葬る前の詩

koumoto

痛みは常に

 痛みは常に胸にある

 声を遮るような恋の痛み

 意識の焦点が胸からそれず 何の風景も映し出せない


 今日、街路樹の葉が風にそよいでいた

 夜、寝床でその葉のゆらめきを思い出すと、次々と葉が枯れ始めた

 病葉わくらばの散らばる地面に、人が横たわっていた


 顔を見るまでもない

 自分の顔は嫌いだ

 顔を見るまでもない


 胸の奥のしこりがこごって

 イガグリのような恋の痛みが

 半永久的に固定されてしまった


 今日、待ち人は来なかった

 むごたらしいほどにスペースの空いたベンチ

 かはたれどきを過ぎても待ち続けていると

 月が生卵のように砕けるのが見えた


 詰問するまでもない

 会うほどではなくなったのだ

 詰問するまでもない


 狭霧さぎりが胸をおおいかくして

 身体が空白に満たされてしまった


 痛みが常に胸にある

 不眠の源が判然とここにある

 焼けつくような恋の痛みが

 ただ一度の失敗が生涯を規定するような痛みが

 死をおそれない勇気を逆立ちさせた痛みが

 痛みそのものが夢を見ているような痛みが

 痛みが

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