あとがきと参考文献

 前述したように、写実的描写の天才・トルストイは、度々シェイクスピアを批判している。確かに、現実世界では道化が突然消え、更にそれに気づかない、などということはありえない。しかしこの劇を、私たちが「一観客」として観たならば、それらの整合性は全く気にならないであろう。そして、ここでは説明しきれないほどある数々のトリックは、劇を「見せる(魅せる)」という点において比類ないほどの成功を収めている、といえよう。


「小説とは答えを提示するものではなく、問いを提示するものだ」


 現代に生きる作家、村上春樹はこのような事を述べている。私はシェイクスピア(特に『ハムレット』)について考えるときに、いつもこの言葉が思い浮かぶ。私はこの一文こそが、シェイクスピアが我々の心をつかんで離さない由縁を端的に表している、と思うのだ。



また、以下の著作、特に「野島秀勝訳の『リア王』」が無ければこの考察は書けなかったと思うので、ここで感謝を示したい。



〈参考文献〉

野島秀勝訳 『リア王』  岩波文庫 2010年出版 

渋谷治美 『リア王と疎外』 花伝社 2009年出版

小田島雄志 『小田島雄志のシェイクスピア遊学』 白水社 1996年出版

小田島雄志『シェイクスピアの人間学』  朝日日本出版社 2007年出版

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シェイクスピア『リア王』の謎 解説 阿部 梅吉 @abeumekichi

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