空舞う天使の母の腹の中で

「そういえばおじさんの名前聞いてなかったな」とマリーンは言う

「俺は.....エイハブだエイハブと呼んでくれ」 だがこれは本当の名前ではない

ダイブ中に見つけた白鯨という本に出てくる捕鯨船ピークォドの艦長だ

「エイハブかじゃあ僕はイシュメールかな」とマリーンはにこりと笑った

「そうかもな だがイシュメールはおやじさんだ 」

「予備の布団が一枚あるそいつを引っ張り出す ちょっと手伝え」と俺はクローゼットを開ける

「明日は早いぞ 今日ははやく寝ろ」と俺はランプを消す


俺は目を閉じるとすぐに眠りに落ちてしまった。


「ん.......おはようマリーン」と横に寝ているはずのマリーンを起こしたがいなかった。

「マリーン?」と俺はベランダの方を見るとマリーンがパジャマ姿で立ってた。

「おはよ エイハブ あい新聞だってさ」とマリーンはにこりと笑った

「朝飯はパンを焼いてあるちょっとそこに座って待ってろ」と俺は起き上がり食器棚にいきパンケースを取り出した

マリーンは食卓テーブルに座り新聞を広げた

「昔は俺はご飯派だったんだが 今はパンしか無くてな」と俺はパンを切り皿に盛り付けた

「味気無いが我慢してくれ」と俺は言いパンをくわえた マリーンも食パンをくわえた

「そうだマリーンこれからケストレルに宝探しに行くんだが、お前も行くか?」

と聞く

「行く」

「そうか食い終わったらコンパチブルスーツと一応マスクについて説明しないとな」

「ごちそうさまでした」とマリーンが言うと俺も立ち上がり木箱から小さいコンパチブルスーツを取り出す

「こいつを着てくれ」というとマリーンは服の上から着たが少し大きいらしい

「左腕のボタンを押してくれ、体に合うはずだ」と俺も着なれたコンパチブルスーツを着込んだ

まるでプラグスーツのようなスーツだ。もしかすると戦争前より技術は上がってる可能性がある

「よし集合地点に行こう 確かヘリでケストレルに乗り込むらしい」と俺はマリーンを引き連れ町を歩いた。

端から見れば子供のいないおじさんが少年をつれて歩くという少し危ない光景だが誰も気にしない

町の端にある飛行場へたどり着いた。

ここにはヴ式汎用回転翼機ブラックホークの他に輸送用のヒ式回転翼機ヒューイや自衛用のカ式武装航空機ガンシップやア式回転翼攻撃機アパッチ・ロングボウ、ハ式回転翼攻撃機ハインドD等が置かれていたが、一番多いのはヴ式とヒ式だろう


「あっおやじさんだ!」とマリーンは笑顔で手を降る

その先にはおやじさんがいてその後ろにはヴ式回転翼機が主機を唸らせていつでも飛べる状況だった。

「探索は俺らだけだな?」と俺は一応訊く

「いつものように単独での任務だ 一応ヴ式5.56mm自動小銃ブラックライフル一挺とガ式45口径拳銃ガバメント二挺渡しておこう、あと最近モーヴィディックの派閥の動きが活発になってる 襲われても殺しはするな」

折角なので和平の町の派閥について言及しておこう

この町は元々おやじさん、イシュメールともう一人、モーヴィディックが立ち上げた町だ

だが13年前のアンドロイド襲撃事件で意見の決別が起きた

統率された軍隊を持つべきというモーヴィディック派、リサーチャーが防衛を担うべきだというピークォド派

結局のところピークォド派は自分達の意見+αでゴールドスタイン派の意見を取り入れたが

(カ式武装航空機等がいい例だ)

モーヴィディックは私兵を立ち上げ、各地でスカウトしているらしかったが

数年前に帰ってきた、数人の私兵と共に。

他の私兵は和平の南の旧高松に駐留しているらしい

そいつらが今俺の首を狙っているらしいが俺は何度も打ち破っている

「わかった イシュメール、昨日までならいつ殺されても構わなかったが今は守るべきものがいる!バックアップを頼むぞ! 」と言い俺はマリーンをエスコートしながらヘリに乗り込んだ。

「分かった」とおやじさんは手を降ると ヘリは浮き上がり海岸へ向かった


話でしか聞いたことがなかったケストレルは確かに大きい空母だった

「まず艦橋へ行くこいつはコンパチブルスーツのホルスターに一応差すだけでいい

もしも時の戦闘は鉤爪でいい」と俺は言いマリーンのホルスターにガ式を差した


「降りるぞ!」と俺はマリーンと共にケストレルの甲板に降りた。

《気を付けてくれエイハブ》という無線でヘリは飛び去っていった

「艦橋ってあれ?」とマリーンは甲板にそびえ立つ建物のような建造物を指した

「中は真っ暗だが大丈夫だ俺がついてる」

「あそこで機関を動かす」と俺らは歩き出したが

海の上の滑走路の空母は流石に甲板が広い、もう少し艦橋に近いところに下ろしてくれればよかったんだがな。

漸く艦橋にたどり着くと中は戦争当時のままだった

割れたティーカップ、山積みの書類 俺は機関始動のスイッチを探している最中にこんなものを見つけた

「おーいマリーン! いいもの見つかったか?」と訊くとマリーンは本を持ち上げた

「この船の艦長、アンダーセンって人の日記帳が出てきた 」

「後で調べよう 鞄に入れておいてくれ」とマリーンは鞄に本を入れ埃の被った机に手を置く

すると何かが作動したようで電気が空母に灯った

俺はそこの上に書かれた文字を読もうと埃を払うと『Engine starting』と書かれていた

俺は思わず苦笑してしまった、なんという偶然.......


「とりあえず格納庫を見に行こう 戦闘機図鑑は持ってきたな?」とマリーンに訊く

するとマリーンが持ってる小さな鞄から小さめの図鑑が出てきた

「どうやって行くんだろ」と地図を見ながらマリーンは呟いた

「英語でAircraft hangarと書かれてるとこを探してくれ」

「えあくらふとはんがーなんて何処にも書いてないよ?」

「そうだったマリーンには英語の概念がないんだったか.......」と俺は艦内図を見る

「ああ見つけた結構近いな 行くぞ」と俺はマリーンの手を引きながら地図で格納庫と書かれていた場所へ向かった。

格納庫はだだっ広かったが戦闘機などがごちゃごちゃ置かれており狭く感じた

「この戦闘機はなにかわかるか?」と俺は図鑑を持っているマリーンに聞く

「F-35だね」とマリーンは図鑑を見せてきた

「この空母F-35しかねえな.........」

中心に黒い塗装の戦闘機が置かれていた

「ラーズグリーズ.......」と俺は呟いた。

どこかで聞いたことがある。

すると無線が入ったヘリコプターからだ

《エイハブ こちら スターバック イシュメールより撤退命令が出た すぐ甲板に上がってきてくれ》

「分かったすぐ戻る」とだけ無愛想に言い俺とマリーンはエレベーターで甲板へ上がった

左手が痛む、幻肢痛だ.....

「マリーン 俺から離れるな嫌な予感がする」とマリーンに釘を刺し俺らはヘリコプターへ乗り込んだ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る