第7話 淫魔襲撃

「やぁんっ♡ 犯されてるのにかったーい♪」

「もっと、もっとぺろぺろしてぇ〜♡」

「おじさんのおちんぽおいしい♡」


現場に着く頃にはサキュバスたちは各々の獲物を好きに貪り尽くしていた。


おおよそ10人ほどだろうか。

犠牲者はその倍近いけど。


サキュバスは私も持っている吸精スキルによって、男性に強い快楽を与えることが出来る。

痛覚鈍化スキルや魅了耐性スキルなどで抑えることは出来るが、性の快楽は原初の快楽。

ぶっちゃけ逆らえない、本番までいって抵抗できた男とか数えるぐらいしかいないし。

隠しナイフまで持って来たのに掴んだ直後に落とした奴は笑い転げながら犯してやったなぁとかしみじみ。


「《聖なる大弓セイントアロウ》!」


と。


聖なる光を放つ矢が一体のサキュバスに突き刺さる。

獣のような、慟哭のような悲鳴をあげてサキュバスは消滅する。

下級サキュバスはあんな感じで死体すらだいたい残らない。


「第1班は攻撃を、第2班は救護を!」


現れたのは白い修道服のようなものを纏った女性たち。

十字架を掲げ、光を放つ大弓を携えている。

聖属性の魔法である《聖なる大弓セイントアロウ》で作った弓、弦を引けば魔法の矢が出現する。

一目でわかった、サキュバス対策に派遣された部隊だと。


「蛮風極まる淫魔どもめ……死ぬがよい!」

「「「《聖なる大弓セイントアロウ》!!」」」


修道服の乙女たちは各々の大弓でサキュバスたちを射抜いていく、いい腕だなぁ。

呑気に見ているだけでサキュバスたちは次第に数を減らしていく、10人のサキュバスなど全滅は早かった。


サキュバスが犯し、生命力が奪われた男性たちを救護する乙女たち。

一件落着かしら。


もちろん私は手を出さないと言うか、あんな下級サキュバスたちの助太刀なんてしない。

興味ないし。

そもそも私に迷惑かける可能性のある下っ端とか必要ないに決まってるし。


さーて、適当な男から金盗って食料買って帰ろう。

ノワールに甘いものでも買ってご機嫌とれば多少は午後のフルコースも衝撃が和らぐはず……


と、そんなとき。


「きゃ、あ、あぁぁぁぁ……」


なんかまた悲鳴聞こえた。

今度はなにかと思って振り返る、まだサキュバスの生き残りでもいたかと思ったが……


「あぁ……美味しい……♪」

「っ!?」


そこにあったのは生命力をしこたま奪われ、地に伏した乙女。


「メアリー? メアリーっ!」


叫ぶ乙女たちのうちの誰か。


「ふふ……ふふふ……♪」


それを嘲笑うように悠々と笑うサキュバス。

乙女の1人はあいつにやられたらしい。

触って数秒で潰されたっぽいし、私の知る限りの手段なら《生かさず殺さず《デッドライン》》だな。

それを皮切りにサキュバス達が次々と飛来、魔法の矢をかいくぐり乙女達に群がる。

嬌声と悲鳴がこだまする戦場はサキュバスが優勢の証。


こうなるとあれはただのサキュバスじゃないな。

統率が取れて、戦略的に戦ってる。

その上で実力もある。

先に斥候を飛ばして相手の戦力を測り、本部隊と自分は上空、勝てそうなら飛び込む、と。


これを下級の一兵サキュバスがやったのなら、私はむしろ他の魔物や人間の仕業と疑うか、真実だと確定したら好きな分の報酬を与えるだろう。

それだけ、知能と理性を持ち実力のあるサキュバスとは珍しく、また人類にとって脅威たり得る。


おそらくサキュバスの上位種、ハイサキュバス辺りだろうか。

デーモン系統に進化してたらもっとごついし。


「くっ、このぉっ!」

「ふふ、ざーんねんはずれ♪」


光の矢がハイサキュバスに放たれるが、ハイサキュバスは軽く回避。

レベル高そうだなぁ、50はあるだろうか。

レベルは単純に踏んできた場数を示すこともある、私が消えてから1年間こいつも頑張ってきたんだなぁとしみじみ。

私は名前も顔も知らないので多分私が消えてからでも台頭したやつだろうからなんの興味もないけど。


「きゃはっ!」

「捕まえた♪」

「いやっ、離して!」


ハイサキュバスに続くように、他のサキュバスたちも乙女に飛来。

あまりに1人に集中し過ぎたらしい。

既に数人が捕まり戦線は崩壊している。

ありゃ全滅だな。


「ひっ、《聖なる大弓セイントアロウ》!」

「目をつぶって射っても当たらないもーん♪」


ふと、聞き覚えのある声、サキュバスの方ではない。


こちらに走ってくるあれは……あの金髪は。


"チッ"


あの、露骨に舌打ちするのやめてもらって良いですか?

