第3話 二度の勇気 root苺
制服よし。
髪の毛よし。
化粧もよし。
今日から初めての高校生活。不安は沢山あるけど、私にかかれば余裕でしょ!と少女は鏡の前で一時間構えていた。
彼女の名前は塔堂苺。
十五歳高校一年生。小学六年生でライトノベル作家になった期待の新星。誰もが羨ましがる(一部を除く)ロリ巨乳!髪の毛はケモ耳の様なくせ毛が跳ねていて。その後ろからハーフツインテールを生やしている。
性格は、如何にも学校生活を充実していると言っても過言ではない数の友達(男女)を引き寄せる位の優しさ。容姿端麗で学績トップ…まさに完璧無欠の少女。
そんな彼女にも苦手な存在が一人いる。
彼の名前は葉羽零矢。幼い頃から家が近く、両親の仲も良かった事でよく遊んでいた。
彼女は中学生の時から毎日思う。どうしてあいつに近づかれると不快な気分になるのか?
その答えは今になっても出ていない。
先日ライトノベル作家に彼がなった事を知った苺は彼の親に高校を何処かで聞き出した。
「同じ高校なのね。」
正直彼女はウザいという気持ちより嬉しい気持ちの方が大きかった。
そしていよいよ今日の入学式で彼に出会う事を期待していた。
だが彼は見つからない。探しても見つからない。そんな事をしていらうちに気づいたら帰宅していた。
「やってしまった。もぉーバカバカ私のバカー。絶対に今日声かけるって決めてたのにっ。」
彼女がふて寝をしようとした時…携帯が鳴った。作品担当の人からだった。
「あいつからの電話だと期待しちゃったじゃないの。」
ピッ。
「ただいま苺ちゃんはショートケーキの苺になっております。ピーとなりましたら…」
「もしもし担当の山下です。作品の締め切りが近いのでお電話しました。あと隣に葉羽くんがいるのでお電話しました。ではさよーならー。」
「まって!嘘です!います!切らないで!」
「必死ですねー。」
彼は苺の担当さんの山下大輝。一緒に作品を作る最高の同士でもあり、時々鬼でもある。特徴は喋り方が間延びしていて、不思議な存在だ。
「今から社に向かうところよ。書いた原稿持っていくわ。あとそれまで零のこと帰さないでね!ここ重要!」
「お待ちしてます〜。」
ガチャ。
ものすごい勢いで電話が切れた。
「?山下さん誰ですか?」
「いえいえお気になさらないで下さい〜。今からあなたの自称嫁が来ますのでー(*´∀`*)」
「本当に誰なんですか?」
「あと一秒後にわかりますよ〜。」
その時だった。
バタン…。
「おっほん。えー。あー。お待たせしました。ご無沙汰しておりましゅ!」
「噛んだ…。」「噛みましたねー。」
はっ恥ずかしい。でも塔堂苺たるものここは塔堂だけに堂々といきましょう!
「あっあんた?邪魔なんだけど…」
「何?邪魔?なら帰るわ。」
「はーー!ふざけないでっ!私が来たのよ!喜んで慣例に咽びなさい!」
「はいはい。では俺は賢者タイムに入ります。対応面倒だから。」
「ちょっ!ダメ!ほらっ!山下も何か…。」
《悲報》山下は不在。
「あーもうっ!ちょっと聞いてるの!ねぇ!ねぇっ!聞いてよ!ねぇってばっ!」
「んっ?何これスタートの前提から間違ってね?」
「間違ってないわ。というか何故あんたがここにいるのよ。」
(あぁ。またやっちゃった。何でいつも私は素直に言えないの…。)
………
「そっか。まぁいいや。この先、一生話しかけんなよー。」
「なっ!あんたこそ一生私に近寄らないでよね!この馬鹿っ!」
「了解。じゃあな。」
バタンっ!…
(どうしたらまともに話せるのよ。)
「苺先生。話終わりましたか?」
「山下。私どうしたらいい?」
「なら私にいい案がありますけどやりますか?」
「ものによるわ。」
「ではお話しましょう。」
山下は初っ端から水爆級の発言をした。
「彼の日課は、近くの公園で幼女観察日記をつけること。しかも幼女を舐め回すような気持ちの悪い目線は彼にしか出来ない芸当でしょう。学校の体育のプールの日なんて幼女のつるぺたを見て大興奮する程です。結論キモい系のロリコンですね。」
普通ならこんなこと信じないが、この女はいとも簡単に信じた。
「嘘。だって、あいつ女が嫌いって…いや、まさかそのストレスを発散にする為にこんなことを…信じられない!お灸を据えてやるわ!」
(苺さんがこんな簡単に信じるとは。これは面白いものが見れそうです。)
「で?私どうすれば良いのかしら?」
「はい。明日の朝、家に押しかけてください。そしてお兄ちゃん一緒に学校に行こうと誘ってみて下さい。補足でしっかりと妹になりきって下さい。
でないと意味ないですよ?」
「分かったわ。見てなさい!絶対やってやるんだから!」
(あの男を私に恋させてやる!)
