嫁入り

 ゲーム会社と言うとイメージとして浮かぶのはどんな職場だろうか。

 会社に寝間着を持ってきて、そこで寝泊まりしている会社か。

 絶えずみんなで笑い合いながら、業務に徹している職場か。


 答えは普通である。

 残業はあるが、昔ほど強烈という事もない。

 コミュニケーションはあるが、定時以降であったり、業務中にごく一部に限られる。

 ただ、唯一普通ではないとすれば、業務内容そのものが過酷であることが多いということだ。そも、クリエイティブな仕事というのは答えが無く、それを探すのが仕事である。

 何かを言われた通りにすればよいと言うことは無く、自ら考え、仕事を生み出して、それに追いかけられるものなのだ。


 生み出された物の評価は、自分も含めチームメンバーで評価する。

 納得できなければ、また答えを探しに戻るしかない。

 そして、それはスケジュールや予算の中で、自らを削りながらなんとかひり出されるものなのだ。


 ――ここまで書いて、この「ゲーム会社の僕」というものは何とも気楽で自由で恵まれているのだと思った。

 何せ、この話を書くのに締め切りはなく、僕は僕が納得できるまで無限に書き直せるのだ。

 趣味と言うものは、いやはやだから素晴らしい。


 さて、少々脱線してしまったが、そんな業務を続けてくると、次第に心が疲れてくることがある。

 単純に気が抜けてしまったり、鬱になってしまったりと症状は様々だ。

 体調不良とだけ連絡が来て、原因は特に明かされないまま、休みがちになり、それが続くと上司からヒアリングが入る。

 お決まりのパターンである。


 僕としては当人の責任ではなく環境の問題であると考えている。

 求められるものに対して、チームや環境が整っていないことが多く、実際僕の友人の何人もが鬱病で会社を退社している。


 七月のある月曜の夜。

 

 月曜日の出社は、ジャンプを読むためと僕は決めていて、その日も僕は誰かが買ってきてくれたジャンプのページを定時後にパラパラと捲っていた。

 (7月ごろの号だったので、頭のほうにワンピースの映画の宣伝が載っていたのを覚えている)


「ガイシさん」

 声を掛けられ、見上げてみると上司の早瀬が居た。

「最近、体空いてます?」

 にやりと笑みを浮かべて、そう問われ、僕は苦笑しながらハイ、と答えた。

 図星である。

 僕はその時、ちょうど抱えていたプロジェクトが終わり、次のプロジェクトに移る間まで、仕事らしい仕事が無かった状態なのだ。

 次の仕事は決まっているが、僕が必要になるのはもう少しだけ先になる、というのがすでに決まっていた。


 その後、僕は早瀬に会議室に連れられ、しばしの業務について相談された。

 

 会議室に僕を連れ込んだ早瀬は、僕に「今井京子」という二〇代前半の女性スタッフの勤務態度について、調査するよう依頼してきた。

 といっても、特に探偵のようなことをするわけでもなく、最近会社に無断欠勤をしている今井について、原因を探ってほしいとのことだった。

 当時僕が居た会社は小さい会社で、従業員も40人と少しくらいで、こういったことを手厚く対応する部署もなかった。

 今井は僕が昔に面倒を見ていたプランナーでもあり、別のプロジェクトに分かれてからは、少々疎遠でもあったが、かつての経緯から僕はその仕事を引き受けることにした。

 年若いスタッフにみられる、最初の壁にでもぶつかったのだろう、と僕は思っていた。


 ただ、だ。

「では、ワタシもご一緒させてもらっても良いでしょうか」

 翌日出社した際に、村田という男が僕にそう言ってきた。

 この村田という男は僕より入社時期が一年早い先輩で、同じプランナーであった。

 どうやら村田が早瀬から、この話を聞きだしたらしく、同じく手を挙げたようだった。


 現在、村田は今井と同じチームで働いており、チーム内で今井の面倒を見ていたらしい。

 早瀬がわざと村田ではなく、僕に調査を頼んだのはチーム内の不和が原因ではと見越していたようだが、直属の上司である村田がこうして乗り出すのも、気持ちとして分からなくもない。


