第7話 根絶
仲間を集め、魔王の軍勢を殲滅し、他国を弱らせ、俺がこの世界に来てから、たったのまだ三日しか経ってない。勇者という物はこんなにも大変なんだな……。
さて、色々な事がありながらも漸く魔王討伐に行く事になった今、魔王軍は、俺の力により、この世界全域に生息する魔物は既に焼き払っている。
しかし、ゴミ以上にもならない魔王と言えど、これだけではビクとしないだろう。何せ魔王だからな。俺の期待を裏切るなよ?
現在、仲間と共に王国を出てから、魔王の情報を得る為に、自国と同じくらいの大きい国を探しに移動中だ。
道中、一切魔物が出ないかとおもいきや、普通に目的も無く彷徨する魔物を良く見る。
「あれ?カオスさん、なんでこんなに魔物がうろついているんでしょうか?」
「流石魔王、対処は早いな」
「あ?全部焼き払ったんじゃねぇのかよ」
「あぁ、大地全域はな……だが、魔物を生み出しているのは魔王本人か、その巢窟だろう。そのどちらかを潰さない限りは魔物は無限に湧く」
「ったく、面倒くせぇなぁ。楽して魔王の所に行けるかと思ったのに……」
この世界の住人達も、何処かでは魔物を完全に殲滅とかを考えているだろう。しかし、魔窟と言えどそれは一つや二つではない。魔窟とは、簡単に言って魔力の源泉。幾らでも魔物や又は、魔法を生み出せる言わば使い方次第では、どの兵器よりも上回る力を引き出せる。
魔力の源泉は、戦場跡や大きな魔力が何らかの理由で大量に集まった所だったり、自然の力で出来るという物で、人工的に作られたと言えばそれは魔王しかあり得ない。
それを潰しながら魔物の完全殲滅など、夢を見るのも良いが、到底叶わぬ夢だ。
だからと言って魔力の源泉を潰す以外魔物を殲滅する方法は無い。
では、この世界にある全ての魔窟が消滅、占領されたら魔王はどう思うだろうか?勇者と言って、潰せる訳がないと考えているのかも知れないが、俺なら、どこにある魔窟でも潰せる。
「ふっ……なら、魔物の元でも潰しに行くか?魔王を向こうから顔を出させてやろうじゃないか」
「いやいや、カオスさん。自分の言っている事分かってますよね?魔窟って、この世界全域にあるんですよ?それも、地中だったり海の中だったり、又は、空の上だったり!幾ら何でもカオスさんの力ではそこまでは無理がありますよ……ね?」
スピカは俺の発言に対し慌てて反論する。
「あぁ、そうだな。一撃で全ての魔窟を破壊しようとすれば、この世界が壊れてしまう」
「あ、そうなんですかぁ〜……」
俺にも力の限界があると期待したのだろう。済まないが、俺は太陽さえも破壊する力を持っている。
「だから、一つ一つ確実に素早く潰していくぞ。占領出来る場所は俺の力で壁を生成する」
「え、本当にやるんですか?」
「本当だ。安心しろ一日も掛からん」
そうして俺は、魔物の完全殲滅をする為、各地の魔窟を潰す事にした。
最初に潰す場所は、道中奥の方で見えている山脈源泉。
この世界に山という山は幾らあるか知らんが、その山全てこそが魔力の源泉といっても良い。
ただこの源泉は、自然の均衡を保つ為の物であって、魔物を生み出すも、人の力に利用するものでも無い。
だから破壊はできないが、異常放出している魔力を抑える事は出来る。
「と言ってもその肝心な魔窟を探すのに時間が掛かりますねぇ」
「あれだ」
俺は、山に指を指す。
「え?どこですか?」
「早速やるぞ、少し離れていろ」
「え?あ、はい」
俺は一度片足で地面を強く踏む。すると、俺と仲間が立つ地面全域が黄緑色に光る。そして、地面を軽く蹴ると、光は一気に山脈に広がり、溢れ出る魔力を抑えながら、自然以外の異物を防ぐ透明の壁を生成する。
「わぁ……」
「マジで今回の勇者何もんだよ……」
「良し、完了だ。この世界全ての山を浄化した」
「え、今ので?」
「あぁ、登山者には悪いが、魔王が倒されるまでは、自然物以外の如何なる物は全て侵入は不可能となった。さて、次だ……」
俺は、仲間を無視して、次の地点へ向かう。主に残る源泉は、地中、海、上空の三つだ。
今立っている場所が地面なので、地中でもやるか?
