第1話 ある日の放課後
俺の通う私立
俺は三か月前、失恋した。同時に俺は友達を得た。初めて友達を得た。楽しい時間が始まった。それから一か月経った頃、今度は失恋させた。でも、友達になった。俺は二人の友達に囲まれて、残りの時間を過ごすことになった。
そういうわけで、テストまでの二週間、俺はここ三日ほど勉強漬けなのだ。国語、数学、理科、社会、英語の五科目を徹底的に勉強――させているのだ。
「もう全然分かんない!」
「なんでだよ。さっきも教えただろ。これはユークリッドの
「解いたんだけど、全然答えと合わないの」
「ちゃんと計算したのか?」
「したよ。でも全然合わないの」
「見せてみ」
問 731と301の最大公約数を求めよ。
731=301・2+129
301=129・2+43
128=43・3+
「書き間違いじゃねえか。最後の式、128じゃなくて129だろ」
「あ、本当だ。もう全然集中できないよ」
「そうだな。数学結構やったし、今日はこれ解いたら終わりにするか」
「やったー! 頑張るぞ!」
目の前に座るツインテールのぱっちりおめめ――三留千夢は、もう一度やる気を取り戻してシャーペンを握った。
俺は三日前から三留につきっきりで勉強を教えている。部活をやっていない俺にとっては、勉強を教えることで時間を有効に活用できるし、勉強にもなるし、授業にも身が入るし、いいこと
一か月前までは多少話すくらいのクラスメイトでしかなかったが、こいつの学力は結構有名だ。
一年生二百九名中、二百九位。これが前回の、
そういうわけで今日は俺と三留だけで勉強会だ。陽菜には勉強のメニューだけ決めてもらって、それをこなしていた。
「終わったよ、一斗」
今、最後の問題が解き終わったようだ。三留はすっきりした顔で赤い丸のついたノートを見せてきた。答えはちゃんと合っている。
「よし、じゃあ終わりにするか。片付けとけ」
「はーい」
と元気に返事をさせたけれど、俺はすでに帰る準備を完了させていた。
時計を見ると、四時四十七分を指していた。下校時間までは四十分ほどあるけれど、そんな時間でさえテスト勉強に割かなければいけないのだろうけれど、俺たちには早急に確認すべきことがあるのである。
「ねえ、一斗。どうして早く終わらせるの? 時間、まだあるよ」
「お前なあ、その記憶力、どうにかした方がいいぞ。よく今まで苦労してこなかったな」
「苦労しているよ、現在進行形で」
「……お前が言ってきたんだろうが。今日、
全く、こんなことではテストの結果が思いやられる。
三留の準備が終わると、俺たちは教室を出た。
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