第10話 戦闘開始
M4を3点スリングに取り付け、ブラックホークの駐機場所へ向かって走る。俺たちが前回使ったブラックホークは、後部が破壊されてしまったため、他の駐屯地から接近中だ。東京まではおよそ30分の飛行になる。
チームは、あと3名いるが、こちらへ走ってくるものは二人。今野と清野。清野は最近配属されたメンバーだ。一緒に訓練したことは数回しかない。
それでも4名。
あとは・・・。
リオと皆川がこちらへ向かってくる。リオは、戦闘服(おそらく借りたもの)を身に着け、パワーアシストを着けている。皆川のものと違い、装甲が少ない。皆川のものは、全身に装甲が付与されている。
「隊長、彼らも参加するのですか?」
俺は今野に聞く。まだヘッドセットの調整をしていないので直接話す。
「ああ。彼らは、事情を聴取したが問題ない。他の場所でも彼らの仲間は、そのように動く。上層部からの命令でもある。」
曵野は、あきれた顔をしている。
「あいつらを信じるってのかよ。」
俺は曵野に言う。
「信じるしかないだろう。それに話した限り何か裏があるとも思えない。」
「だからお前は女に甘いんだよ。」
俺は答えなかった。チームでの動きはできないだろうが、彼らはかなりの戦力になりそうだ。だがリオは、先の戦闘でミサイルを使用している。弾薬はあるのか。
駐機場に到着した皆川は、俺たちに言う。
「私たちも戦闘に参加します。そのために来たのですから。」
よくわからないが、軍の上層部は、彼らのことを信用しているようだ。
皆川は、両方の腰に剣を挿している。かなり長い剣だ。まあ相手が、先のようなケモノであれば肉弾戦になる。剣でも戦える可能性はある。それに皆川は、ミサイルを使っていない(だろう)。
リオは先に見た剣を同じように腰に着けている。
ヘッドセットを今野が、皆川とリオに渡す。二人はヘッドセットを着け、防弾のヘルメットをかぶる。ヘルメットは、耳のところがえぐれており、ヘッドセットと干渉しない。
ブラックホークが、そこに到着する。ドアマンが、ドアを開ける。俺たちは、ブラックホークに乗り込み、シートベルトを着ける。皆川とリオは、腰に剣を着けているため、少し座りにくそうだ。
パイロットが、俺たちがシートベルトを着けたことを確認し、発進させる。到着までの間に作戦を立てなければならない。今野が立案済みだろうが。
俺は、M4を縦に向けて背中をシートに付ける。チェストリグに挟んでいたフライトグローブを取り、着用する。最近はナックル付きグローブの方を愛用する隊員が多いが、俺は引き金の感覚が良いフライトグローブを愛用している。
今野がしゃべり始める。
「状況は、ケモノが上野に出現し、暴れているとのことだ。発砲はフリー。チョッパーから、降りた後は、曵野と問矢、俺と清野でツーマンセル。皆川さんと羽鴇さんは、二人組で動いていただけますか。」
皆川とリオは頷く。
「私たちは、あなた方の戦力は分からない。問題があれば撤退を。ブラックホークは、ミニガンで援護をします。暴れているとしか情報は来ていないので相手がどれだけの戦力を有しているかは不明です。」
俺はリオの方をシューティンググラス越しに見る。彼女は前回の戦いで発砲を経験している。皆川はどうだろうか。リオは、クリアレンズのシューティンググラスを着ける。リオは、俺の方を少しだけ見て笑った。目が合ったので笑ったのだろう。俺は、ドアから見える外の景色に目を向ける。
そういえば、降下はロープを使うのだった。フライトグローブだけではだめだ。チェストリグの後ろに着けているバッグからラペリング用のレザーグローブを取りだす。降下後は、外すつもりだ。
パイロットが告げる。
「おいおい。何だあれ。」
俺が見ていた逆の方だ。首を回しそちらを見ると。
そこら中から煙が上がっている。数か所には炎が見えた。
「燃えてるのか?」
曵野が言う。
「ああ。そのようだ。」
今野が、それに答える。ミニガン担当が、初弾を装填する。バッテリーチェックをして通電していることを確認している。
俺は、M4にマガジンを差し込む。一応、初弾装填は降下後にする。降下時は手を放すので危険は避けたい。さらにヘルメットに着けているLED等の確認をする。
「問矢、落ち着け。」
俺が焦っている様に見えたのか、今野が俺に告げる。今野も実戦での経験はないはずだが、上官としての義務だろう。
「大丈夫です。しかし我々の装備だけでは。」
俺たちは特殊部隊だし、このような状況では貢献できることも少ないような気がする。レンジャーや一般兵はどうなっているのか。
「そうだな。状況を確認して、本部へ連絡しよう。場合により、俺たちは照準器だ。」
レーザー照準して終末照準を行うことを言っている。ミサイルはどこから飛んでくるのか?
あまりこの状況での訓練はしていない。キルハウスでCQCの経験の方が豊富だ。
ブラックホークは、上野駅の前、交差点の上でホバリングする。電線が邪魔をしてある程度の高度だ。
「NOEはできないから、この場所で降下になる。少し高いが、頼む。」
パイロットは、俺たちに降下を告げる。ケモノの姿は見えない。
「行くぞ。」
今野は、シートベルトを外す。清野が最初に降下する。するするっとロープを掴み、降下。慣れたものだ。
皆川とリオはどうするのだろう?曵野が俺の肩をたたく。
「行こう。」
俺は頷き、ロープを掴む。片側に2本垂れているロープを掴み、俺と曵野はほぼ同時に着地する。
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