2.異体

あやしい雲の立ち込めたまま降りた

夜が与えた瞳の無力

その水膜に映る

常用かなの仮のかおを脱いで

ゆれる異体字に

さわる――

互いの字形を確かめ て

心音を

盗みあう 心音を

引き抜き 抜かれしする するたびに

共有ともにする源字を双方めぐり

相手へと

異体する

――重ねる体の

――み悶えするたび

――あらぬ器官の疼痛とうつう

――具わる器官に誤変換をおこして伝染する

――具わる器官の戦慄わななきと直列もそのままある

――映る

――移しあう唾液に繊細な神経が通う

――混淆 浸水

――ふたつの身体はふたつのままひとつを為す

――源字をくぐりふるわせる そして

――苦悶の裂け目にさしこまれる

――月光からなるヤコブのはしご

――明かす密室に浮かぶ

――恍惚の草書

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