二人目
それは青い青い空を見上げた海辺。
一人の少年は溜め息をついた。
彼はある忍を探してたんだそうだ。
一目惚れを告げ損ねた前世を握り締めて。
今やその忍が何処にいるかなぞ、わかりはしないまま。
探して何回目の夏になるだろう?
八重桜は遠に花を散らせきった。
波の音が激しくも穏やかにも聞こえて頭が痛くなった。
今生は己が斬った忍を抱き締めてやりたい。
叶いもしない妄想は前世の忍に貰った。
忍はこう言った。
死ぬその一瞬に。
「来世あんたを此処で待つ。」
それが何処であったか思い出せないんだ。
どうしてだろう、どうしてだろうと唱えながら泣きじゃくる今日も雨の日。
あの時、あの夜忍を斬った日も雨だった。
梅雨の戦だった。
会いたくて悲しいのに、忍の笑顔ばかり覚えてる。
海辺を走る縛られたように。
此処から離れられない。
どれだけ走ろうとも、此処からは出られない。
少年の体が透き通った。
徐々に兜まで見せた。
忍を斬った刀が、此処に…見えた気がして。
叫ぶ、叫ぶ、彼女の名前を。
名を呼べど現れないことを知っていた。
それでも、構わずに叫んだ。
彼女の名前は…。
夏は一瞬だった。
武士は瞬を探し叫んだ。
波の音と共に梅雨が明けた頃に、いつの間にか彼は消え失せた。
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