#04
隊長の声に振り向けば、いつのまにかアールが大太刀を抜刀し、後方をにらめ付けていた。
先の一瞬は、彼が攻撃を防いだのだ。
その目線の先を辿る。
先程通ったばかりの通路に、まるで元からそこにいたかのように、その襲撃者たちは立っていた。
年齢も、性別もバラバラな彼らは、城の使用人の服装をしていた。何の変哲も無い顔。何の変哲もない服装。
しかし、彼らの纏う凄みと、その目つきだけは明らかに使用人のそれではなかった。
明確に殺意を抱いた瞳。その矛先は、紛れもなく自分たちにむけられていた。
「儀式の時からずーっと狙ってやがったな。ま、バレてたわけだが。--さ、どうすんだ?」
さっきまでの雑談口調と一切変わらない調子で、アールは襲撃者に問う。
ヨルダは事態に混乱する。
なぜ、この大男はこれほどの場面で動じない? どうして攻撃を予測できた? そもそもどうやって刺客たちを感知した?
わからない。わからないが、今するべきことに迷う余地はないようだった。
刺客たちは全員で3.4人ほど居るだろうか。傾いた日差しによる陰に隠れ、彼らの無機質な表情が陰影に彩られる。
ヨルダ達の背後では、先頭にいた熟練兵たちがエリーゼの守りを固めている。直接刺客たちと対峙しているのは、しんがりのアールと、先程入隊の儀式を終えたばかりの新入り3人だった。
じり、と、襲撃者の足が動く。
交戦の意思表明だった。
緊張に手が汗ばむのをヨルダは感じる。
いきなりこれか。
これは、でも--好機だ。
ここで敵を倒して活躍すれば、自分の名を一気にあげることができる。恐れて腰が引けているようでは......いつまでも自分はうだつの上がらない、無才な剣士のままだ。
やるしかない。
「各自、陣形を維持して迎撃。それと--新人ども、よく聞け。最初の命令だ」
ヨルダが決意を固めると同時、振り返りもせずにアールが言い放った。
子供の背丈ほどある巨大な太刀を悠々と構えるその背中は、ヨルダから見れば頼もしく広い。
「死ぬなよ」
次の瞬間。
襲撃者たちが。一斉に黒い影となって襲いかかってきた。
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