五人目

 そう、この四人はまさに戦国の時代の者達。

 乱世を生きて逝った恋の花であった。


 春は忍の舞いが待っていた。

 己を殺した彼に恋をしていた。

 敵同士で身分も違うけれど、好きを隠すように閉ざしたまま。


 夏は武士の声が響いていた。

 己が殺した彼女に恋をしていた。

 敵同士で身分も違うけれど、好きと告げ損なったままだった。


 秋は主のうたが聞こえていた。

 己を残した彼女に恋をしていた。

 主従であり身分も違うけれど、好きだと思ってしまっていたのだ。


 冬は女中の語りを流していた。

 己に向かぬ彼に恋をしていた。

 仕えていただけ身分も違うけれど、好きだと告げられず眺めていた。


 結ばれぬままに戦国時代を駆け抜けた。

 今生さえ未だ結ばれずに。

 いやまだ、時は残されているから、どうか彼、彼女らが目を合わせますように。

 今は子供だけれど、いつか大人になってその手が届くだろう。

 花を咲かせその花弁を魅せろ。

 その許されなかった心を燃やせ。

 幸せになってくれ。


 僕は四人を見て思う、思いながら泣きそうだ。

 僕はただの足軽だったけれど、四人を見てきたから言おう。

 僕が恋した彼女と、今日会えたから。

 どうか、同じように出会えますように。

 季節の変わり目、今日は、晴天でした。

 きっと、次の季節は幸せが訪れるでしょう。


 季節の変わり目は一瞬だった。

 瞬を望んだ足軽は、彼女と共に消えて行った。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

一瞬の恋を語る子供たち 影宮 @yagami_kagemiya

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