうもいかなくなっていく。


 なんで、あの子たちだけが。


 魔素の流れる所に戻れず、ただただ、自分と同じような存在が返ってくるたびに。


 みんなずるいよ~。


 自分と同じように取り残されたもの達も同様に。


 僕も大きくなりたいよ~。


 されど、他の妖精たちとそれは少々違かった。


 う~ん、どうすれば食べられるかな?


 それは考える。


 あ!あの子たち食べてるよね?


 無邪気な子供、言葉にするのは簡単だが、その事柄の意味とは良くあることではあるが、残虐と同義である言うもの。


 じゃ、食べればいいんだ!


 泣き叫び自分の思いのたけを喚く子供と同様にそれは動き出す。

 自分の想いを成就させるために、泣き叫びの主張ではなく、他者から奪う行為を行った。


―――

新しいスキル、魂力吸収を認知しました。

新しい種族、下位悪魔を認知しました。

―――

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