第6話 神の力

さて、一つの国の脅威を無くした物の、俺の本来の目的を忘れてはいけない。本来の目的とは、この世界の何処かにあるカナンズゲートを見つけ、神界へ帰ることに。そして、ついでにこの世界を掌握する魔王の排除。


他国の制裁に時間が掛かってしまった。そろそろ自分の国へ戻って王に顔を見せなくては。


俺は自国手前に瞬間移動し、王に顔を見せに行った。


「おお、カオスよ。何処へ行っていた?」

「少し仕事を。勇者なる者、人助けは大事だろ?」

「人助けか、よろしい。では、仲間も集まった所だし漸く本題へ移れる」


すると、俺の後ろの王の間入り口から、例の三人の仲間が入ってきた。大剣使いのウラノス、魔道士のスピカ、ヒーラーのクロノ……だったか?


全員が集まった所で王が最初に口を開く。


「皆の者、勇者がいるという事は分かってはいると思うが、お前たちはこれから魔王討伐に行って貰う」

「魔王討伐!?ま、待てよ、たったこの四人でか?」

「お前らが最も信頼できる強さを持っているからだ」

「了解した。四人も要らないが、すぐに終わらせて来よう」


仲間が混乱する中俺は、当たり前かのように承諾する。何が『魔王』だ。その魔王とやら何処に潜んでいるか知らないが、魔王と会った時に必ず言いたい事がある。『魔王は、いつでも消せる存在である』と。何故そうなのかは、会ってからの話だ。


「ちょ、カオス!何を言って……」

「魔王なんざ俺の手に掛かれば紙くず以上にもならん。最強の勇者の力という物を見せてやる」

「いや、いくらてめぇが強くても、魔王は別格だ!」

「あぁ、どこのどいつよりも別格に弱いだろう」


俺の発言を聞いてスピカが呆れる様に言う。


「あのですねぇ、貴方が強い事は良く分かりますですが、魔王を雑魚呼ばわりされると色んな意味で困るんですが……」

「なら、今一度証明しよう。俺が如何に強いかを」


俺は、片手を下から上へ物を持ち上げる様に一回動かす。すると、王の間全体の空気が歪み、無重力空間が出来上がる。


「これは、重力魔法の一種だな。大抵の魔道士が全力で発動すれば部屋十×十の広さなら無重力にする事は可能。しかし、ここまで広い王の間全体を無重力空間にするならば、魔道士十人以上は必要だろう。若しくは兵器か」

「あわわわ!体が浮かんでます!」


魔道士と、その空間にいる者達が驚いている中、俺は淡々と説明を続ける。


「また、兵器でも空間を歪ませるとなれば、多量の魔力と時間が必要。だが俺の力は無制限ッ!」


俺は再度片手を上に振り上げ、その次に頭上で握り拳を作り、手前に引っ張る。


すると、王の間が縦真っ二つに割れ、天井が開くと、王宮外側で浮いている国民姿が見える様になる。


「わぁ……僕、空飛んでる……!」

「おいおいおい!?やり過ぎだ!」

「良いか?仲間など要らないと言ったのは、こう言う事だからだよっ」


建物は地面から引き剥がされ、川は全ての水が宙に浮き、脆い地面は崩れ空島として浮かぶ。


「ふぅ……これくらいで良いだろう」


俺は空中でピンポン玉くらいの白い光球を出すとそれを握り潰す。


すると、急速に時間が巻き戻り、今までの崩壊は元通りとなった。時間は巻き戻っても人の記憶はそのまま維持している。


「あ……終わっちゃった……」

「え?は?何だったんだ今の……」

「あははは……こりゃ、魔王が弱い弱い言うカオスさんの言葉が良く分かりますね……」

「以上だ。これで証明出来ただろう。では、魔王討伐と行くか、場所は自ずと魔王が教えてくれるだろう」


あまりの驚きに言葉を失う王と警備兵達。そして俺の力を知った仲間は無理矢理納得した感が否めないが、無言で俺に付いて王の間を出た。


王宮を出ると、突然クロノが嬉しそうに目を輝かせながら、俺を称賛する。


「凄い、凄いです!僕、一瞬でしたが空を飛びました!空を飛ぶ感覚ってあんな感じなんですねぇ……」

「会った時から思っていたが、やっぱり子供なんだな……」

「いやぁ、今回の勇者様がこれほど強いと心強いですねぇ」

「そうだな……最も安全な旅になるだろう」

「僕、空を飛ぶ事は夢だったんですよ!飛行魔法もあると聞いた事がありますが、自分の体を持ち上げる上に、高度や速度も完璧に調整出来ないと、魔力で体力を消耗するだけだとか、難しいらしいんですよねぇ」


クロノの夢語りは、それから数十分続いた。そんなに夢なら、さっさと習得してしまえば良いものの。例えば背中に羽生やすとか?まぁ、どんな手慣れた魔道士でもそれは不可能か。


これから魔王を倒すというのに、夢語りとは……まぁ、これも一興か。


俺は、クロノに飛行能力を植え付ける為に、軽く背中を押しながら応援する。


「大丈夫だ。お前は、ヒーラーだが、必ず飛べる様になるだろう」

「え、本当に!?」


これで次期にクロノに飛行能力が目覚め、一切の力を使わない感覚だけの飛行が可能になるだろう。俺が空を飛ぶ感覚とは違うが、それ以上に感覚飛行は、より爽快感が大きい。


神が人の願いを直接叶えるのは、少し不公平な気もするが、今は、創造神カオスだと言う事はバレていない。自由にやらせて貰うとしよう。






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