名前でかけてたのに忘れちゃったじゃん。


「たすけ、たすけてぇぇぇ!」


私とすれ違うように逃げていった金髪Aちゃん。

必死過ぎて私のことには気付かずに走っていった。

一般市民を守るために来たんじゃないの?

まぁ逃げるのは大切だよ、国が滅びようとも自分さえ生きていれば別に幸せだし。


「あらあら、あなたも可愛らしい顔してるわ……」

「ふふ、ロード様の肖像画に似ているかも」

「あぁロード様、もう一度お会いしたい……」


そして、私の方に来たのは3人。

いずれもお姉さんタイプ、囲まれた時の圧が凄い。


「あなた私たちと遊ばない? 女の子って男の子と違う味がして美味しいのよ♪」


うん知ってる。

ていうかそれが真理。


「ま、嫌だって言ってもやるけど♪」


脇の下に手を入れられ、持ち上げられる。

私軽いなー。

サキュバスって非力で有名なんだけど。


「じゃあ……いただきます……♪」


……まぁ、最適解、かな。

この状況なら。


サキュバスの方は……赤点。

相手の実力を測る前から吸精に入っちゃダメだって。

最低限相手の魔法を知ってから、ね。


「ん……♪」


サキュバスの唇が触れる。


「……んぶぅっ!?」


瞬間、びくん、と震えるサキュバス。

口を離そうとするが、体勢が悪い。

私は後ろ首に腕を、腰に脚を回している、離れることはない。


「ちょ、ちょっと……?」

「なに、どうしたの?」


そのまま他のサキュバスの疑問が他の感情、例えば危機感とかになる前に一気に。


「はい、ご馳走さま」


ドレイン。


ばた、とドレインされきった可愛らしいサキュバスが床に倒れる。

かなり魔力は豊潤だったな、すでに4,5個は街を襲っているかも。


「なっ」


驚くサキュバス、しかしそれは遅い。


「ふぅ」


1人のサキュバスの股間を撫でるように吐息を吹きかける。


「はぅんっ!?」

「まったく、サキュバスのくせに魅了耐性無しはマズイよ」


まぁ今は私もだけど。


腰に走った猛烈な快感に座り込んでしまうサキュバス。

もちろんすかさずキス。

10秒もすれば即堕ち、気絶するまでドレインでフィニッシュ。


「な、なにこの子、嘘、なんなの?」


もう1人は流石に上空に逃げたみたいだけど。


「《降りてきて》」


無駄無駄。


「は、ひ……♡」


また即堕ち。

私の元に降りてきては座り込み、口を開いた。

発情しきった目で、どうぞ、お早くお使いくださいと訴えて。


「可愛いよ」


心にもないことを呟き、消費。

ドレインで気絶。

3人で1分ぐらいか。

まぁサキュバス同士ならこんなものか。


私がどうしてこんなにサキュバスに強いか。

サキュバスの特性や戦い方を知っている、というのもあるが、サキュバスは人を襲う習性から自分自身に魅了耐性がない場合が多い、特に下っ端。

人は魅了してこないのと無駄に自分の容姿に自信あるから。

だから間抜けな死因だと、鏡に映った自分に魅了されてしまったところを一撃、なんてことも。


私はさっきから舌や手、言葉に魅了能力を付与するスキル《手取り足取り《ディープタッチ》》を使ってる。

まぁ簡単に言えばいつもは遠隔で行う魅了効果を至近距離で行うという何とも役立たずなスキル。

しかし全くのゴミというわけでもなく、《手取り足取り《ディープタッチ》》を使いながらされた愛撫は快感が非常に高まる。

触れたところが魅了されてしまう、ということだ、触れば触るほどその効果は高くなる。

言葉に乗せれば一種の洗脳に近いものになる、頭に直接快楽をねじ込まれるのだ、サキュバスのような頭の中空っぽの存在なら洗脳は容易。

人間だとちょっと抵抗される。


サキュバスはドレイン耐性が産まれつき高い、一度捕まえた生命力を逃さないように。

だから一度精神を蕩かしてやる必要がある。


「さーて、もうちょっと頑張りますか」


とりあえず活動を始めてしまったのでさっさと場を収める。


広場はひどいことになってる、乙女たちが身体中を弄られて絶頂状態。

