数学教授のお年玉
正月、親戚の家へ僕等兄弟は遊びに来ていた。
親戚のおじさんは数学教授でいつも面白い問題を僕達に出してくれて楽しませてくれる。
前に聞いた50キロで走る車は30キロで走る車に追い付けないと言う話は非常に面白かった。
『前を時速30キロで走る車と同じ方向に時速50キロで車が走ったら追い付けるか?』
普通に考えれば追い付けると答えるのが普通なのだが、数学教授の考え方はこうだ。
『前を走る車に追い付こうと後ろから追いかけた時、前の車が居た場所に到達した時には前の車は先へ進んでいる。更にその時の前の車の場所へ向かって追い掛けたとしても前の車は先へ進んでいるから永遠に追い付く事は出来無い』
非常に興味深く面白い考え方であった。
だから今日も何か面白い話が聞けると期待しておじさんに正月の挨拶をする。
「「明けましておめでとうございます」」
「はい、おめでとう」
軽く返してきたおじさんは僕達の前に2つの封筒を置いた。
「二人にお年玉だ。好きな方の封筒を取ると良いよ。ただし、中身は自分しか見てはいけないよ」
外見は全く同じの封筒が2つ、兄である僕は左の封筒を手に取った。
封筒の中を覗いてみると1万円札が1枚入っていた。
弟も封筒の中を確認したみたいで二人同時にお礼を言おうとした時であった。
「さぁ二人共問題だ。その2つの封筒の中には片方の倍の額が入れてある、それぞれ中身は確認したな?」
おじさんの言葉に僕達は頷く。
一体何が始まるのかと期待に胸が膨らむ。
「それじゃあ問題だ、二人の手にしている封筒を相手の中身を見ずに1度だけ交換出切るとしたら交換した方が得かな?」
おじさんの問題に僕達兄弟は考え出した。
弟の封筒には5千円か2万円が入っている、もし交換すれば得かどうかと言う問題だ。
これは簡単な問題である、確率は50%だから可能性の合計額を半分にすれば期待値が出る。
つまり25000円の半分は12500円、これは1万円よりも大きいので確率的には得なのだ。
僕達は答えた。
「「交換した方が得です!」」
どうやら弟も同じ答えを導き出したようである。
互いに見合って小さく笑っておじさんの方を見るとおじさんは腕を組みながら笑顔で答えてくれた。
「二人は50%の確率で得をするか損をするか分からない、なのに得だと言うのは何故だい?」
僕達はその言葉に驚きを隠せなかった。
よくよく考えてみれば弟の思考にも辿り着いた。
封筒の中に5千円が入っていた場合期待値は1万5千円の半分、7500円
封筒の中に2万円が入っていた場合期待値は5万円の半分、2万5千円
確率は共に50%であるのにも関わらず二人共答えは得をすると言う答えが出たのだ。
困惑する僕達におじさんは楽しそうに笑うのであった・・・
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