③リョナの分類Ⅱ ~複合リョナと執着リョナ~


 では前回に引き続き、今回もリョナを分類していきましょう。終わりに申しました「高度なリョナ」というものをその対象とします。以下に比較的オーソドックス(?)な高度リョナを書き出します。

 


 ・失血

 ・カニバリズム

 ・メカバレ

 ・異形化


 お気づきかとは思いますが、以上の四つは単に肉体・精神のどちらかに分けられる程単純ではありません。ですが一応吸血は下にある三つと比べれば単純ですので、先ず説明してしまいましょう。


 ①失血は読んで字のごとく、対象の体から血が失われることです。様々な方法が考えられます。例えば瀉血・吸血・傷(切創など)による失血などです。ここで問題になって来るのは三つ目の傷による失血です。傷を付けるということは肉体リョナに入りますし、他方肉体リョナと断言できるほど対象が痛みに苦しむことはありません。またそれゆえに対象はしっかりとした意識を持っているので、失血で死ぬという恐怖も濃く感じるでしょう。立ちくらみから四肢の不快な冷感、体にチアノーゼが生じるなどといった症状が徐々に表れて死を実感する……。そして加害者はその反応をみて楽しむのです。精神リョナですね。

 となると、失血は肉体リョナ・精神リョナの条件を双方同時に満たしています。前回の「四肢切断」も似ていますが、あちらは双方の条件を同時には満たしていません。時間にズレがあるのです。


 ということで、今から「肉体リョナ・精神リョナの条件を同時期に満たすリョナ」のことを「複合リョナ」と呼ぶことにしましょう。ちなみにこの用語はオリジナルですから、よそで使っても伝わりませんのでご注意を。

 しかし!! 下の三つは複合リョナという新たな分類を以てしてもあまりしっくりきません。そこでさらにひとつ、新たなリョナの種類を定義します。それはズバリ……「特定のシチュエーションや物、行為といった“猟奇的要素”に執着」する「執着リョナ」です。簡単に言い換えると、特殊性癖におけるリョナの内、肉体リョナ・精神リョナのどちらの要素も持たないリョナです。特徴としまして、対象を傷付けたり嬲ったりするよりも、自分のを第一にして行われる、というのが挙げられますね。

 ではこの二つを分類の仲間に加えて、分析を続けていきましょう!


 ②カニバリズム、こちらは本当に厄介なジャンルです。説明としては、人間の肉を喰らうというのがふさわしいでしょう。この場合、確かに相手の肉を噛みちぎったりあるいは肉片を切り取ったりなど「痛み」を伴う過程があります。しかし、どうも目的がそこにあるとは考えにくいのです。なぜならお世辞にも旨いとはいえない肉をわざわざ食べるのは相手と同化したいという「ヤンデレ的な」思考の産物でしょうし、痛みを追求するならもっと他に方法があります。普通のリョナではないのは明白です。

 そこで、執着リョナを当てはめてみるとうまくいきます。すると見えてくるのは加害者の「生きた人間から肉を喰らいたい」という願望で、「生きた人間から切り離された肉片」に特殊性癖です。

 以上、カニバリズムは執着リョナと言えるでしょう。


 ③メカバレは、人間を模したロボット(サイボーグ)が身体の一部を破壊され、内部の機械構造が露呈するシチュエーションです。この場合は前提条件として加害者が意図的に対象を破損させることにしていますが、これまたややこしいことになっています。

 ただ、待ってください。落ち込むのはまだ早いです。そう、私たちには執着リョナという大きな味方が付いています。メカバレも、加害者の性癖に寄り添えばいいのです。「サイボーグを破損させ(時には痛みをも伴わせて)、メカメカしい内部を露出、観察」するのが趣味だとしたら……。

 少々強引な気もしますが、メカバレも執着リョナでしょう。少なくとも対象が生身の人間ではない時点で、加害者は特定のシチュエーションにしがみついているのです。


 ④異形化もあまり聞きなれないものかもしれません。リョナで多いのはいかにも怪しい薬や人体改造施術などで健常な肉体を異形の姿に変えてしまうというシチュエーションです。ちなみに、「異形」とはフランケンシュタイン博士の作った怪物のような人造だったり、単なる肉塊のようなグロテスクな姿だったりと作品によってまちまちです。また考える能力をも奪い去るか否かという選択肢もありますが、ここまではさすがに言及できません。

 もうお分かりかと思いますが、異形化も執着リョナだと私は思います。加害者が「人間だったをみて」満足している可能性は大いにあります。加えて、そもそも異形化における肉体・精神リョナ要素は多くないと考えます。考えられるものでは「思考能力はそのままに、体だけを異形化させる」というのがありますが、そもそもこれは「肉体改造」のニッチな部類に入る気がしますし、仮に異形化に入れるとしても特異な例となり、マジョリティーには敵いません。



 さあ、こんな感じでしょう。複合リョナと執着リョナによる分類はいかがでしたか。もちろん私見ですから異論は大歓迎です。と言ってもそれ以前にリョナの定義が曖昧なので、異論も具だくさんだとおもいます。お気軽に感想・コメントくださいね。

 それでは。次回はリョナの分類Ⅲを書いていきたいと思います。よろしくお願いします。

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