 こうして、僕は村田と今井に関係する人々への聞き込みを行うことにした。



 ここから先に書かれているものは、その聞き込みの際のボイスレコーダーの書き起こしである。

 付け加えて言うと、今回の話は結論から言うと刑事事件だった。


 そのため、聞き取りを行う相手の名前や、先の村田、早瀬の名前も仮名であり、書き起こされたセリフの方言も僕が後から変更を加えている。

 場所をぼかしていたり、あえて年を記載していないのも特定されることを避けるためである。


 これらの事をご了承いただいたうえで、以下、ご一読願いたい。


◆◆◆


聞き取り日時:7月6日 18:34

場所:B会議室

相手:布藤

聞き取り:ガイシ、村田


僕 『ボイスレコーダーについて、ご了承いただきありがとうございます』

布藤『いいよ。ってか、よくそんなんあったな』

僕 『早瀬さんに借りまして……。後で情報をまとめるようにと』

村田『では、布藤さん、よろしいでしょうか』

布藤『あぁ。でも、何を話したらいいんや』

僕 『まぁ、単刀直入にですが、今井さんが出社しなくなった理由について、何か心辺りはありますか』

布藤『言うてもな~。今のプロジェクトも、結構安定してるし、仕事の問題は無いように見えたけど……』

 

 (佐藤の唸り声)


布藤『あぁ、でも寝不足っぽかったな』

僕 『業務中に眠るとか、ですか』

布藤『おう。船漕いどったな。注意したら寝不足やー言うて』

村田『ワタシも以前注意したことがあります。ただ、その寝不足の原因が気になっておりまして……』

布藤『それは俺も知らんけど……。一応聞くけど、今井とは連絡つかんのか』

僕 『えぇ。昨日の無断欠勤からちょっと……』

布藤『そうか……。ここで言うていいか、どうか分からんけど、アイツ、彼氏おったやろ』

僕 『そう、ですね。そんな風なことを昔言っていたような』

布藤『あれな、楠本や。次アイツに聞いてみい』


◆◆◆


聞き取り日時:7月6日 19:28

場所:B会議室

相手:楠本

聞き取り:ガイシ、村田


楠本『え、マジでボイスレコーダーで録るんすか』

僕 『まぁ、一応』

楠本『いいですけど……』

僕 『では、さっそくですが、今井さんが現在出社されていない件に関して、楠本さんのほうで何か知っていたりしませんでしょうか』

楠本『何で俺に聞くんすか』

村田『あなたが今井さんとお付き合いされていると聞きましたので』


 (楠本のため息)


楠本『いや、俺も知りませんよ。連絡取ろうとしたけど、LINEも既読つかへんし』

僕 『そうですか……。でも、例えば何か、小さな事とか思い当たる節は無いでしょうか。例えば寝不足だったとか』

 

 (楠本のため息)


楠本『――スマホのバイブの音が聞こえるとか言ってました』 

僕 『どういう、ことです?』

楠本『ほら、地震が来たと思ってスマホ見たら、見てから揺れて速報が来るっていう……。なんかそんな感じらしくて』

村田『鳴ったと勘違いしてしまう、という事でしょうか』

楠本『そうです。アイツ、それがちょっと前からあったみたいで、最近じゃ酷くなってたみたいなんです』

僕 『ノイローゼ、的な?』

楠本『まぁ、そんな所ですかね』

僕 『ちなみに自宅には行かれましたか?』

楠本『いや、まだ行ってないです。最近忙しかったんで。LINEだけ投げてた感じです』

僕 『分かりました。明日、自宅に行こうと思っているんですけど、楠本さんも一緒に行きますか?』

楠本『いや……』


 (沈黙)


