三人目

 それは秋の紅葉の下の岩場の上に座る一人の少年。

 少年はいつか聞いたうたを歌ってただ、過去を思い出す。

 此処で我が忍が最後の報告を遺し、戦場へ向かった。

「共に逝きたい。」

 忍の悲しげな願望も、今も覚えている。

 戦場が何処だったのかも、敵軍が誰であったかもわからない。

 ただ少年は言う。

「共に生きたい。」

 嗚呼、此処にあった城を守る為残った前世の大将の自分を憎んだ。

 長年共に駆け抜けた記憶が、離れたくないと叫んでいる。

 本当は好きだったなんて、忍ならば察していただろうか。

 否、そんなことはないのだろう。

 忍には恋しい人がいたのだろう。

 最後に残した報告を思い出す。

「最後の報告を聞いて下さい。きっともう、戻れやしないでしょう。」

 ならぬ、と叫んだ己は忍を引き留められなかった。

「――の戦に参戦致します。」

 ノイズが邪魔をして、うたが途切れる。

 彼女の帰りを待ち続ける少年は、涙を堪える。

 この秋もまた帰ってこない。

 知っていた。

 知っている。

 それでも待っていたい。

 いつか、いつかきっと戻ってくる。

 この隣に、この背中を守ろうと。

 秋は一瞬だった。

 瞬を待ち続けた忍の主は枯葉が落ちきった時に消え去った。

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