四人目

 それは雪の積もった銀世界の中心で語る少女の姿。

 ただ片想いであった前世、今生はそうでありたくない一心で。

 冷たくなったこの掌には、たった一刀の短刀。

 敵の忍に一目惚れをしていた武士に片想いをしてしまった。

 まだ忘れられない彼女は忍を恨んだ。

 何故、何故…貴方なのでしょうか。

 此処で探す、あの武士は何処でしょうかと語り続けながら。

 好きと告げられないこの口が泣いている。

 身分だって違ったけれど、忍だって遠いはず。

 それでも、彼は忍を選んだ。

 そして、斬ったでしょう?

 何故、何故を繰り返した。

 私の方が愛しているのに。

 けれどもわかっていた。

 何故あの忍なのかも。

 あの忍は彼の心を救った闇に生きる光だから。

 私では救えなかった心を抱き締めたのはあの忍だから。

 振り向いて欲しい、呟いた息は凍り付いた。

 どうか、この想いよ届けと空を見上げる。

 冷たき結晶の花ばかりが此処に舞い降りてくる。

 もしも、を思い浮かべる度にまた悲しく心は震えた。

 冬は一瞬だった。

 瞬を語り続けた女中は、雪が溶けた頃いつの間にか消え失せた。

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