僕 『……分かりました。では、明日は僕達だけで向かいます』


◆◆◆


聞き取り日時:7月7日 13:14

場所:■■■マンション

相手:マンション管理人 柴田

聞き取り:ガイシ、村田


柴田『刑事ドラマみたいですね、レコーダーなんて』

僕 『いやぁ、ただ忘れっぽいだけなんですけどね』

柴田『それで、今井さん、でしたっけ?』

僕 『えぇ。■■■号室の方です。自分は彼女と同じ会社に勤めている者なのですが、昨日から無断欠勤が続いておりまして、様子を伺えればと思ったのですが……』

柴田『立ち入りは警察の方と一緒でないと出来ませんね……』

僕 『そうですよね』

柴田『ですが、あの子なら確か先週の土曜日に出かけていきましたよ。確か友達と旅行に行くとか何とか』

僕 『えっ、旅行ですか? どこに行くのか、っていうのは……』

柴田『さすがにそこまでは知りませんが……。あぁ、でも最初に聞いたときは実家と言っていましたね。少し間をおいてから訂正されましたが。邪推ですが、実家に行ったことを知られたく無かったのではと思いました』

僕 『なるほど……。ありがとうございます、お話しいただいて』

柴田『いえ。さすがに会社の方が心配されているのであれば。それにご実家の情報は、そちらにもございますでしょうし』

村田『ありがとうございます』


 (遠くで何かが振動する音)


◆◆◆


聞き取り日時:7月8日 15:31

場所:■■県■■市■■町 今井家

相手:今井和子 今井の母

聞き取り:ガイシ、村田


僕 『申し訳ございません。急に押しかけてしまいまして』

和子『いえいえ。あの子がご迷惑をおかけしたようで』

僕 『いえいえ、こちらこそ突然お伺いするような真似して、大変申し訳ございません……。その、今井さんがこちらに来られているかも、という話を伺いまして』

和子『はぁ。ですけど、あの子は帰ってきておりませんよ』

僕 『あぁ……やはりそうですか』

和子『えぇ……。ですけど、あの子の幼馴染の子から、最近近くの川で見たって聞いてまして……』

村田『今井さんを、ですか?』

和子『はい。でも、もしかしたら見間違いかもって……』

村田『服はどんな服を着ていましたか?』

和子『ジーンズに、オレンジ色のシャツって言っていたかと……』


僕 『村田さん、分かります?』

村田『――いや。じつはガイシさんなら分かるかと思って聞いてみて』


和子『見た子に直接話を聞きますか?』



◆◆◆


聞き取り日時:7月8日 16:09

場所:■■県■■市■■町 麻宮家

相手:麻宮玲子 今井の幼馴染

聞き取り:ガイシ、村田


玲子『ボイスレコーダーって本格的ですね』

僕 『いやぁ。正確に把握するために、一応って感じですけどね』

村田『麻宮さん。今井さんを見られたというのは本当ですか?』

麻宮『一昨日の昼に見かけました。ここの裏手にある山の麓に小さな川があるんですけど、この季節になると地元の子供たちと水遊びに行くことがあって。あたしは引率だったんですけど、その最中に川の向こうの林の中に、京子が居たんですよ』

僕 『今井さんは、その……どんな様子でした?』

麻宮『いや……、なんか普通に歩いてましたね。山の中に用事でもあったのか、ザクザク林を過ぎて山に向かってました。見つけた時に呼びかけたんですけど、聞こえなかったのかそのまま無視されちゃいまして』


村田『すみません、見たのは本当に今井さんで間違いないんですか? その、彼女は地元を離れて久しいので、記憶の中のイメージと食い違いがあるかと思いまして』

麻宮『いえ、京子とあたしは、少し前に東京で合ってるんですよ。好きなバンドのライブを一緒に見に行くっていうので』

僕 『では、麻宮さんが見られたのが今井さんだとして、今井さんが山に行くような理由に心当たりはありますでしょうか』


(沈黙)


麻宮『仕事以外の理由はありません。でもそれ意外なら』

 

(玲子のため息)


麻宮『おんしら様に嫁ぎにいったのかもしれません』


◆◆◆

 

