ドナルド・キーン氏に捧ぐ

八雲ヨシツネ

日本を知る者として

 本日2月24日朝にドナルド・キーン氏が亡くなられたことをニュースで知りました。ご冥福をお祈りいたします。


 キーンさんの日本兵の日記を読んだ時の話は、私の太平洋戦争観が定まるきっかけになりましたので訃報が残念でなりませんが、キーンさんの見ている日本文化の姿は今後も確かに残り続けて未来に続いていくはずです。


 私自身はキーンさんと直接交流のあった身ではありませんが、お稲荷さまのお狐さんの縁で民俗学・日本文化について深く知りたいと思った身には、日本文化をまず最初に外側から見た人物というのは、小泉八雲のように大変興味深い視点なのです。


 話が最初に戻りますが、キーンさんの戦争経験や私の祖父の戦争経験を知って、私はその時代に戦争という記録以前に双方の人々が生きた記録があることを学びました。これは大きな歴史のカタチを作っているのは小さな人々の記録であり、太平洋戦争にしても日本という文化を知ることにしても同じように感じるのです。

 これら何かを個人がすべて把握するには途方もない時間がかかるでしょう。ですが、わかりやすい部分だけを知った程度ではソレを理解できたとはいえない。だからこそ別の視点が必要ですし、次に託していくことが重要なのだと思います。その時に文化や言葉、文章は力を発揮する。キーンさんからはそのようなモノを感じました。


 最後に細かいことは分かりませんが、経済活動を重視して文学をはじめとする教養を軽んじる最近の日本をキーンさんが憂いていたと聞きました。まさにその通りだと思います。

 教養がないから恥が分からない。恥が分からないから様々な地位の人々が非難される行動をしてしまうし、嘆くや咎めるでもなく大勢が簡単に他人を批判できるのでしょう。このような人々がこのまま増えれば日本という国は理想では得られるはずの利益を得られないという、働けども働けども豊かにならない国になってしまうことでしょう。


 ドナルド・キーンという日本を知る者を失った今、日本とはどういうカタチをしているのかを人々が昔から見直すべき時なのかもしれません。

 幸い日本人は物事や考え方を書物に書き残すのが好きな人々でしたから確認するのは容易です。ただ、いきなり個人の書物を読んでも共感はできませんから、書いた人がどんな時代を生きたのかくらいは書物を読む前に確認すべきでしょう。そうして大きなカタチを把握してから小さな記録に触れるコトができれば、それが読んだ人の教養になることでしょう。

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