消費税の大きな誤差

「消費税…ですか?」


「あぁ、今後金銭の取引を行う際に必ず3%の税金を上乗せするって話だ」




時は1989年、とある田舎のパン屋。


親子でパン屋を営んでいる家族のお話。




「まぁ小数点以下は切り捨てって話だから何も難しくはねぇな」


「うちのパンは毎日売り切れてるからね」




このパン屋は立地も国道に面しており通勤客が毎日訪れてよく売れる。


だが二人で経営をしている上に1日に作れる量が決まっているのだ。




30円のパンが50個


50円のパンが30個


100円のパンが20個




合計100個がこの店で売りに出される絶対数である。


そうして、消費税が導入された。


例に習い三種類のパンの価格は税込みの値段で販売される事となった。


お客さんも理解を示してくれて何も問題がないまま初日の販売が終了し、俺は間違わないようにこれから毎日消費税分を別に保管するのであった…








あの日から一年後…


初めての消費税の納税の日がやって来た。


簿記の資格を持つ俺は毎日の売上等を貸借対照表と損益計算表にまとめ、消費税分のお金と共に父が税務署に持っていった。


そして、帰ってきた父に開口一番殴り飛ばされた。




「お前、金を盗んだな!」




父が何を言っているのか分からなかった。


だが怒り狂う父の言葉に何故か納税する消費税が21,900円足りなかった事が分かった。


毎日の計算を完璧に行って居た筈なのに足りなくなっていた消費税。


俺の計算では32,850円の筈なのに実際は54,750だったのだと…


消えた4日分の売上は一体何処へ行ったのか…


意識が遠くなる中、最後に見たのは明日売る予定だったパンであった…






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