同級生と借金

「おい!ふざけるんじゃねーぞ!」


俺の名前は山崎、隣で怒鳴っているのが同級生の谷本だ。


「いや、ごめん本当にごめん・・・」


目の前の佐々木がヘラヘラと笑う、本当に反省しているのか疑問である。


俺達3人は同じ高校を卒業した同級生だ。

卒業後、暫くして佐々木がお金を貸して欲しいと言ってきた。

再来月には返すと言われ俺は5000円を貸したのだ。

宣言通り佐々木からは2ヵ月後に5000円は無事に帰ってきた。

だが翌月にまた5000円を貸して欲しい、再来月に絶対返すと言われお金を貸した。

それが何回も続き変に思っていた矢先に谷本から話をされたのだが・・・

俺と全く同じ状況だったのだ。

つまり、佐々木は俺と谷本の二人から5000円を交互に借りてそのお金を交互に返済していたと言う訳なのである。


「お前それ詐欺じゃねーか!」

「いや本当悪気は無かったんだよ・・・許してくれよぉ~」


お金の錬金術とは良く言ったモノである、上手い事考えたもんだ。

感心する俺とは裏腹に怒り続ける谷本、流石に手を出すと不味いので程々で止めておく。

学生時代はお金で揉める事は絶対に無いと思っていただけに悲しいモノである。


「ほら、ちゃんと二人に返すからさ~」


そう言って佐々木は1万円を差し出してきた。

谷本はそれを受け取り自分の財布から5000円札を俺に渡してくる。

確かにコレで解決だ。

ここで済めば俺達の関係は険悪ではあるが最悪の事態にはならなかったのだが・・・


「それでさ、本当に悪いんだけどマジで今月ピンチなのよ・・・」

「あ”っ!?」


谷本が再び切れるが俺は実害が有ったわけでは無いのだ、貸したお金は返って来たのでとにかく谷本を止める。

そしたら佐々木が続けて言った。


「本当にごめん、今までの迷惑料込みで1000円多く返すから5000円貸してくれない?」


利息としては取り過ぎだ。

だが半切れの谷本は財布からお金を出して・・・


「なら利息を先に引いて4000円貸してやる!5000円にして返せよ!」


何だかんだ言いつつも優しいのが谷本である。

それを受け取った佐々木は頭を何度も何度も下げてお礼を言いながら手にした4000円を見詰める・・・

そして・・・


「悪い、山崎・・・この4000円に俺の1000円足すから、さっきの5000円札に両替してくれない?」


何故か両替を申し出た佐々木、だがまぁそれくらいならとさっき谷本から渡された5000円札を差し出す。

そして、千円札5枚を受け取った。

佐々木は手にした5000円札を見詰めて再び谷本に声を掛けた。


「なぁ谷本、本当にごめんな・・・」

「いや、もう良いって・・・」

「それでもしっかりと謝らせてくれ」


佐々木は何度も何度も頭を下げて謝罪を行なっていた。

流石に長い付き合いなのもあって谷本も何時までも怒り続けるのもなんだと溜め息を一つ吐いて佐々木を見て答え始めた。

もしかしたら学生時代の様な関係に戻れるかもしれない・・・

そう期待をした時であった。


「それでさ、借りた5000円とこの5000円を足してさっきの1万円札に両替してくれないか?来月には返すからさ」


先程とは打って変わって済まなそうに言う佐々木に折れたのか、谷本はその5千円札を受け取り1万円を渡す。

その後はバイトがあるからと解散したのだが・・・俺は気付かなかった・・・

とんでもない詐欺行為が行なわれていた事を・・・



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