四人目
それは雪の積もった銀世界の中心で語る少女の姿。
ただ片想いであった前世、今生はそうでありたくない一心で。
冷たくなったこの掌には、たった一刀の短刀。
敵の忍に一目惚れをしていた武士に片想いをしてしまった。
まだ忘れられない彼女は忍を恨んだ。
何故、何故…貴方なのでしょうか。
此処で探す、あの武士は何処でしょうかと語り続けながら。
好きと告げられないこの口が泣いている。
身分だって違ったけれど、忍だって遠いはず。
それでも、彼は忍を選んだ。
そして、斬ったでしょう?
何故、何故を繰り返した。
私の方が愛しているのに。
けれどもわかっていた。
何故あの忍なのかも。
あの忍は彼の心を救った闇に生きる光だから。
私では救えなかった心を抱き締めたのはあの忍だから。
振り向いて欲しい、呟いた息は凍り付いた。
どうか、この想いよ届けと空を見上げる。
冷たき結晶の花ばかりが此処に舞い降りてくる。
もしも、を思い浮かべる度にまた悲しく心は震えた。
冬は一瞬だった。
瞬を語り続けた女中は、雪が溶けた頃いつの間にか消え失せた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます