雪女倶楽部

(雪女になりたい)

清明の 夜に北の 友想い 小指に掛ける レースの青さ


雪の果て 長くて短い 上り坂 下り口見つけて 駆け降りる我


さよならは 言わずとも良い またいずれ うそぶく手元で 花びら千切り


はいそうですね 二つ返事の 帰り際 いづれ私は ゆきおんなになる


四月馬鹿 罪なき嘘とは なんぞやと 頭抱えて 正午を過ぎる


モチーフを 編むかぎ針も 容れ物も 切れない鋏も 母のお下がり


(都民狂乱)

黒髪が 元の妹 髪染めて 今では茶髪が 地毛となり


冷たいと 夕立の頃に 言われれば 都民の涙は 酸性雨となり


都会では 星が綺麗に 見えないと 慣用句はみな 月に燃やされ


児童には 物の因果は わからねど コウカガクスモッグ プールが終わる


(推定ヴァンパイア)

春過ぎて 夏至に向かって 気が触れる 光は要らない 闇に沈めて


日没に ざまあ見ろよと 毒づいた 私はきっと ヴァンパイアなの


文月に 生まれた私の カレンダー 光に刺される 秒読み開始


心から 愛する君が 見たいから 耐えるよ毎年 つまべにの花


定時過ぎ お疲れ様です 窓の外 まだ明るくて 身体がだるく


ミニトマト 生ハム乗せる 夏の昼 冷製パスタの バジルが青く


冬よ来い 私を隠して 雪の下 春も夏も 頭上を通し


甲子園 サイレンが鳴る 十時過ぎ 逃げよう今すぐ 夏がいるから


麻糸の 編みかけベスト 放置して 夢見る冬に 毛糸を選び


暑いじゃん 何で毛糸と 君の声 私は夏を 無視しているの


(片想い倶楽部)

二年ごと 目移りしている 女の子 恋に恋して 一人上手


歴代の 好きな人を 唱えれば おのずと私の 好みが見えて


似合ってる 笑った顔が また見たく 今日は会える日 あの服を着て


三月が 過ぎればおしまい 御機嫌よう どうか元気で 君は思い出


失恋は 失う恋と 書くけれど 忘れたものも ロストに混ぜて


左手の 薬指を チェックされ 良い人いないの いるけど要らない


軽率に 手の甲が欲しい 唇が ゴッドファザーの やうに慕えば


片恋は 切ない悲しい 諸説あり 楽しんでいる 私は寝たふり


このお酒 一口いらない? なんとまあ ときめきたくても 私は茶道部

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