二、悪魔に問われたる太陽神の物語

 私の知る話もその『アルツェフィア史記』の記述とほぼ変わりない。

 私は聖戦当時、師である聖人シャルティア卿に救護班を指揮するよう仰せつかってな。アルツェフィアの天界にて戦傷者の手当てをしておった。ああ。つまり私自身が戦場を直接見たわけではないのだ。

 しかし、戦傷者の話は数多聞いた。そうそう、その中で『アルツェフィア史記』には載っていない興味深いものが一つあった。

 聖人シャルティア卿が宮雲雀扇弥を愛していたという話だ。

 聖人シャルティア卿は霖狼国軍と行動を共にしていた一ヶ月間、毎夜、宮雲雀扇弥の陣中で眠っていたらしい。その程度なら〝人間に情けをかけた〟くらいで済むと思うだろう?だがどうやら…それだけでは済まされんようなのだ。ある者が言うことには、宮雲雀扇弥は聖人シャルティア卿より指輪を賜ったらしい。人間の分際で、だ。驚いたろう?

 阿羅漢あらかん陛下の血を引く気高き聖人ひじりびとである聖人シャルティア卿が、女王とはいえ被造物……人間の女に恋心を抱いたなんて、信じられない話だ。

 聖人シャルティア卿を崇拝する私としては、それが虚実であると願うばかりだ。

 当時、聖人シャルティア卿には神龍卿の嫡子…葛城竜殿下かつらぎりゅうでんかという神代貴族の立派な婚約者がいらしたのだから、他のオンナに浮気など…なさるはずがない。たかが人間の女になど……。

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