秋・柿二つ

 テーブルに二つ柿が乗っている。

「もう、この季節か……」

 一つは田舎から送られた柿。そして、もう一つはカメオ。

「毎年見事なものだな……」

 大好きなものになりきるのが大好きなカメオはへたまで見事に化けている。俺はついイタズラ心を出して、カメオの柿を掴んだ。

「いただきます」

 食べるマネをする。

「キュイ!!」


「お父さんっ!!」

 涙目で俺の手から逃れ、戸棚の隅に入り込んで震えているカメオに母さんが怒りの声を上げる。

「……もう青雲堂のくりまんじゅうを使うしかないわね」

 こうなるとカメオの大好きな和菓子で釣って出すしかない。

「買ってきて。小遣いで」

「はい」

 玄関に向かう俺の背に

「キュイ!」

 嬉しそうな鳴き声が掛かった。

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