三、悪魔に問われたる閻魔の物語

 わしはその『アルツェフィア史記』の記述が正しいとは思えない。

 聖戦当時、聖人シャルティア卿の一番弟子で兄弟子あにでしにあたる太陽神ウラノスの命により、わしはアルツェフィアの地界へ遠征しておった。

 閉鎖的な地界におるわしが偉大な師の死を知ったのは、終戦の日から三日後……地上へ還ってからじゃった。

 ああ、そなたの言うとおりじゃ。聖人シャルティア卿の死を伝えに使者が地界へ寄越されることはなかった。酷い話じゃろう…。


 聖人シャルティア卿はきっとウラノスに殺されたのじゃ。氷鬼国と璃王国は関係あるまい。なぜそう思うか?それは、ウラノスが葛城竜を愛しておったからじゃ。葛城竜は聖人シャルティア卿の婚約者じゃというのに……。

 ウラノスは葛城竜欲しさに師である聖人シャルティア卿を謀殺し、その謀略の邪魔にならぬよう、わしを地界へ遠征させておったのじゃ。

 ウラノスは地界が荒れておるから鎮めてきてくれとわしに言ったが、地界は荒れてなどいなかった。地界は既にサタン卿によって統治されておったからのう……。

 なぜウラノスは荒れてもおらぬ地界を荒れていると言い、わしを遠征させたのか。そう考えるとやはりウラノスの謀としか思えぬ。ああ、やはりウラノスが我が師、聖人シャルティア卿を殺したのじゃ……。間違いない。

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