第4話 ヒロインは新世界を見る root 零矢と苺

 ここは…?

 私は誰…?

 私…今まで何してたの…。

 少女は目を覚ました。

 そして、目の前の新世界と人々を見た。

 人々は記憶喪失の彼女を見て悲しみ哀れんだ。

 だがこの時、誰も予想しなかっただろう。

 この少女が本当の勇者であるということを。

 今、少女の旅は始まったのである。





 ……………ん?

「それでこの作品なんだけどさ…

 おい?聞こえてるか。零矢?」

「あ、わりぃ。何も聞こえてなかった。もう一度頼む。」

「どうした。塔堂さんが倒れてから元気無いな。心配なのは分かるけど。」

 現在は昼休み、俺は、柳原ヒョウが創作するライトノベルの構成と出だしを共に悩んでいた。

 だが、その悩みはいつしか苺に対する悩みになっていた。

「零矢。気になるなら保健室に行こう。今はちょうど昼休みだ。保健室の先生もいるだろうから状況が分かるだろう。」

「そうだな。悪いが付き合って貰うわ。今後の為にも。」

 俺達は急いで保健室に向かった。

「着いた。じゃあ、開けるぞ。」

「おけ。俺のことは初見だろうから、

 まず零矢から入れよ。」

 俺は親指と人差し指で丸を作った。

 ガチャ…

「失礼します。塔堂苺の様子を見に来まし…」

 このタイミングでドアを開けたのは失策だったかもしれない。

 だって、苺の上半身がブラ一枚。

 しかもブラのホックは外れかけ。

 そして下半身はパンツ一枚なのだから。

「あー。すまんっ!そんなつもりじゃなかったんだ!許してくれ。」

「どうしたんだ零矢?入ってもいいか?」

「バカ!今は俺ら二人共ダメだ!

 では、失礼しました。」

「誰ですか?別に体操服に着替えているだけですので、大丈夫ですよ?」

(は?)

「おい零矢。この子さ…本当に塔堂さん?」

(俺もこんな苺しらねぇー!!)

「ははは?まぁ冗談だろ。なっ?苺?

 帰りにお前の好きな喫茶店で好きなもの奢るから許してな?」

「…?すいません。本当に誰ですか?」

 …こんな時、皆んなならどうするだろう?答えは単純。逃走だ。

「こんなの苺じゃねぇぇぇ!!」

「あっ!待ってよ零矢!塔堂さんついてきて下さい!」

「わかりました。」

 教室に着くと、俺は頭を抱えた。

(まさか記憶喪失か?!)

「何だ?!あいつどうしちまったんだ!」

「おーい。どうしたんだ?大丈夫か?」

 と、クラスメイトからの様々な声が聞こえた。

「大丈夫ですか?」

「あぁ。ちょっと信じられないことが起き…!!苺!!」

「??苺?それは私の名前ですか?」

「そう…だけど。」

(てかなんかこいつ名前呼ばれて嬉しそうだな。)

「うふふ。苺。いい響き。」


さて。こんな苺になってしまったが、俺の選択肢は二つ。

こいつの新世界から目を覚ます為に動く。

or

知らない人にする。



答えは勿論

目を覚ましてやるだ。




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