情報を整理

 見事に何にもないな。


 河野がラー・オホヒルメノムチから与えられた力を使用して、自らと同調した世界へと転移して最初に思った感想である。

 今河野が居る世界は空間があるのみ。所謂宇宙のみの世界であると思ってよいだろう。今読者諸君の皆様が居る世界とは様々な点で相違点があるが。


 そうだな、まずは情報の整理をしていこう。

 色々と与えられはしたけれど、外部記憶に在るだけで今一実感が無いからな。


・俺が元々いた世界のほかにも様々な世界がある。

・元居た世界は数ある世界の中でも少々特殊で魔素が希薄。

・なぜ希薄なのか?魔素の素となっている、エネルギー意識体と呼ばれる存在から離れていたため。

・エネルギー意識体の周りに俺の元居た世界含めた世界が存在していて、これらを総じてストラトゥム・カルパー・テルミヌスと呼称している。

・ストラトゥム・カルパー・テルミヌスの外側、上位世界と呼べる場所が外側に広がっている。

・ラー・オホヒルメノムチはストラトゥム・カルパー・テルミヌスを維持管理している存在で、この様な管理者は複数存在し。彼女達のような存在をデアエ・エクス・マーキニースと名付けられている。

・この名付けの親、詰まり造物主は既に存在していない。(情報の閲覧制限に掛かりこれ以上の情報を調べられなかった。)


 中空に魔素操作の練習を兼ねて、魔素を基にして光る文字を並べて、各項目を作成しそれを眺めながら。


 ふむ、まー、なんだ。色々と人間やめてしまっている状態の俺が言うのもなんだが、死んでいきなり話が大きくなりすぎてはいないか?

 ・・・愚痴を連ねてもしょうがないか。

 そして、そんな種々様々な世界がある中で、ちょっと変わった存在である俺が、なぜかいきなり神様みたいなことをやらされることになったと。

 しかし、どうしたものかね?

 お好きなようにと言われてもねー。

 もっと、情報を覗いておくか。

 この世界はもうしばらくこのままでも問題なさそうだしな。


 そう結論付けた河野は、自身に接続されたアカシックレコードから情報を手繰り寄せ、調べを進めていくのだった。

 その間河野と同調した世界イクサーは、ラー・オホヒルメノムチに設定された初期設定に基づき、世界外縁から魔素を吸収していっている。

 この魔素は世界を構成する為に使用され、河野が情報を探り続ける中、世界は徐々にその規模を大きくしていっていた。

 徐々に拡張していく小さな世界で、魂だけの存在である河野はぽつねんと浮遊している。


 まずは総評・・・、デアエ・エクス・マーキニース達・・・?いや、マーキニースが複数形だから達は不適切か?まー、うん、それで彼女達は、どこからどう見て判断してもただのオタクですな~。


 河野はこれから活動していくにあたって、模範とするために他の世界の理や、そこで活動する者達などの情報を集めたようだ。

 その中にはどう見てもかつて彼が生きていた世界で、サブカルチャー文化、そうオタク共が好きそうな世界があったのだ。

 剣と魔法のファンタジー世界、レベルやスキルが存在する世界、神々が住まう世界、エルフやドワーフや獣人など様々な種族が入り乱れている世界。

 そんな中世時代のファンタジー世界があると思えば。

 宇宙を股に掛ける大海賊が居たり、銀河を股に掛けた大戦争をする国家群があったり、光速を突破した移動手段を獲得していたりと、SFの世界が在ったりもした。

 そんな世界を管理・運営しているデアエ・エクス・マーキニースであるが、時々自ら管理する世界だけでなく、他の管理者が管理する世界へと降り立ち遊んでいた。

 そう、遊んでいたのである。

 まあ、真面目に管理業務を熟している彼女達、偶のストレス発散として遊ぶのは勿論いいだろう・・・が、少々やりすぎなこともあったりする。

 魔王を誕生させたり、邪神を降誕させたりしている横で、勇者召喚の手ほどきをしたり、英雄がうまれる環境を整えたりしているのだ。

 この行為も、デアエ・エクス・マーキニースの管理業務の一つであったりするのだが、わざわざこのような方法を取らなくてもいいのではないかと、河野は思った結果が、先ほどの「オタクですな~。」という訳だ。


 う~ん、理由としては試練を与えることによって種族としての能力を開花させることが目的であったり、停滞している世界に対して揺さぶりをかけるのが目的という事だけど、多分に趣味に走りすぎている気がしないでもない。

 が、揺さぶりをかけた上でそれを越えられるかどうかのギリギリのラインの支援をする。

 そうなると、この所謂テンプレ的な展開がやりやすくはあるのかね~。

 しかし、こうなってくると、俺が元居た世界の異常性が際立ってくるな。

 あそこまで徹底的に魔素の不可思議な現象がない世界というのは、否が応にも目立つよな。

 これについても理由はある。魔素の発生源である、エネルギー意識体から遠い場所にある世界である為。

 だけど、それだけではないだろうな。いや、その結果を用いて何かしらやっているのだろうってところか?

 う~ん、その辺りの事は何とも言えないな。情報制限が掛かって俺がそれに触れられないだけか、それとも、ほんとにさっきの理由だけかもしれんし。

 ただ、やたらとこの世界のとある地域、まあ、日本の事なのだが。しょっちゅう異世界転生や転移が起こってるんだよな。

 うん、この件はとりあえず保留だな。

 覚えていたら後で調べてみよう。

 さて、色々と調べたが、俺が管理する世界の方向性としては何となくだが方針は固まった。

 まず、安定のレベル制の世界。うん、これは管理しやすさを追求した結果行きついた理だ。

 能力を向こう側・・・、つまり世界の住人が成長に任せるでなく、こちらから与える事によって、世界のバランスを整える。またそれを明確に把握し調整する為にレベルという概念で数値化をすると。

 そして、魔物などの脅威を配し、さまざな知的種族を用意する。

 これにより停滞を防ぎつつ、種族としての成長を促していく。

 こうしてみると、テンプレ展開というのはお座なりな感想ではあるが、使いまわされるだけの効果が期待できるという事なんだろうね。

 方針としてはこんなものかな?あとは、実際にどういう理を設定していき、環境を整えていくかだが、そこに関しては自分なりに考えていきましょうかね~。

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