第5話 帰還

 Y駐屯地にブラックホークは着陸した。途中数か所、煙が見えていた。

 俺と曵野とリオはヘリから降りる。M4のマガジンを抜き、装填されている弾をチャージングハンドルを使って抜く。発射した弾丸のカートリッジは、カートキャッチャーの中に入っている。日本軍の伝統らしい。

 建屋に向かって歩いていると今野大尉が寄ってくる。二人は敬礼する。彼は俺たちの部隊の隊長だ。俺たち二人も士官ではある。士官食堂が使える。

 リオは、お辞儀をする。その姿を見て俺は少し腑に落ちないものを感じる。

「問矢、曵野、無事だったか。」

 思いもよらぬ言葉に俺は怪訝な顔をする。

「何発か撃ったか?糾弾されると思ったのだろうな。だが撃ったのは正解だ。」

「奴らは何なんですか。」

 俺は聞く。だが今野の目は、俺たちの後ろに向けられていた。

「そちらの女性に聞いた方が早いんじゃないか?」

「私が説明をしましょう。あのケモノは、生物兵器です。」

「生物兵器だと?」

「難しい話になりそうだな。とりあえず中に入ろう。そちらの女性には大変すまないが、状況から一度衛星班に行ってもらう。よろしいでしょうか?」

 今野は、俺たちに行った後、リオに尋ねた。

「はい。問題ありません。放射線やウィルス、寄生虫はないと思いますが。」

 リオは、疑われているであろうことを言う。やはりかなり高い技術や知識を持っているところから来たようだ。

 今野は、その答えを聞いて後ろを向き、待機していた衛星班を手を振って呼ぶ。女性隊員2名が、リオのところに来る。リオは、彼女らについて建屋の中に入っていった。剣は鞘に入ったままだが、良かったのだろうか?

「言葉も通じるのだな。」

 今野が言う。

「ええ。リオ-あの子は、かなり高い技術を持っているところから来たようです。」

 俺は、少ない情報から認識したことを今野に伝える。今野はそれには答えず、情報を話す。

「日本だけでなく、世界で-そのケモノとやらが出現したそうだ。日本は昼時間だが、深夜の地域もあっただろうな。こちらに入った情報だとかなりの被害があったらしい。」

 曵野は、到着して初めて口を開く。

「俺たちの前に出たのは、イノシシみたいなやつでした。他のところも同じだったんですか?あれはこの世界の動物じゃない。生物兵器だって?冗談じゃないですよ。」

 今野は、少し困ったような顔をして答える。

「まだ情報が足りんのだ。海外のケーブルテレビニュースでは、大型で空を飛ぶやつも出たと言っている。お前たちは、イノシシで運がよかったのかもしれんな。」

 俺は、チェストリグを少し緩めて言う。

「ドラゴンですか。どこかの漫画だな。」

 今野は続ける。

「ついでに空を飛ぶ騎士も出たそうだぞ。本当に漫画だ。」

 俺は、さっき見たことを言う。

「彼女は、パワーアシストシステムを着けていました。戦闘は、そんなに強い感じではありませんでしたが。」

「とりあえずここで接触したのは、お前たちだけだ。本部からも情報を求められている。少し休んで俺の部屋に来い。」

「了解」

 俺と曵野は敬礼をする。

「とんでもないことになったな。」

 曵野はそう言う。俺は、ヘッドセットとシューティンググラスを外して答える。

「久々の実弾訓練のはずだったんだがな。俺は二発撃ったが。」

「俺はあの女は何か気に入らん。最初の戦闘の時、パワーアシスト使っていたか?負けそうだったぞ?」

 俺は答える。

「起き上がる時にアシストはされていたようだな。回転を使ったとしても変な起き方だったからな。」

「とにかく。何か気に入らん。お前は変な敬語で話すし。」

「敬語だったか?昔から女と話すときはそんな感じだ。」

 曵野は、緊張がとれたのか笑う。

「お前、顔はいいのにな。経験不足だ。」

 さっき戦闘したってのにこいつは。。まあ、悪い奴じゃない。だからツーマンセルを組んでいる。

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