第15話 政宗、鮎貝宗信を討つ
天正五年(1577年)のこの年、政宗は戦らしい戦もないまま穏やかな秋を迎えていた。前年の二本松城戦から数えれば、一年以上も戦のない日々が続いていることになる。政宗とその
十月初頭、政宗の元を
「う―む」
政宗は低く
「当主宗信が
宗重は政宗に出兵を要請していた。
鮎貝氏は伊達領
政宗は直ちに決断した。
「相分かった。この政宗、必ずや謀反人を誅罰してくれよう。帰って主に伝えるがよい。近いうちに政宗自ら出陣し、宗信を討つであろうとな」
使者の男は政宗の返答を聞くとすぐさまその場を退出した。
政宗にとって、
鮎貝氏の領地は最上領と国境を接する置賜郡北部一帯である。政宗は
十月十四日、政宗は自ら五千の兵を率いて鮎貝城を囲み、一千丁の鉄砲を放って、その日のうちに城を
反乱を鎮めた政宗は宗重の忠義を謝して、伊達領柴田郡内に旧領に匹敵する規模の土地を新たな領地として与えた。又、次男の七郎宗益を鮎貝家の新当主に指名した。こうして、政宗にとっての天正五年(1577年)における最初で最後の戦が終わったのであった。
鮎貝宗信討伐からほぼ
(殿! 鮎貝宗信の一件はお見事でした。私は殿がいよいよ大将の風格を備えてきたように思えてなりません)
小十郎は、乱の
先月、小十郎は政宗の下知に従い、他の諸将と共に鮎貝城攻めに加わっていた。政宗の采配は
(殿! 来年こそは正念場ですぞ。気張って下され! この小十郎、どこまでも供を仕ります!)
小十郎は来年がどんな年になるのかを知っていた。伊達家の存亡をかけた戦いが、年明け早々から始まるはずであった。そして、その先に薄氷を踏むような苦しい戦いが待っていることも分かっていた。しかし、戦国武将として一段の成長を遂げた政宗を見た今、小十郎には大きな不安はなかった。
(この分では、少し積もるやも知れぬな? )
小十郎は幾分強まった雪を見ながらそう思った。熱い茶が欲しくなった。小十郎は部屋に戻ることにした。
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