聞き取り日時:7月8日 17:21

場所:■■県■■市■■町 タバコ屋

相手:村上キク タバコ屋店主

聞き取り:ガイシ


キク『おんしら様はな、あの世におる蟲の神様なんよ』

僕 『おんしら様という名前に僕らはあまり聞きなじみが無いのですが、どういう神様なんでしょう』

キク『おんしら様はな、死んだ人間を娶るんよ。若うて死んだ娘らは皆、おんしら様に嫁いだっちゅうたんじゃ。おんしら様のおる所は、食いもんに困らず天災もない極楽浄土やっちゅうてな。死んだんは悲しいことじゃけど、あの世で元気にやっとるいうてな』

僕 『なるほど……』

キク『ま、そんなん嘘じゃけんどな』

僕 『へ?』

キク『オレらくらいの世代から、おんしら様の信仰は薄うなってな。民俗学の先生が村に来た時に、おんしら様について調べ取ったんじゃ。オレも気になったんで、その先生に聞いたら、順番が逆じゃと』


僕 『死が先にあった?』

キク『そうそう。曰く、大昔にこの辺りを地震やら洪水やらが襲ってな、えらい人が順々に死んでったらしい。そんでそれが終わったら■■病や。そん時も人がバタバタ死んでった。そんであまりに死に過ぎるから、慰みに神様を作ったんやと。それがおんしら様じゃ』

僕 『確かに、そういう形で信仰が生まれることはあるかと思いますが……』


 ガイシの唸り声。


キク『なんね?』

僕 『どうして、蟲の神様、なんでしょうか』


(遠くで村田の車のクラクションが鳴る)

(それとは別に何かが振動する音)


◆◆◆


聞き取り日時:7月8日 19:30

場所:村田車中

相手:今井和子 今井の母

聞き取り:ガイシ


僕 『何度もすみません、一点京子さんの件で確認させていただきたいことがございまして』

和子『いえいえ。なんでしょう』

僕 『麻宮さんから、京子さんはおんしら様に嫁ぎに行ったのでは、と聞いたのですが。何か心当たりはありますでしょうか』

 

(沈黙)


和子『あの子は死体を見たことがあるんです。小さいころ、夏にみんなで山の麓の川に遊びに行った時、林の中で首をつっている女性を見たことがあるんですよ』

僕 『それが、嫁ぐ理由、でしょうか……?』

和子『えぇ。女性の死体を見た人は、おんしら様に呼ばれる、と言われているんです。そうしておんしら様は数珠繋ぎのように嫁を娶っていると。――といっても、子供の噂ですけど』


◆◆◆


聞き取り日時:7月8日 19:53

場所:村田車中

相手:村田

聞き取り:ガイシ


村田『どうします? 山の中を探しますか?』

僕 『いえ、それは……。ですが、警察に頼ったほうが良さそうですね……』

村田『ですね。とりあえず今日のところはこのまま会社に戻るので、ガイシさんは寝ててもいいですよ』

 

僕 『あぁ……でも、ちょっと気になってることがあって』

村田『なんです?』

僕 『おんしら様の事なんですけどね。あの話がなんだったのかなって』

村田『ガイシさんは怪談が好きなんでしたっけ』

僕 『はい。で、まぁちょっと気になったというか。おんしら様って、若い人が死んだときに、苦し紛れに理由を付けるための存在だと認識していたんですよ』

村田『ところが死体を見た人間をあの世に連れて行くという話も出てきた』

僕 『そこがちょっと引っかかってて……。どうして、そうなっちゃったのかなって……』

 

村田『そうですねぇ……。さっきの和子さんの口ぶりだと子供たちの間で流行った噂のようですが、えてして子供の想像力というものは恐ろしいものです。一度でも起こってしまったことを繋げて、そうであると言いふらしてしまったのかもしれません』

 

