3.狼男
月は青く染めて人に死滅を囁く
夢だと嘯いて
橋の下で朝を待つ人々
を尻目に
剛毛を揃える秘密の少数者が
瞳を
空に差し出して
獣の精神と取り替える
延命の鎧を次第に脱ぎ捨てて
濡れた素肌を彼岸の森に晒す
月毒が
東雲に払われて鳴りはじめる
夢が鞣された人靴
契約された今日にまた署名する
森の病者も重たい音をくぐる
裸足で
濡れたナイフを意識して
青白い瞳で刺し通す
昨日まで息苦しかった
上澄み層を
猥雑の沈殿層を煽って
分かりようがない無風に弄ばれる水紋の
逆撫でに毛を立て
泥濘を忘れましたね
足をとられてますよ
泥濘を忘れましたね
眼光に怯えて人は顔を逸らすが
何から逸らしたか未開の毛がいま戦いだだろう
黙らせた獣を起こしに来たのだ
お前たちの屈辱を思い出させる
黙らせた獣を起こしに来たのだ
お前たちの
血腥い口を開いて吠えたが
清掃員が来て連れていかれる獣は
まだ月を輝かせて濡れている
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