第2話 底辺達は見せる逆境という名の底力を root零矢
学校に着くと入学二日目ということもあり、周りはとても静かだ。唯一聞こえてくるのは、俺が首席の女子を泣かせたという噂が現在進行形で流れている…。
(初日からやってしまった。人生におならを告げよう。あっ。サヨナラだった。気が動転してるなぁ)
「ちょっと。そこの君いいか?」
「ん?わぁっぇぇ!ビックリした。」
驚きのあまり椅子から落ちてしまった。
「いやー。すまぬすまぬ。なんか気分悪そうやし。」
後ろを振り返るといかにもスポーツマンのような巨漢で色黒の男がいた。
「あー。お気遣い感謝するよ。初めましてだな。俺の名前は葉羽零矢だ。宜しく。」
「おうよ!俺っちの名前は筆宮遅流だ。こちらこそよろしくだ。なっ?ハバちん。」
なんてフレンドリーなんだ…。しかもハバちんって。まぁ。でも悪い奴では無さそうかな?
「おっけ。じゃあ俺もお前のことを
遅宮って呼ぶわ。」
「オーケーブラザー!で早速だけどよハバちんの噂は何何だ?彼女か?」
最後のところを聞いた俺は顔を歪めてしまった。でも遅宮は全く気にしていなかった。それからの昨日と今日の事
の全てを話した。
「うーむ。まぁ作家には取材とかは必要ね?単に性格合っていないんじゃないのかい?聞いてると二人共ツンケンしすぎなんや。」
「俺は女子が嫌いなの。」
「なんでよ?」
「そっそれは…。」
「隠すの良くない!友達だろ?全て話せよ。」
「…敵わん奴だな。一度しか言わないからな。あれは俺が小学校六年生の時だった。当時の苺は女子をまとめるリーダーだった。それとは違い俺は人を引っ張っていく人間では無かった。そんなある日、苺が作家になったんだ。俺は幼稚園の頃の感覚で褒めたんだ。だけど…そこにいた女子が…うっく。」
急に吐き気と寒気が襲った。「ドサッ。」そして気絶をしてしまった。最後に遅宮の奴が焦っているのを見て視界は真っ暗な闇へと落ちた。
ーーーーーーーー。
どれくらい経ったか?
夕日がさしてくるのと同時に保健室のベッドで俺は目を覚ました。なんか足が重い。体も重い。まぁ。それもそうかあんな事を思い出していたらな…
んんんん?んんんんんっ?っんーー?
「遅宮さん?どうしたんだぁ?何やってんの?」
なんと遅宮の奴が一緒のベッドに入っていた。
「ふっ。ふぁーー。おっ?目覚ましたか。」
「おえ。」
「すまんな。嫌なこと思い出させて。悪かった。」
(いやいやお前もっと違うこと謝れって!トラウマ二号になるわ!)
しかし、遅宮の謝罪は見事なものだった。直角に曲がる腰。キレのいいお辞儀であつた。誰かさんに見習って欲しいものだ。
「いや。いいよ。それにお前のおかげで少し気持ちが楽になったよ。ありがとうな。」
「そうか…。それは良かった。さてとそんなお前さんに提案だ。俺たちのクラスのみのクリエイターのサークルをつくらんかなと?」
「えっ?」
「よく考えてみろ!俺たちは、皆んなクリエイターだ!何かを作っている!皆んなでやる方がアイディアも浮かぶしな!」
「……天才だ!」
「だろぉブラザー?それで更に俺たちと一緒に上のクラス全てに下克上かましてやろうって訳よ!一石二鳥やろ?」
言葉を失った。こんなに協力的で優しくて、絡みやすくて挙句発想力も伊達にクリエイターをやっている訳ではない。ヤバい泣きそう。
「うっうん。やってやろうぜ!下克上!」
「おう!明日から行動開始だ!」
「そういえばメンバーは?」
「聞いて驚くな!なんと!」
「なんと?」
その瞬間保健室のベッドのカーテンが開いた。そこには、
「クラス全員だ!」
「なにぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!」
俺の驚きの絶叫が校舎内に響き渡った。
『五月蝿いよ!』
「ごめん皆んな…。驚きのあまり。」
「まぁ。明日から宜しくな葉羽くん。」
「あぁ!皆んなで学校のトップたちを倒そう!」
『当たり前だろぉ!!』
このクラスの団結力に俺は今までにない可能性を感じた。今日だけなっ…
次の日。流石に苺は来なかった。
まぁあんな事があれば普通か。
「よしっ。打倒苺!学校の伝説は俺だぁ!」
とまぁ、気合いと息子に力を入れて朝練を行う為に登校したものの。いきなり波乱が起こっていた。
「ちょっと!学園ラブコメの主人公が何でおじさんなのよ!」
「いいじゃん!オタクを極めたおじさんの何がダメなのよ!」
げげっ。なんかこの二人の会話怖い。
「あっ零くん!いいとこに来た。
ちょっと聞いて!学園ラブコメの主人公がおじさんってどうよ?」
「えっ?あー。うん。」
「零ちゃんもおじさんでもいいと思うよねー?」
(こういう時どうすればっ…!)
