第40話 俺はあいつらの無事を祈りたい

 その頃、京都のホテルの一室。

 文芸部部長の千葉ちば俊明としあきはいきなりの事態に慌てふためいていた。

 同じ文芸部員である高林たかばやし一喜かずきが何者かに襲われ、捕まっているらしく、さらに通信がいきなり途絶えたのだ。

 何度もスマホから和樹を呼び出そうとするが、電源が切られているのか全くつながらなかった。


 くっそ……一体何があったんだ……


――千葉さん! 千葉さん!!


 間髪入れずに、寝室のドアがドンドンとノックされていた。

 千葉はドアを開けると、目の前に黒髪を三つ編みにした女の子が肩で息をしながら、立っていた。

 演劇部員の宮部みやべ奈恵なえだった。


「どうした、宮部。何かあったのか?」

「は、ハナが……」


 一瞬口ごもる宮部。


藤安ふじやすが、どうしたんだ?」

「連れ去られたんです……!」

「は?」


 信じられない一言だった。

 宮部が言うには、彼女は藤安と同じ寝室にいたというが、二人でくつろいでいたとき、突如黒いスーツを身にまとった体格の大きい男が数人現れ、藤安を連れ去ったという。

 拳銃を持って威圧的に接近する男たちを前に、宮部はなすすべもなく硬直するしかなかった。


「警察に通報したのか」

「とりあえず月島つきしま部長が通報してくれました。とりあえず、ホテルから出ないでくれって」

「……」


 高林も藤安も捕まってしまった。いったい何が起こってるんだ?

 千葉は宮部に高林も何者かに襲われ、捕まっていることを話した。


「そんな……」

「とりあえず、警察が来るのを待とう」


 今は高林たちが無事であることを祈るほかなかった。

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