第11話 衝撃

 着地した瞬間、俺と曵野は膝をつき、姿勢を低くする。清野は、壁に背中を付けて姿勢を低くする。

「壁から離れろ。跳弾でやられるぞ」

 曵野が言う。セオリーだが、『跳弾する弾丸』を使うやつがいればだが。

「はい」

 それを聞いた清野は、壁から離れる。俺達の近くに来て同じように姿勢を低くする。

 敵はどこだ?

 

 普段は、人であふれている街。

 リオと皆川は。ロープを使わずにすーっと降りてきた。何度見ても不思議な光景だ。そして俺たちの近くで姿勢を低くする。今野もその場所に合流する。

本来のガナーはいないので今野は、M249を持っている。

「ケモノはどこでしょうか?」

 リオが、ヘッドセットのマイクで話す。

「分かりません。本部からも情報は来ていません。」


 とその時、俺の目の前10m先を蛇のような大きな物体が移動する。

「あー。あれはだめだ。」

 俺は呟く。俺はにょろにょろ移動するものは嫌いなのだ。物理的にどうなのか、なぜ神は、あのような生き物を作りたもうたのか。背中をぞくっとしたものが走る。しかし仕事だ。倒さなければ。

「問矢さん、蛇が嫌いなんですね。」

「蛇を好きな人がいるんですか?そんな人がいるなんて、俺には信じられませんが。」

 蛇のようなケモノは、こちらを確認して視線を向ける。(見たのか、ほかのセンサーがあるのか分からないが)

「ファイヤ」

 今野が、M249を発砲する。5.56㎜弾のカートリッジが一気に周囲に散らばる。俺はチャージングハンドルで初弾を装填する。(士官食堂で装填していた弾丸は、ヘリに乗り込む前に抜いておいたためだ)

 ホロサイトをのぞき込み、発砲する。カートキャッチャーがないため、カートリッジはかなりの距離を飛び、地面に当たった瞬間チンッと音を立てた。

 全弾ケモノに着弾する。ケモノは、かま首を立てた状態で2m程度、長さは5mほど。当たらない方がおかしい。

「ギイイイイ」

 ケモノは、悲鳴を上げる。物理攻撃は、間違いなく効果がある。つまり生き物なのだ。曵野と清野も発砲する。

 

 だが、俺たちは忘れていた。なぜ火事が発生していたのか。


 俺たちを大きな影が覆う。視界全体が暗くなり、一瞬視力を低下させた。俺は、マガジンをリロードしながら、上を向く。曵野は、残弾で周囲を警戒している。

 俺の視界に入ってきたのは。どこかのファンタジー映画で見たようなドラゴンだった。ドラゴンは、翼から蛇をぼとぼと落としている。

「あー。もう許してくれ。」

 本当に蛇だけはだめだ。それも数十匹地面にいる。俺たちを認識した蛇はこちらに一気に向かってくる。仕方なく俺は、再度発砲する。

「ミニガンの斉射を頼む」

 今野がチョッパーに指示する。ブラックホークは、上空を旋回していたが、こちらに接近する。

「ヴーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ」

 聞きなれたミニガンの音が聞こえる。俺たちの10m先に着弾し、蛇たちを一気に薙ぎ払う。

 ブラックホークは、ドラゴンを認識していたかどうか?誰も報告していない。ドラゴンは、ブラックホークの後方から接近する。ドアマンが、何かを叫ぶ。声が大きかったため、明瞭に聞こえなかった。パイロットは、その声に反応し、左腕を引いてブラックホークを一気に上昇させる。ドラゴンは、ブラックホークに接触出来ず、降下する。

 「あぶねェ。」

 曵野が言う。ブラックホークは、一気に上昇したため、頭が上に上がった状態になる。ドアマンは、体が一瞬浮いていただろうが、ミニガンの照準を合わせ発砲した。ドラゴンの翼の端に着弾。血が飛び散る。

「ギャアアアアア」

 ドラゴンは悲鳴を上げる。そしてまた蛇をぼとぼとと落とす。

「本当にもう堪忍してくれ。」

 それを聞いてリオが笑っているのが、見える。

「本当に嫌いなんですね。」リオが俺に言った。

「蛇はだめなんですよ。」

 リオはそれを聞いて抜刀する。剣は直剣だ。あの時は気が付かなかったが、刃の先がキラキラ輝いて見える。リオが、剣を振るとキラキラしたものが剣の周りを覆う。そしてリオは一気に前進し、蛇を一刀両断にした。イノシシの時と違い、凄まじい切れ味だ。

「あの時は、粒子放出していませんでしたので。」

 リオが伝えてくる。粒子とはなんだろうか。


 ドラゴンは、辺りに血をまき散らしながら、着地する。そして口から炎を放出した。ブラックホークは、『速度の遅い炎』火球を楽に回避する。

 長い首を振り、もう一度ブラックホークに照準を合わせた瞬間。

 ぼとんとその首が落ちた。そして首から血を噴出する。


 死んだ。


 首を切られて生きている生き物はいない。(生体反射は除く)

 皆川が、リオのものより、長い剣で首を切断していた。首の直径と剣の長さが合わない。切断時に刃が伸びた感じだった。


 曵野が呟いた。

「強い。」

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