ドレインもされて瀕死なのに。

人間面白い構造してて、生命の危機に陥ると子孫を残そうとして敏感になる。

生命力をいい塩梅に吸収すると相手がいい感じにえっちな風に仕上がるんだよね。

んん、白い清らかな乙女たちが服の上からでもわかるぐらい乳首立てて愛液を漏らして。

いい仕事してます。


「はなし、はなして……たすけ、て……」

「だぁめ……♪」


そんな中で愛撫されてる可愛い乙女ちゃん発見。

んー、まぁ名残惜しいけど助けようか。


「はむ♪」

「ひわっ!?」


耳を唇で甘噛みしてからドレイン。

サキュバスは簡単に気絶。


「大丈夫?」

「はぁ……はぁ……あな、たは……」

「脳まで溶けてないね、うん。じゃ、そこら辺で休んどくといいよ、サキュバスの快感は忘れられないから。なんならオナニーとかして発散しとくといいよ」


乙女ちゃんを担ぎ上げ……るのは私の筋力では無理だったので、放置。

あの感じなら自分で這っていけるでしょ。

彼女、これからの夜は大変だぞ。

サキュバスの快楽に自分の指程度が勝てるわけないし。


「さてさてー、次はー、と」


見渡す限り乱行三昧。

どーしよーかね。


「……何、あなた」


後ろから声をかけられた。

振り返ると、さっきのハイサキュバスお姉さん。

私を明らかに奇異を見る目で見ている。


「さっきまでここにいなかったでしょ」

「うん、今来たところだから」

「……こんな場所に?」

「うん。見つけたから来た」


事実を淡々と。

いやぁこういう会話も久しぶり。

特に同族とは。

みんなあれだものね、ロード様ロード様だからね。


「……《冷たく囁くアンラヴァーズ》」


っと。

魅了系魔法冷たく嘯く恋《アンラヴァーズ》。

相手に恋を錯覚させる、サキュバスのよく使う手の一つであり、極めて有効な魔法。

同性異性に関わらず自動で動く人形を作り出せるんだから、そりゃあ強力と言うものだ。


「ん……サキュバスさん……♪」


ここは乗ってやろう。

魔法にかけられ、私は目の前のサキュバスお姉さんへとぞっこん。


「ふふ、なんだか変なヨカンがしたけど大したことないじゃない。ほら、おいで」

「はぁい♪」


演技などしているわけではない、本心から私はこのお姉さんに恋をしている。


「ん、はぁむ……♪」

「あら、子供の割にキス上手いじゃない? お姉さんそういう子、好きよ……ん、ちゅ……」

「ひゃぁ……♡」


しかし当然ながら……私もサキュバスだったわけで。


「ん……可愛い子……」

「お姉さん……♪」

「ん、好きよ……好き……♪」

「ん、はむ……」

「大好き……っ、んんっ、やっ、離れないで……お願い……大好き……♡」


お姉さんの舌がどんどん激しくなって行く。

吐息を交え、いつのまにか私の後ろ首に腕を回し絶対に離れないようにしながら。


「あなた、さま、あなたさまぁ……♡」


その声はもはや、私の声では無い。


「らいしゅき、だいしゅきれしゅ、んぅ♡」

「きゃ♪」


私のことを押し倒し、ついぞサキュバスお姉さんは私の身体に自らの柔肌を押し付け始める。


《爛れる程の感情を《フォーリンラヴァー》》。

《冷たく嘯くアンラヴァーズ》の強化系。


恋というのは"いつかこうなって欲しい"という一方通行なもので、基本形は1つ。

それが恋という感情。


しかし、愛にはいくつも種類がある。

純愛もあれば略奪愛もある、敬愛もあれば恩愛もある。

このままでいて欲しいという愛、このままではいけないという愛。

こうして欲しいという愛、こうしないで欲しいという愛。


ただ恋させるのではなく愛させる。

こちら側が指定した形で。

《爛れる程の感情を《フォーリンラヴァー》》は、相手に愛を押し付けるもの。

恋させるだけの《冷たく嘯くアンラヴァーズ》とはレベルが違う。

恋させた程度で出来ることはせいぜいが言うことを聞かせるぐらいだが、愛に落ちたものは性格を歪め、その他全ての恋愛感情を塗り潰し、その愛に従う奴隷になる。


