官能詩篇

湿原工房

1.恋文

      文盲

     の

  口伝えを

書き留めるときは

官能でした


不能者の声帯が

 筆

 を信じて

   震えて

   閉じて

      また

   開いて

せわしく擦って出る吐息の

響きが気流を染めて

鼓を打ち鳴らすまぐわいを

筆を添えた指でこねる運動で

紙を濡らして文字に起こす

(筆跡によって)そうして

文盲と接合するとき

鳴りめる鈴が

身内にあることを知るのです

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