バックスペースでひしゃげる心

あの人が 辞めて行った 回る椅子 座り続けて 静かに狂ひ


何やってるんだろう 灰色を叩く 午後7時 蛍光灯の あかりに焼かれ


年明けが 梅雨に飛び込む 矢の如し 生後半年 手を離される


「確認」の 私の名前が 薄れてく バックスペースで 消されてゆくの


「しんどい」を 一昨年の時計が 睨んでる 勤続一年 社会は三年


割れないか 砕ける心が 欲しかった 中途半端に ひしゃげて歪む


銀色の 包みを開く マグカップ 眠れるまじない 顆粒の漢方


「明日こそ 辞めると言うの」 と二年前  今日の夕陽も 同じ空の下


お別れを 量産して行く 十日間 転げて落ちたい 机を叩き


いざやいざ 退職願の 白封筒 履歴書の黒 筆文字の黒

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