僕 『口裂け女にポマードが効く、みたいな話ですかね。まぁ、それとは別に蟲の姿っていうのも気になるんですよ』

村田『それは、何となく想像がつきますよ。この辺りは田んぼが多い。農家の方が住民のほとんどです。と、そこに蟲とくれば』

僕 『飛蝗――日本だとイナゴですかね。確かにそこは何となく想像出来るのですが、何故そちらを信仰したのかが……』


村田『まぁ、今はさっさと帰って会社に報告をしましょう。今井さんは未だ行方不明であると』


僕 『――殺されていたりしませんよね』

 

(沈黙)

 

村田『どういうことです?』 

僕 『今井さんのビルの管理人さんは、今井さんが実家に帰ると口にしたと言っていました。でも後で違うとも。これって多分、嘘をついたんじゃないでしょうか。何か隠しておきたい用事があって、それでそういう嘘をつこうとした。でも、後で実家に連絡を取られるとそこでバレちゃうから、後で訂正した。管理人さんは逆のことを言っていましたが、もし僕が今井さんの立場なら、そうするかなと』


村田『ガイシさんも嘘が下手、だと?』

僕 『えぇ、恥ずかしながら……。で、そういう嘘をつく場合、ケースとしては場所を知られたく無い場合と、相手を知られたく無い場合があるかなと。――つまり、浮気とか』


村田『なるほど、面白い推理ですね』

僕 『そして、今井さんはその浮気相手と何らかのトラブルに巻き込まれて……みたいな』

村田『――ふむ、なるほど』


 ガサガサとビニール袋がこすれる音。


村田『さっきコンビニで買ってきました。ガイシさんはブラックでしたっけ?』

僕 『眠気覚ましですか?』

村田『私もミステリは好きなクチでして。なのでもう少しお相手いただければと』


(ガイシがコーヒーをストローで飲む音)

(吐息)


(あくび)


村田『眠くなっちゃいました?』

僕 『はい――なんか、つかれたのか――』


(吐息)


(車が停車する音)

(シートベルトが外れる音)

(扉が開く音)

(何かが擦れる音)

(村田のため息)

(金属音)


(ブブブと、遠くで何かが振動する音)


村田『え……?』


(音が段々と近くなる)


村田『京子?』


(音がすぐ傍で鳴り続けている)

(音がすぐ傍で鳴り続けている)

(音がすぐ傍で鳴り続けている)


(蟲の羽音)


◆◆◆


聞き取り日時:8月8日 14:32

場所:■■県■■市■■町 タバコ屋

相手:村上キク タバコ屋店主

聞き取り:ガイシ


キク『――おんしら様について、言うとらんことがあったね。おんしら様はな、本当におるんよ。……あんたは前に来た時に、何でおんしら様が蟲の形をしとるのか気にしとったが、それはオレらも知らん。――何でアレがそうなのかは知らんのや』


キク『この辺りが地震や洪水や疫病で、ようけ人が死んだのは本当や。やけど、おんしら様はな、それはその前からおったんじゃ。――早死にしたもんの遺族を慰めるための神様っちゅうんは、オレらが勝手に作ったもんじゃ。アレはそういうんやない。自分の嫁を探しとるだけのもんや。アレの住処がどんなで、それが幸せかどうかなんて知らんよ』


キク『アレはずっとずっと前からここにおったんやろうな。そんで、昔の人は得体のしれんアレにおびえて、だから神様にした。――まぁ、神様にするんなんて、そんな理由やろ』


キク『あんたもあんまり深入りせんほうが良い。昔に来た学者先生は、ようけ調べすぎて頭がおかしなって死んでもうた』


キク『ニュースで見たで。――あぁ、今日はあの子の葬式か。おんしら様に見初められた娘は若い内に死んでまうんや。それはどうやってそうなるかは知らん。けど、そうなる前に殺した男がおったんやったら、そいつのことを許さんやろうな。あの男、まだ見つかっとらんのやろ? ――さぁ、どこ行ってもうたんやろうな……』


キク『ほら、もうコオロギが鳴いとる。早うお帰りよ』



キク『な?』

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る