第13話 続章

 今野は、M249ミニミを構え、ドラゴンに向かって発砲する。弾丸は、横に着けたフィーダーから供給される。M249は、アサルトライフルに比べ制圧力に優れる。最悪弾丸がなくなれば、M4のものを使える。

 ドラゴンにビシビシと当たる。制圧力に優れるのは、相手が人を想定している場合だ。ドラゴンのような大きな相手では威力はたかが知れている。アンチマテリアルライフルでもあれば、ダメージを与えることができるだろうが。

 俺と曵野は、M4で攻撃する。デカイ相手なので外すことはない。頭を狙うが、隠すことのできない眼球には当たらない。

 ドラゴンは、さっきロケットが当たった翼をかばいながら、こちらへ向かってくる。俺は、M203に弾頭を装着し、発射する。着弾するとともに金属の破片をまき散らす。ダメージはある様だ。一度ドラゴンは、後退したが再度突進してくる。

 まだ30秒も経っていない。

 俺たちは、背中を壁に預け、腰を落とす。M4は適時発砲している。蓄積ダメージはあるだろう。

 清野は、さっきからレーザー照射(ドラゴンを注視しているだけだ)を続けている。

 ドラゴンは、一気に距離を詰め、俺たちの上で翼を振る。凄まじい風圧。4人とも背中を押し付けられる。清野は、レーザー照射をしていたために首に力が入っていなかった。ごつんと後頭部を壁に叩きつけられた。

「あっ」

 清野は、そのままぐたんと横になる。曵野が清野に近づいて様子を確認する。ドラゴンは、翼を振ってバランスを崩したらしく、一度着地する。

「脳震盪を起こしたようだ。」

 清野は目を閉じて動かない。幸い首が折れたとかではないようだ。

 ドラゴンは、そのまま「歩いて」こちらに向かってきた。俺は足に向かって発砲する。ハンドグレネードを一発足に向かって投げ込む。爆発し、破片をまき散らす。足から血が吹き出た。動脈に破片が刺さった様だ。

「ギイイイイイ!」

 ドラゴンは悲鳴を上げる。すかさず今野が、そこに向かって発砲する。曵野は、清野の背中にあるハンドルを持ち、ずるずると引きずって建物の中に入る。清野を寝かせて曵野が、建物から出てくる。

「俺が、レーザー照射をする。問矢援護頼む。」

 俺は、何も言わず頷く。

 曵野は、ヘルメットのレーザー照射装置のスイッチを入れる。曵野は赤い可視レーザーを装着している。IRも選択できるが、相手がケモノなら見えようが見えまいが関係ないだろう。曵野は、壁に背中を預け、ドラゴンの頭部へレーザーを当てる。ミサイルは、レーザー照射されているところへ着弾する。ほぼずれはない。

 着弾まであと1分。

 ドラゴンは、バランスを崩し、右に倒れた。首を上げ、こちらを睨む。

「ガアアアアアア」

 倒れたまま、火球を発射しようとする。

「やばい。」

 俺は、壁から離れ、向かいの建物に向かって走る。曵野はそれを見て同じように移動する。

 少し離れている今野は、M249を発砲する。火球は、俺がさっきまでいた場所に着弾する。少し遅れて移動した曵野は、広がった炎に包まれた。

 俺は、滑るようにして建物の中に入る。曵野は?

曵野は、炎の中から現れ、こちらへ向かってくる。皮膚がむき出しの部分はほとんどないが、火傷をしているかもしれない。

「クソッ。」

 曵野は中に入るとともに叫ぶ。

「ケガは?」

「痛いところはない。」

 曵野のバックパックから、煙が出ていた。ファーストエイドポーチが燃えていた。俺は、曵野の後ろに手を回し、Molleを外して引っ張って投げ捨てた。

「ファーストエイドキットをやられたか。」

 よく見るとボディアーマーも焦げている。首の後ろもやけどをしているようだった。

「炎の外縁部で助かった。まともに食らったら焼け墨だったな。」

 曵野はそう言って外を向く。

「時間は?」

「あと30秒。」

「行こう。」

 曵野は外へ向かった。俺も曵野に続く。レーザーは、炎にはやられておらず、きちんと発光している。

 ドラゴンは、俺たちの方をじっと見ていた。火球を吐こうとするが、口を開けたところに今野が弾を当てる。粘膜に着弾したのでたまらずドラゴンは、悲鳴を上げる。

 曵野はM4(アッパーレシーバーはHK416)を構え、レーザー照射を続ける。俺は、今野が当てた口に向かって発砲する。マガジンは残り5つ。チェストリグに詰めるだけ詰めてきたはずだ。戦時(と認識)なのでいちいちマガジンは回収していない。身が軽いはずだ。

 ドラゴンは、首をぐるぐるして苦しんでいる。そして翼からまた蛇を数匹だす。

「またか。クソッ。」

 にょろにょろしたものが、こちらへ向かってくる。俺は、蛇に向かって発砲する。蛇に着弾し、後方へのけぞる。こいつらは皮膚が柔らかいのか、5.56でも充分効果があるようだ。

 曵野は、レーザーをドラゴンに当て続けている。今は、発砲できないので俺が、蛇を片付ける。

 あと5秒。

 ミサイルの噴射音がヘッドセットの増幅器越しに聞こえる。思わず音の方向を向いてしまう。視界に2発のミサイルを視認する。

 そして。

 曵野が照射しているレーザーの位置にミサイルは、着弾した。と同時に肉片をあたりに撒き散らし、ドラゴンは姿がなくなった。

「倒した。」俺は呟く。

 ミサイルなら、充分威力がある。

 今野が、こちらに向かってくる。


 

 

 

 

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