第12話 破壊
その時、本部より連絡が入った。ヘッドセットを通して聞こえる。
『敵は五体。五体いる。衛星で確認した。』
俺たちは姿勢を落とす。今、一体倒した。あと四体いるというのか。
ブラックホークは、高度を取る。もう一機、ブラックホークが接近してくる。他の部隊だろう。やはり駅前の交差点の上にホバリングをしてロープを落とす。6人の
兵が降下する。着用している戦闘服から、一般兵とわかる。全員が、上半身を覆うボディーアーマーを着用している。
降下した兵を確認してブラックホークは、上昇する。その瞬間、火球がブラックホークの上を掠める。上空から4体のドラゴンが接近する。
それを確認したブラックホークは、機体を右に傾ける。その姿勢のまま、ミニガンを斉射する。
一体のドラゴンに着弾する。血を撒き散らし、叫び声を上げながらドラゴンは墜落する。
残り三体のドラゴンは、ブラックホークに降下してきたまま体当たりをした。絶対的な質量はブラックホークの方があったかもしれないが、三体では無理だ。ブラックホークはメインローターをもぎ取られ、そのまま機首から墜落した。
「ドッ」
凄まじい音が響き、ブラックホークが爆発した。辺りに部品をばらまく。俺たちの方にもいくつかの部品が飛来する。当たれば大けがではすむまい。ボディーアーマーを着けているとはいえ。
「なんてこった。」
今野が、呻く。ブラックホークは、生存率の高いヘリコプターだ。にもかかわらずオートローテーションをすることもできず、墜落してしまった。ローターを破壊されたということは、それだけの質量があるということ。ケモノの攻撃力は、舐めてはいけないということだ。
「建物の中へ移動する。」
今野はそう言い、近くの電気店へ向かって移動を始めた。状況を確認するためには、少し落ち着ける場所が必要だ。
降下した6人は、歩道を移動して建屋の壁にへばりつくようにして姿勢を低くしていた。
電気店の入り口付近で今野が立ち止まり、反対を向いて警戒する。残りのメンバーは、今野が警戒している間に店内へ入る。中へ入ったメンバーは、円陣を作り、外を向いて銃と剣を構える。
今野が、警戒を止め、俺たちに向かってくる。
「残りは三体だ。手持ちの火器だけでは心もとないな。あんたらも三体を相手にするにはきついだろう。」
リオは、
「ミサイルは、あと半分残っています。あの蝙蝠よりもドラゴンは大きいのでそれで倒せるかどうかわかりません。」
と言った。
「剣は?」
今野が聞く。
「首を狙えれば倒せるかもしれませんが。粒子放出は、何度も使えないのです。ドラゴンがこんなにいるとは思いませんでしたから。」
皆川が、続く。
「私が、ポイントマンをやりましょう。私の方は、ミサイルはほとんど残っているし、剣は二本ある。どうにか二体を倒せれば、残りは一です。」
今野のM249とM4。すべて5.56㎜。M240を持ってくるべきだった。
「どうにかするさ。」
曵野が力強く言った。さっきの皆川を見て曵野は、彼らを信用したらしい。俺と清野はそれを聞いて頷く。
皆川が、立ち上がる。
「では決定ですね。必ず二体倒します。」
皆川が、剣を二本抜き、二刀になった。パワーアシストのモーターが音を立てる。見た目以上に重いらしい。
「重くないのか?」曵野が問う。
「アシストがないとかなりの重さです。アシストがあればマッチ棒を持っている感覚ですね。指のアシストは邪魔ですが。」
パワーアシストを着けたことがないので感覚が分からない。皆川は、そのまま外へ向かう。
リオがそれに続く。
外へ出た皆川は、翼を展開した。翼を開くと背中にある四角い箱上のロケットランチャーが、ランダムに開いていく。自動誘導なのか、何かのセンサーで誘導させるのか。とりあえず知的好奇心を満たすのはこの戦いが終わってからだ。
