そのままでいい

なつみかん

ようこそジャパリパークへ

「ミライさーん、はじめまして、ですね。ぼく、かばんっていいます」

かばんはそういうと軽くおじぎをした。

「かばんさん?どこでわたしの名前を知ったのかしら…?まあとりあえず、はじめまして」

ミライさんは微笑みながらそう言うと、近くの椅子に腰掛けるように促した。

「それで、わたしのところに来るってことは、フレンズのことに関して何かあったのかしら?」

「はい…。そうなんですけど」

かばんちゃんの顔が少し暗くなる。しかし、すぐに顔を上げてこういった。

「サーバルちゃんは、ジャパリパークから出たら消えてしまうんですか?」

ミライさんはそういったかばんの顔を見つめる。そして、ゆっくりときりだした。

「おそらく、サンドスターが届かない範囲に出てしまったんだと思うわ。おそらく、セルリアンに食べられたときのようにフレンズ化の状態がとけて、普通の動物に戻ってしまったのね」

「じゃあ、サーバルちゃんは…」

そういうとかばんは何かが崩れたかのように泣き出してしまった。

ミライさんはそんなかばんを見て、何か思いついたかのように席を離れる。

そして、ミライさんは誰かを連れてきていた。

「かばんちゃん…?」

かばんははっと顔をあげる。涙が数粒こぼれ落ちたが、かばんはそれよりも目の前の光景に驚いていた。

そこにいたのは、セーバル。

「サーバルちゃんなの?」

かばんはゆっくりと確認する。しかし見た目は、サーバルとは違い緑色である。

「わたし、サーバルだよ!」

「一番最初にあったときにしたお話は覚えてる?」

「食べないよ!」

それは、たしかにサーバルだった。ミライさんはこう伝える。

「このセーバルはね、あなたとともに冒険したラッキービーストの映像をセルリアン化したものなの。だから、本当にあなたと一緒にいたサーバルの記憶を持っているのよ」

「ねえ、かばんちゃん。わたしは、かばんちゃんのことずっとずっと応援してるから。きっと記憶はないけれど、またフレンズになってまたお友達になろうよ!」

「そんな、サーバルちゃん…」

「大丈夫、かばんちゃんならきっとうまくいくよ!」

そういうと、セーバルは笑顔を見せた。かばんも、それに返すように笑顔を見せる。

「少し失敗しちゃうことはあったけど、すっごい前向きで、ずっと応援してくれて、不安なときでもいっつも元気をくれて…。まだ、サーバルちゃんと行きたいところも、笑いたい時もあったけど、サーバルちゃんにまた、会いに行くよ」

「かばんちゃん…じゃあ、また会おうね!」

そういった瞬間、セーバルはサンドスターになり、一瞬で消えてしまった。

再びかばんちゃんは泣いてしまったけれど、そこには笑顔の名残が残っていてただただ涙が溢れてくるだけだった。

そして、少しするとその涙はすべて流れ落ちかばんはこういった。

「ぼくは、またサーバルちゃんに会いたい。きっと住む場所やなわばりなんかはぼくには必要ないんだ」

その口調は、何かを決意したように自信に溢れていて強い意志があった。

「それじゃあ、かばんさん。ジャパリパークに行きたいのなら、菜々ちゃんも連れて行ってくれないかしら?」

「菜々さん?」

「彼女もジャパリパークでフレンズたちと暮らしていたんだけれど、セルリアンがいたから逃げてきたのよ。けど、パークのことはいろいろ知っているし、フレンズも大好きだからきっと役に立つと思うわ」

「わかりました。ぼくはもう一度、ジャパリパークに行ってみようと思います」

ミライさんはそれを聞いて、微笑んだ。そして、かばんにこうこえをかける。

「きっとジャパリパークはサンドスターの力でいろいろ変わっているかもしれない。けど、あなたはあなたらしく、そのままでいいのよ」


そのままでいい……

かばんはその言葉を聞いて笑顔を見せる。


そして、かばんはジャパリパークへと向かったのであった。

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