「あはは……次はどこにいくんですか?」
「地中だ。このまま作業を続ける」
俺は、地面に手を触れる。その時だった。突然、真上の空が雷を鳴らしながら、黒く禍々しい渦を作る。
「え、ちょ、カオスさん!あれは!」
「あ?」
すると、渦から空気を揺らす程の声が聞こえる。
『フフフフ……お前が今回の新勇者か……突然山脈源泉を抑えるとは、なかなかの化け物だな……』
「おい、この声って!」
「あぁ、魔王のお出ましだな」
『貴様がどんな力を持っているか知らんが、もうそのお遊びは終わりだ。今、我が力を持って天罰を与えよう。そして、我を倒そうとする考えが間違いである事を知り、地獄を味わうが良い!!』
すると、渦から大量の翼を持つ魔物と、硬い体を持つ岩の魔物が凄まじい速さで落下、地割れを起こす。
「ウゴオオオオ!」
「おいおいこんな魔物見た事ねぇぞ!」
「空から魔物が降ってくる……こんなの勝てる訳がない!」
見た事もない魔物に、無限に空から湧き出てくる魔物に仲間は絶望する。
しかし、俺は冷静だ。空から雨を降らすならまだしも、ゴミを撒き散らすとは……全くもって面白くない。また、少しだけ力を解放させるか……。
「全員黙れ!魔王よ!自らが支配する世界を五月蝿い虫と血で汚すとは本当にナンセンスだな!我が力を持ってその精神を叩き直してやる!」
『フハハハ……絶望のあまり、正気を失ったか……良いだろう。好きに暴れて、自滅するが良い!』
そうすると俺は、片手に破壊の剣を召喚する。そして剣先を天に向け叫ぶ。
「破壊の剣よ!天を斬り裂き、悪なるものを破滅させよ!ルーインスカイ!」
剣先から銀色の光柱が渦に向かって放たれ、渦はその光を受けると、白く眩い爆発を起こし、周辺にいた魔物も同時に消滅する。
そして上空の源泉もその瞬間と共に消滅した。
『何!?ぐわああああ!!』
魔王は渦の中で叫び声を上げるが、すぐに気配を消し、逃げて行った。
「逃したか……それと、やり過ぎたな……上空にある源泉を消し飛ばしてしまった……」
上空の源泉は、山脈の源泉と同じく、気候の均衡を保つ物。それが消えれば暫くは、自然災害のパレードが来るだろう。今すぐ仮の源泉を作り、修復しても良いがそこまでしなくても良いだろう。
自然災害なぞ、良くある事だ。源泉が再生成されるまで、少し辛いと思うが、人々を助けるのは、俺の仕事では無い。
源泉は、消滅しても数ヶ月で再生成される。でないと、世界が滅ぶ。
「いやぁ、カオスさん流石です。もう見慣れちゃいました……」
「さっきまで絶望してた俺が馬鹿みたいだぜ」
「もうこれ……僕達要らないんじゃ無いですか?」
さて、後は地中と海だけだ。さっさと終わらせてしまおう。
数分後、俺は、全ての源泉を浄化、占領し、残るは魔王のみとなった。
魔王もまた、魔物を生み出す為、魔物の完全殲滅とはなっていないが、源泉の力を失った魔王にそれ以上の力を部下に注ぐ事は出来なくなった。
魔王討伐を一週間もせず終わらせるとは、これ以上の勇者は居ないだろう。
ただ、まだ肝心の魔王の居場所が分からない。だから明日には、俺が引きずり出してやろう。
今は、仲間達も疲れているだろうから、早く街に着き、休暇を取らせよう。
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