第3話 Time flies

少女が僕に尋ねた

「モスクワが何処に在るかわかる?」

僕は大体の場所は知っていた 。

そういった事に妙に詳しい少年だったのだ。

「知っているよ、ロシアの首都でしょ」

「私そこで生まれたの」

そんな、大したことの無い会話を今でも思い出す。

僕は彼女とは仲が良かった。

でも、大人達はそれを歓迎はしなかった。

彼女が悪いのではなく、彼女の両親に問題があるとか、そんな理由だった。

もちろん、当時だって”馬鹿馬鹿しい”と思っていた、子供ながらに。


 結局、彼女は若くして死んだ。

小さくひっそりと、葬式が営まれた。彼女の同級生徒と少ない親戚が焼香に訪れていた。

僕は涙も出なかった、悲しいとも思えなかった。

しかし、式場の大人達には嫌悪感を感じていた。

 そして僕は棺桶のある祭場の入り口にあった、パイプ椅子を棺桶の方に投げた。


 きっとそのとき僕はこう言ったはずだ。

 「馬鹿が勝手に死にやがって!!」

そして大人達を睨んで

 「お前たちが死ねばいい」


無論、僕は精神科に連れていかれた。

そして特に”素晴らしくも無い”月日が過ぎ去り、今では嫌っていたはずの大人になってしまった。

 きっと、今ならパイプ椅子を投げたりしないだろう。

”オーベイビー、僕はつまらない人間なんだ”


 しかし、何も後悔していない、少しも悪いことをしたとは思わない。

むしろ、誇らしいよ...

 

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DEATH LETTER BLUES フランク大宰 @frankdazai1995

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