「ふふ、可愛い可愛い♪」

「はひゅいっ、ありがとう、ごじゃいましゅっ♡」


私がこのお姉さんに求めたのは盲愛、そして忠愛。

これで私の愛の奴隷が完成する、昔から良くやる手だ。

昨日まで肉欲を貪っていた夫婦が突然寝取られに目覚めたりするのは見ていて堪らないものがある。

サキュバスの生態的にはなんの意味もない行為なため趣味だが。

サキュバスというのは人の不幸を最高に味わえる種族である。


ちなみにこの強力な魔法であるが、当然ながら制約も厳しい。

まず、相手に姿を見せなければならない。

非力なサキュバスにとってそれは時に致命傷だ。

さらに射程は5m程度、今回は接触していたので関係なかったが、無機物を貫通出来ないハート型の弾を飛ばし、対象に当てることでようやく魔法にかけることが出来る。

極め付けに、"相手が知る愛"で無ければそれは行えない。

このお姉さんは盲愛も忠愛も知っていたからこんなにも私を求めてくれるのである。

当然ながらこんなサキュバスに純愛などさせることは出来ない。

いつか、円満に見えた夫婦が寝取られに目覚めたのは……まぁ、察する他ない。


まぁこんな制約も当然か、条件さえクリアすれば一瞬で思いのままの愛奴隷ができるのだから。


「ん、ひゅうっ♡」


さて。

このお姉さんももういいかな。

《手取り足取り《ディープタッチ》》を全身に起動。


「はぎゅぅぅぅぅぅぅ!?♡♡♡♡♡♡♡」


お姉さんは盛大に潮を吹き、よだれを垂らしながら気絶した。


「ま、負けちゃった!?」

「どうしよう!

「逃げる、逃げるの?」


やはりリーダー格だったようだ、一気に統率が無くなりパニックになるサキュバスたち。


もちろんそんな隙を見逃すわけもなーい。

乙女たちは……うん、全滅だね。

死んでないけど……まぁ、放置してれば危ないかな。

意識も殆どないみたい。

しかし……1人、私を見ている。


「……まぁ、いいや」


感謝するんだよ、私の気まぐれに。


「《虚ろの大穴》ボイド》》」

「きゃあっ!?」

「こ、これって」


《虚ろの大穴》ボイド》》はかなり上位のスキルだ、見たことないものが殆どだろう……と思ったが。


「ロード様の精霊が使った……あの黒いやつ……!?」

「なんであんな子供が使えるの!?」


お、みんな知ってた、口々に疑問を投げる。

それもそうか、まだ1年、だし。


「……まさか、その銀色の髪……金の瞳……!」

「ロード様に……似てる……」


あーあ。

気づかない方が幸せだったのに。

下級サキュバスだったらわからなかっただろうに。


「サキュバスロード、ブラン。みんな気づくの遅かったね?」


その声で、喧騒は一気に静まり返り、また違う色で再開する。


「ひっ……!?」

「お、おゆるしっ、ロード、さま」

「いやっ……しにたくないっ、いやぁっ!」


君臨していた頃の私は趣味で部下を消費してみたりしてたけど……そうか、下っ端からはそんなイメージだったんだなぁ。


残念ながら、私要領悪い子嫌いなんだよね。

こんなに好き放題何も考えずに荒らしてくれちゃって、サキュバス対策がまた強化されちゃうじゃん。


「ばいばい♪」


飛び立ち、逃げようとしたサキュバスたちは《虚ろの大穴》ボイド》》に捉われそして掠れた声を上げて倒れていく。

レベルドレイン、心地いい快楽と共にサキュバスたちの溜め込んだ力が私のものになっていく。

気持ちいい……


ステータスを開くと。


ブラン

LV128 ハイサキュバス

スキル 《吸精》《魅了》《幻惑》《魅了耐性》


うわぁ。

なんか凄いことになってる。

インフレここに極まれり、みたいな感じ。

ていうか進化の先選ばせてもらえなかったのね、ひどい。

まぁ仕方ないか、何かしらの因果は感じるし。


「さて……」


もう一つ、やることがあるかな。

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