ーー翌日ーー
(ふぅー…いざやるとなると結構緊張するわね…。)
苺は震える指先でインタホーンを鳴らした。
ピンポーン…ピンポーン…
(でない。今日はおばさん達がいない日ってママが言ってたから留守かな。)
ふと、零矢の部屋を見上げた。その時だった。
誰かの影が見えた。
(泥棒っ!?何とかしないと!こういう時は脅かして怖がらせて外に出さないようにしなきゃ!)
そこからは、ピンポンラッシュとノックの連続だった。
ーーーーーーーーーー
それからの一緒に登校するところまでは出来たけど、事件が起きた…
ーーーーーーーーーー
「ふっ、ふざけないで!私は零と違って本気なの!」
ダッ!…
(ぐすっ…ひどいよ。私、本当は零のこと大好きなのに。こんなのって、あんまりだよ。)
苺は全力で走った。もう嫌。
零矢との合わせる顔が無い。
そんなことを考えて泣きながら学校に着いた。だがこれが失策だった。
「あら〜?首席様ではありませんか。
どうして泣いていらっしゃるのか良ければ教えてくれません?」
山下美和…。入試で私と一点差で首席を争った女。かつ、この学校で三人しかいないライトノベル作家のうちの一人。だけど、この女はあまりにも危険な女で有名。自分の利益の為なら何でもし、友達も感情も全て捨てた女。
「いいえ。貴方に話すことではありませんよ。さようなら。」
「あら。つれないですわね。
まぁどうせ、葉羽くんのことなんでしょうけど。」
「!?何であんたが零矢のことを知っているの?!それに…!」
「まぁそんな熱くならないで下さいまし。そんなに興奮されますと、私まで熱くなってきてよ?」
そう言って胸元の第二ボタンを開けた。
「あっ…あんたね。」
「ふふ。勘違いしないで欲しいですの。私の興味があるのは男性ですよ?」
「そうじゃなくて!」
「はいはい。あとは教室に行きながら話ましょう。ここでは、人目に付きましてよ?無論手遅れですけど。」
だが、そんな彼女の発言には一理あったので、素直に従った。
「教室に着いたわよ。で?何で零矢のこと知ってんの?」
「ウフフ。彼のことは兄から聞きましてね?面白い存在と知りました。貴方との関係も実に興味深いですー。」
「やっぱそうよね。それしかあり得ないもの。」
「そういう時は、えっ?嘘?!って反応すべきでは無いですかー?」
「そうね。普通わね。でも、あんたは普通じゃない。」
「うう。ヒドイじゃないですかー。こう見えても私も一人の女の子なんですよー。扱いがぞんざい過ぎますー。」
「もういいわ。じゃあ一生私に近づかないでよね?」
「そうですかー。残念。仲良くしようと思いましたのにー。」
「そっ。ありがとう。」
(そっ。ありがとう。ですか。んふふ。やはり兄から聞いた通り面白そうな人ですわね。)
そんな彼女の顔は最早悪魔だった。そんな彼女にクラスの男は釘付けになっていた。彼女の見えそうな大きなおっぱいに。
ーーー放課後ーーー
「山下美和のことも気になるけど、まずは、零のことから済ませないと。
朝は、私が悪いとこもあったのだし。
ここは素直に謝るのが吉よね。」
零矢のクラスに行く為に廊下に出たその瞬間に…
「美和。なにしてるの?」
「いえ。貴方を待っていたのですよー。」
「関わらないでと言ったわよ。」
「んふ。可愛いですわね。でも私は貴方を諦めませんことよー?」
「そっ。好きにすれば。」
「はいー!好きにするので、一緒に帰りましょー。」
「でも、私用事があるから。」
「いえいえ。葉羽くんは今保健室で寝ています。体調崩しているそうですから。今行ってもクラスの人々がいるので邪魔になりますよ。朝の噂もありますしー。」
(やはりこの女。何か企ててくるわね。)
「分かった。でも。一緒に帰る代わりに質問に答えてね。」
「はいー。何でもお聞きになってよ?」
「貴方と大輝さんは、何を考えてるの?」
次の瞬間、空気が変わった。
「ふふ。端的に言うと見てて面白いですかねー。」
「…そっ。」
「もぉー。軽いですわねー!」
また一瞬で豹変した。
(この女は危険ね。度合いでいうと、カビキ◯ーを混ぜるな危険レベルね。)
と、我ながら訳の分からない尺度で測った。
「では、帰りましょー。」
「ん。そうね。」
そんなこんなで今日は終わっていく。
次の日に、起こる事なんて考えもなしに。
かなり早く登校してしまった。
はぁ。まだ誰もいない。美和もよくわからないし。美和の件について大輝さんに質問しようと電話しても、
『うん〜。美和はいい子だから仲良くしてやってな〜。あいつも良いライトノベル作家だから切磋琢磨してくれると嬉しいな〜。あと、僕は大きなおっぱいのヒロインより小さい方が好きなんだ〜。
だから次のヒロインは小さいのでよろ乳首〜。✌︎('ω'✌︎ )』
と、訳の分からない事言うし。
「はぁー。どうしたらいいのよ。」
ガタンッ…。
「誰っ!」
だが返答は背後から聞こえた。
「貴方のことが憎いと思っているものよ。」
次の瞬間、全身に強烈な痛みが走った。
「あぁぁぁーー!!いた…い。」
(いたっ!だっ…誰か助けて…零…。)
そこからは、気絶して記憶と視界が途絶えた。
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