リオも同じように翼を展開した。しかしミサイルランチャーは、皆川の半分だった。残りはデッドウェイトなので取り外したらしい。
まるで天使のようだと俺は思った。
皆川とリオは、音もなく浮上し、ドラゴンへ向かった。
「行くぞ。」
今野が、先頭に立ち外へ出る。
ドラゴン達は、皆川たちの姿を確認するや否や翼を大きく羽ばたかせ、向かってくる。敵意しかない。皆川は、翼を畳んだり開いたりしながら、右へ左へと回避行動をとる。かなりの速度だ。そして一匹目のドラゴンの後方をとる。剣を光らせ-粒子放出させ-首へ切りかかる。ドラゴンは、急に方向を変え、一撃目を躱した。リオも同じようにドラゴンの来る方向を見極め、回避しながら接近する。
一撃目を躱された皆川は、その場で一回転をして剣の動きを力で止め、再度切りかかった。その剣戟は、物理法則ではありえないように見えた。
「ドス。」
今度は、低い音を響かせ首に剣が刺さる。そのまま翼を畳み、高速形態になり、上昇する。剣は、引きずられることなくそのまま首を切断していく。パワーアシストの動きをロックしたのか?どのように制御しているのかは分からないが、臨機応変に制御ができるようだ。
「ゴキン。」
良い音がして首が切断された。切断面から大量の血が噴出した。皆川はその血を翼に受けながら、上昇を止め静止する。
俺たちは、ドラゴンの一匹に向かう。今野が、M249を一瞬発射する。弾丸は、翼に当たった。ドラゴンは、俺たちを目標として認識し、こちらへ向かってくる。翼の推進力と重力を使って速度を稼いでいる。俺たちは、頭を狙い発砲する。着弾したが、ドラゴンの動きは変わらない。ドラゴンは、俺たちの頭を掠め、再度上昇する。
「話にならねぇな。」
曵野はそう言いながらマガジンをリロードしている。俺は、弾丸がまだ残っている。
さてどうするか。やはり本部からミサイルを発射し、終末誘導するのがベストだろう。今野へマイクで伝える。
「隊長、清野にレーザー照準させましょう。俺と曵野で時間を稼ぐ。本部へミサイル発射を指示してください。」
今野は、こちらを見ずに答える。
「分かった。清野、ヘルメットのレーザー照準を使え。問矢と曵野は、少しでも時間を稼げ。」
今野は、本部へミサイル発射を指示した。
「しばらく待て。」
その間に上空待機していたブラックホークが接近してきた。両側に着けたロケットランチャーをドラゴンに向けて発射。何発かは、ドラゴンの翼に命中する。ロケットはその推進力を持って体を貫通した。だがドラゴンが浮力を失うことはない。続き、ミニガンでも攻撃する。ペインレスガンのミニガンでもドラゴンに与えるダメージはたかが知れている。普段は、力強い武器なのだが。ドラゴンの耐久力は大したものだ。
「3分後にミサイルが着弾する。予定通り、最後の誘導はこちらで行う。清野は、ヘルメットに着けているレーザー照準のスイッチを入れた。IRレーザーなので肉眼では見えない(それしか装備していなかった)。M4のレールに着けているNVGを起こす。スコープ越しに見ることになるが、どうにかなるだろう。
ブラックホークは、攻撃を行った後、再度距離を取っていた。ドラゴンが、ブラックホークを落とす能力を持っている以上、あまりに長時間接近するのは危険だからだ。ドラゴンは、再度俺たちを確認し、今度は火球で攻撃をしてくる。連続的に3発。
かなりの速度で俺たちの近くに着弾した。
「ドドドドドド。」
地響きのような音が響く。一瞬後、パラパラと土が俺たちにかかる。準備は整った。火球が連続的に発射できるのかわからないが、3分生き残らなければ。
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