選択肢1 いや?俺の方が主人公。
選択肢2 そんなこより俺とやらないか?
選択肢3 知るか。
この状況を打破出来る策を考えていると、
「いいんじゃないかな?人それぞれの個性が出てこそのライトノベルだよ。作者と読者が楽しめる。それが一番さ。だから不毛な争いはやめよ。昨日団結したばかりだよね?」
「…。そっそうね。」
「私も言い過ぎたわ。」
「ごめんね。」「ごめんなさい。」
「うん。でも、意見を出し合うのもサークルがある理由だから争い無しで平和的にやろうね。(キラーン)」
この男の一言で争いは収束した。
(おおっ。すすごい。とても俺には出来ない…。礼を言わなきゃ。)
「ありがとう。俺ああいうの慣れてなくてさ。助かったよ。」
「いやいや。君と話をする機会が欲しかったからさ。ついね。
僕は柳原ヒョウ。ヒョウって呼んでくれ。」
「おー。これが本物のイケメンオーラか。初見にして眼福です。ご馳走さまでした。」
「いやいや僕なんて。」
(更に謙遜だとぉぉ。)
「そういえばヒョウ。朝は何かやるのか?」
「会議だよ。部長などを決めるらしいよ。もう始まる。」
言葉と同時に遅宮が大声で
「会議始めるよー!」
その瞬間、全員席に座った。
(あいつ担任やれよ。)
「遅宮先生!伊澤くんが寝坊しました。」
「先生だとぉぉぉ!」
俺はついついツッコんでしまった。
「おう。今頃知ったのか。ハバちん。まぁ、友達だと思って接してくれ。」
「…。(もう何も言えない。)」
確かにやけに面倒見のいい人だと思っていたがこれは想定外だった。
「じゃあ、部長を決めたいんだけど…。」
とその時だった。
「ちょっとしつれーい。」
学校一のクラスの人が俺らのクラスにやってきた。
『ざわざわざわ』
(何の用だ?苺関連なら俺か?)
「葉羽ってどれよ?」
「俺だけど。何の用…っ!」
その時俺はこいつらの腕の中でボロボロに気絶した苺を見て硬直した。
「…おい。てめぇら苺に何をした!」
「いやだ。失礼しちゃう。そこの首席様が下劣なあなたのことを守ろうとしたからちょっと制裁をねっ?」
こいつら…!
「今、会議中だから出て行ってくれるかな?」
喧嘩になると判断したのか、遅宮先生が間に入って止めた。
「先生が入ってくるなら仕方ありません。でも、あなたたちの行動は無駄よ。雑魚が集まっても天才には勝てない。お分りいただけますか?」
そして捨て台詞を吐き教室を去っていった。
(あいつら…。それより。)
「おい!苺大丈夫か?しっかりしろ!」
「…。」
完全に気絶している。
『葉羽くん』『葉羽』
「皆んな。絶対あいつらを見返すぞ。」
「当たり前だ。あいつらの行動は目に余る。後で勝負を約束させておく。」
「ヒョウ…。」
「下劣はどちらかあいつらに分からせてやる!」「俺も馬鹿にされて黙っていられる玉じゃないしな!」「俺も…!」「私も…!」
「皆んな…。」
「では皆さん!入学早々見せてやりましょう!私たちの力を!」
「遅宮…先生!」
「よしっ。皆んなやるぞ!」
『おう!』
「では、苺さんが回復したら会議しましょうね!」
「…いいんですか。」
「ハバちんの考えることはお見通しでふよ。ふふふふ。皆さんも良いですよね?」
そこには、誰一人嫌な顔をせず頷いていた。
「皆んな。ありがとう。初日からこんなに助けて貰って。感謝してもし足りない位だよ。」
「泣くな泣くな。困った時はお互い様だろ?俺たち仲間なんだからよ。」
「うん。ずずっ…そうだな。ん?どちら様ですか?」
「遅刻しました!伊澤です!」
えー。雰囲気台無し…。
(さて、今後の苺の事を考えなくてはならないな。)
そんな事を考えながら俺は保健室に向かった。
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